ひと昔前に流行った「IQ」をみなさんは覚えているだろうか。
間違い探しやトンチの効いたクイズを前に盛り上がった方も多いだろうし、何を隠そう、筆者もその一人だ。
ただ現在ではIQの実用性に疑問を投げかける研究者も多く、そもそも測ることに意味がないのでは、という意見もあるくらい。やっぱり、ちょっと時代遅れなのかもしれない。
IQテストの創始者は、フランス生まれの心理学者であるアルフレッド・ビネー。 知能障害の子どもたちのために開発したと言われるIQテスト。
その父ビネー曰く、「知能は論理力と言語力と熱意によって決まる」んだとか。
IQ試験で有名な心理学者ビネーが、知能に必要な要素を三つ挙げています。論理力と言語力と熱意です。
(引用元:池谷裕二|受験脳の作り方)
今日はIQのお話…ではなくて、IQをつくる3つの要素のお話だ。
1, 論理力
まず最初は、論理的に考える能力。 これが知能に必要ない、なんて言う人はいないだろう。
でも考えてみてほしい。私たちが持つこの「論理力」は昔から持っていたものだろうか? そうではないはずだ。
子どもの頃は九九の掛け算を丸暗記したし、国語でも詩の暗唱なんかをやらされたはず。
でもいつしか成長するにつれ、数学の授業では証明問題が増え、国語の問題では記述式のものが増えてきたのではないだろうか。
それには理由があった。 人間の脳は、成長とともに「自分の得意な記憶の種類」が変わるからだそうだ。
掛け算の九九などの頭に詰め込む(丸暗記の)記憶である「意味記憶」と、理論や理屈による記憶である「エピソード記憶」があるそうです。子どもの頃は、意味の無い文字や音などに対して絶大な記憶力(意味記憶)を発揮し、それ以降は論理だった記憶力(エピソード記憶)が発達してきます。歳をとると、丸暗記する「意味記憶」能力が低下する事によって記憶力が落ちたと感じるのですが、一方で理解して覚えるという「エピソード記憶」が発達するので、記憶力が落ちたのではなく、記憶の種類が変わっただけだということです。
(引用:ENGLISH TUTORUS NETWORK|英語の効率的な学習アプローチ)
子どものときのように、丸暗記で全て済ませようとしている人はいないだろうか。 脳の成長とともに、論理的に考えることも必要なのだ。
2, 言語力
続いて、言語力。
言語というのは、単に相手とコミュニケーションをとるためだけのものではない。 教育の場では、盛んに「言語力」という言葉が使われている。
言語力という言葉自体は、そもそも文部科学省によって提唱されたもの。単に「言葉を扱う能力」だけを指すのではないんだとか。
学校教育のすべての科目を通じて個人の自己表現、他者理解、共同生活の能力を助長することを目的として、狭い意味の国語力にとどまらないコミュニケーション能力、思考力
(参考:文部科学省|言語力育成協力者会議)
この「言語力」の考え方からいくと、「ことばを読む/聞く」という行為は「考える」という段階を必ず通過するものらしい。
「英語のシャワーを大量に、毎日聞けば伸びる!」「速読で本を読みこなそう!」 なんていう最近の風潮が、言語力の立場から考えればいかに無駄なものか、おわかりいただけるだろうか。
ことばを毎日扱う大人として、ちょっと認識を改めてみてはいかがだろうか。
3, 熱意
熱意が知能の一部である。
こう聞くと、意外に感じる方も多いだろう。 しかし、よく考えてみてほしい。
今までご紹介してきた論理力や言語力は、なんとなく・漫然と過ごしている中で生まれるものだろうか。いや、これらの能力に限らない。どんな才能でも、能力でも、熱意がなくては発揮できないはずだ。
最近Study Hackerでも"Grit"という言葉を紹介した。
グリットとは、物事に対する情熱であり、また何かの目的を達成するためにとてつもなく長い時間、継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり遂げる力のことです。
(logmi |成功者が共通して持つ「グリット」という能力–才能でも、努力でもない第3の要素とは? )
各界の著名人が語るこの"Grit"。 熱意がなければ何も始まらない、ということだろう。
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IQと聞くと、なんだか天才的な、ちょっとどこか変人的なものだと考える人が多いだろう。
それはきっと、テレビ番組や雑誌のいわゆる「IQクイズ」が原因。 IQの父、ビネーの考える「知能」は、なんてことはない普通の能力だったのだ。
学生も社会人も、知能ある大人を目指したいものだ。
参考 池谷裕二|受験脳の作り方 ENGLISH TUTORUS NETWORK|英語の効率的な学習アプローチ 文部科学省|言語力育成協力者会議 logmi |成功者が共通して持つ「グリット」という能力–才能でも、努力でもない第3の要素とは?