仕事で心が疲れないための「3つの習慣」。あなたが後悔している失敗はじつは「失敗ですらない」かもしれない

内藤誼人先生インタビュー「仕事で心が疲れないための3つの習慣」01

仕事をしていると、「頑張らなければ……」「成果を挙げなければ……」などと思うあまりに「心が疲れる」というのもよくあることです。

そんなときはどう対処すればいいのか、立正大学客員教授であり心理学者の内藤誼人(ないとう・よしひと)先生が、ビジネスシーンでありがちなシチュエーションを挙げつつアドバイスをくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

プレッシャーを感じるときは、まずその「要因」をあきらかにする

仕事上で「心が疲れる」場面というと、「プレッシャーを感じるとき」が挙げられるでしょうか。

そういうときは、まずはその「プレッシャーの要因がなにか」を考えましょう。もしその要因が「自分の主観」だったなら、もはやプレッシャーから解放されたも同然です。

先輩からある仕事の指示を受けたことで、プレッシャーを感じているとします。その仕事に差し迫った締め切りがあるなら別ですが、締め切りがない、あるいはあったとしても時間的余裕があるのなら、「この仕事も早くやらなければ……」と自らが勝手にプレッシャーを生み出しているに過ぎません。それに気づくことができれば、プレッシャーを感じることなどなくなるでしょう。

そして、プレッシャーの要因が自分の主観でないのなら、それは「自分自身でなんとかできるものなのか」をさらに考えてみましょう。その結果、「自分自身でなんとかできるもの」であれば、まさになんとかできるのですから、なんとかするために力を尽くすのみです。

一方、プレッシャーの要因が「自分自身でなんともできないもの」であっても、それにもプレッシャーを感じる必要などありません。先の例で言うと、先輩から指示された仕事が、締め切りが直前に差し迫っているものだったとか、完全に自分のキャパシティーを超えるものだったというケースです。自分の努力でなんとかできるものではないのですから、なんとかしようと悩むだけ無駄であり、上司や上層部に相談すればいいだけの話です。

「自分自身でなんともできないもの」として、もうひとつ例を挙げましょうか。商品開発に携わる人が、「商品が売れなかったらどうしよう……」といったプレッシャーを感じるケースです。

でも、なるべく売れる商品をつくるために商品開発担当者が全力を尽くすことはもちろん重要ですが、そのうえでできた商品のすべてが売れるわけではないですよね? 私の著書もそうですが……(笑)、売れるか売れないかには間違いなく「運」という要素も絡んできます。

運なんてまさに自分自身でなんともできないものなのですから、このケースなら、「売れなかったらどうしよう……」というプレッシャーは、最初に述べた「自分の主観」が生んだものとも言えます。よって、やはりプレッシャーを感じる必要などないというわけです。

内藤誼人先生インタビュー「仕事で心が疲れないための3つの習慣」02

失敗はじつは「失敗ですらない」というケースもある

また、仕事上で心が疲れる場面には、「失敗をしてつらいとき」もあるかもしれませんね。なんらかの失敗をしてしまって、後悔や恥ずかしさを感じたり周囲の目を気にしたりするケースです。

もちろん、本当に大きな失敗をしてしまい、その要因が自分にあるのだとしたら、しっかり反省する必要もあるでしょう。でも、実際には、自分が思っている失敗は「失敗ですらない」ということもよくあるのです。

ある調査を紹介しましょう。その調査では、まずは多くの聴衆の前でプレゼンをした人に、自分のプレゼンの自己採点をしてもらいました。すると、その人は「声も体も震えていたし説明はわかりづらかったし、0点だ」と回答しました。ところが、聴衆は多くが、そのプレゼン内容に高得点をつけたのです。失敗だと思っていたのは、プレゼンをした本人だけだったというわけです。

このことの要因は、自己評価と他者評価の食い違いにあります。この調査の例で言えば、プレゼンに臨もうとする人は、自分のなかで「ああしたい」「こうしたい」といった高い理想をいくつももっていました。そして、そうできなかったために、自分で勝手に自己評価を下げてしまっただけなのです。

ですから、こういったケースにおいては、「すぐに他者評価を確認する」ことが最善の対処法となります。プレゼンのあとに、「自分では全然うまくいかなかったと思うんですが、どう思いましたか?」というふうに同僚などに聞いてみましょう。自己評価とは違い、同僚はむしろ困惑しながら「え? いやいや、すごくよかったと思うけど」なんて答えてくれるかもしれませんよ。

内藤誼人先生インタビュー「仕事で心が疲れないための3つの習慣」03

野菜と果物をたくさん食べて、とにかくよく寝る

最後に、シチュエーションを問わず、心が疲れてしまった場合に効果的な対処法をお教えしましょう。それは、「野菜と果物をたくさん食べて、よく寝る」ことです。

ワルシャワ生命科学大学では、野菜と果物の摂取と精神的な問題の関連性を調べた数多くの論文を分析した結果、野菜や果物を数多くとっているほど精神的な問題を抱えにくいと結論づけました。野菜や果物をたくさん食べている人ほど、物事を明るくとらえることができ、悩みを報告する回数が減り、抑うつ障害と診断されることも少なかったのです。

また、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の研究では、くよくよと心配したり悩んだり迷ってばかりいる人には、睡眠時間が短いという共通点が見られたそうです。逆に言えば、しっかり眠っている人は、心の疲れをあまり抱えていないということです。

日本人の睡眠時間は世界最短とも言われますが、忙しい社会人のみなさんがしっかりと睡眠をとったり、多くの野菜や果物をとれる食事を用意したりすることは、そう簡単ではないかもしれません。

でも、さまざまな要因で引き起こされる心の疲れに対して、その要因ごとに対処法を変えることなどなく、一様に軽減する効果を発揮してくれるのが「野菜と果物をたくさん食べて、よく寝る」ということなのですから、試してみる価値は大きいと思いませんか? むしろ、心の疲れの要因ごとに対処法を変えることよりよほど手軽とすら言えるかもしれません。

忙しいなかにもスマホやテレビを見たりゲームをしたりする時間があるのなら、そんなことに貴重な時間を使うのではなく、ぜひ野菜や果物をしっかりとれる食事を用意して、少しでも長い睡眠時間を確保してみてください。

内藤誼人先生インタビュー「仕事で心が疲れないための3つの習慣」04

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人間関係に疲れるのは「気を使いすぎ」だから。「人と深く関わる必要はない」と心理学研究でもわかっている
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【プロフィール】
内藤誼人(ないとう・よしひと)
心理学者、立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースにした心理学の応用に力を注いでおり、とりわけ「自分の望む人生を手に入れる」ための実践的なアドバイスに定評がある。『はじめての心理学』(成美堂出版)、『気持ちがほっとゆるまる心理学』(三笠書房)、『ビジネス心理学の成功法則100』(青春出版社)、『あなたの隣の「困った人たち」から身を守る本』(廣済堂出版)、『がんばらない生き方大全』(SBクリエイティブ)なと著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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