ヴィンス・ロンバルディというアメリカンフットボールのコーチをご存知だろうか。60年代から70年代にかけて活躍し、第一回と第二回のスーパーボウル(米国のプロアメフトリーグの優勝決定戦)の連覇を果たした名将だ。
伝説的な彼の偉業は今なお讃えられ、アメフト界に大きな影響をもたらしているんだとか。そんな彼が残した言葉のひとつに、こんなものがある。
Confidence is contagious. So is lack of confidence. ー自信は伝染する。そして自信のなさも伝染する。
確かに、他人の自信に満ちた表情を見ると、何でもできる気がしてくる。周りが不安そうな時には、失敗するのではないかとついつい考えてしまう。
チームの雰囲気が悪いとき、それはあなたが不安げな表情を浮かべているからかもしれない。 自分から周りを変えていく。今回はその科学的方法をご紹介しよう。
人間は、周りに流されやすい生き物だった!?「ミラーニューロン」の驚きの仕組みとは
そもそも私たちはなぜ周りの人に影響されるのだろうか。それは脳神経のひとつである「ミラーニューロン」と呼ばれるものの仕業だとわかっている。
ミラーニューロンは,他者の動作の視覚的な表象と自己の運動が同じニューロンの上に表現されるニューロンで… (引用元:村田哲. (2005). ミラーニューロンの明らかにしたもの: 運動制御から認知機能へ. 日本神経回路学会誌, 12(1), 52-60.)
つまり、他人の行動や表情を目で見たとき、それに対する自分の反応も同じ神経で行うということ。他人と共鳴するための神経回路だといえよう。
知識の普及は模倣の繰り返しにより成長するのだから、現代文明はミラーニューロンの賜物である、と考える研究者もいるほどだ。
映画の主人公が銃に撃たれて、思わず顔をしかめるとき。スポーツ観戦で無意識に体が動いてしまうとき。脳内のミラーニューロンの働きで「共鳴」しているのだ。
自信の連鎖反応を引き起こせ!脳をだまして自信をつけよう。
お判りいただけただろうか。人間の脳が他人と共鳴するようにできているのだ。それなら、それを逆手にとってやればいい。
自分が自信満々の表情をしていれば、隣にいる同僚も自信に満ちてくる。それを見た同僚もまた…という風に、自信の連鎖反応がおこるのだ。
つまり、チームの雰囲気を上向きにしたいなら、まずは自分から変えてやればいい。自信たっぷりの表情を無理やりにでも作り出すのだ。
そうすれば、それを見た人が勝手に勘違いして自信をつけてくれる。最終的にはそれを見たあなたも自信がついてくる、という寸法だ。周りが変われば自分も変わる。
「力のポーズ」で自信家を演じよう
無理やり自信のある表情を作り出すといっても、どうしていいのかわからない… そんな人も多いことだろう。
社会学者であるエイミー・カディ氏はTEDのプレゼンにおいて、自信ありげに見える「力のポーズ」を提案している。それがこれだ。
1. 両肩幅に開いた手を机に置き、肩も足も開いて立つ。 2. 腰に手を当てて肩を開き、足も開く 3. 体をそらせ気味にし、頭の後ろに手を組み、両肘を開く。 4. 両足を開いて反り返り気味に座り、手も横の椅子に置くなどして開く (引用元:「自信のあるフリ」をするだけで、本当に力がみなぎる方法とは )
実際にやってみるとわかるが、これ、かなり自信満々なポーズ。やっていれば自然と周りの目を引き、雰囲気向上に繋げられるはずだ。
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冒頭で紹介したロンバルディは、ヘッドコーチとして通算で105勝35敗6分という驚異的な成績を残している。
何よりも勝利を第一目標に掲げ、カリスマ的コーチング技術により伝説となったロンバルディ。そんな彼は、自信に満ち溢れた表情で選手たちを鼓舞していたにちがいない。
(参考) 村田哲. (2005). ミラーニューロンの明らかにしたもの: 運動制御から認知機能へ. 日本神経回路学会誌, 12(1), 52-60.
Wikipedia ヴィンス・ロンバルディ 「自信あるフリ」をするだけで、本当に力がみなぎる方法とは

