自分の勉強が本当に効率的なのかわからない……そう悩むビジネスパーソンに紹介したいのが「G-PDCA勉強法」です。
「PDCA」という言葉自体は、多くの方が知っているはず。Plan(計画)→Do(実行)→Check(確認)→Action(改善)というサイクルを繰り返すことで業務を継続的に改善していける――仕事で実践している人もいるでしょう。これを勉強に当てはめ、先頭にGoal(ゴール)をつけ加えたのが「G-PDCA勉強法」です。
「G-PDCA勉強法」の何がいいのか? 具体的にどうすればいいのか? 詳しく説明していきましょう。
「G-PDCA勉強法」が優れている理由
G-PDCA勉強法を提唱しているのは、税理士や時間管理コンサルタントとして活躍する石川和男氏。石川氏いわく、G-PDCAのサイクルを回すことには、大きくふたつのメリットがあるのだそう。
【メリット1】成果が出るスピードが加速する
その勉強をして達成したいことはなんなのか――このゴール設定が「勉強を加速させてくれる」と石川氏は述べています。
自分が何を目指すのかが明らかでなければ、計画の立てようがありません。計画がなければ行動にも一貫性がなくなり、勉強が行き当たりばったりになりがち。「今日はなんとなくここを進めよう」「今日は疲れたからいいや」と気分に左右されたり、本来であれば必要のない範囲まで過剰に勉強したりしてしまうかもしれません。これでは、勉強効率がきわめて悪く、無駄も多すぎますよね。
勉強とは本来、自分が目指す姿との差分を埋めていくもの。ゴールが明確になって初めて、自分がやるべきことも浮かび上がってきます。ゴール設定は、無駄なく最速で結果を出すうえで、基本的かつ重要なことなのです。
【メリット2】自分の勉強をアップデートできる
石川氏は、ほとんどの人が計画(P)と実行(D)で終わってしまっていると指摘します。つまり、検証(C)と改善(A)ができていないということです。
たとえば模擬試験を受けて50点しかとれなかった場合、「なぜ50点しかとれなかったのか?」を深く分析しないと、勉強の方向性が誤ったものになってしまいます。「時間が足りなかった」のであれば時間を意識した勉強が必要になりますし、「ケアレスミスが多かった」のであれば日々の勉強で見直し習慣をつけなければいけないでしょう。
検証・改善のステップがあることで、実態に即した計画を再構築でき、自分の勉強を逐一アップデートしていけるのです。
それではここからは、G-PDCA勉強法の実践方法を具体的に説明していきましょう。
G(ゴール)――「目標」と「目的」を明確にしよう
ひとくちにゴール(G)と言っても、大きく2種類に分かれます。「目的」と「目標」です。目的とは「実現したいこと」であり、目標とは「目的を達成するための手段」のこと。
【目標】社会保険労務士の資格試験に合格する
【目的】高齢者の方々が安心して過ごせる社会にしたい。そのために、社会保険労務士の資格のとって年金問題に対するアドバイスをしたい
石川氏は、目的は夢やビジョンに置き換えられるもので「目標よりも重要」だと述べています。なぜならば、今日は勉強するか遊びに行くかといった選択を迫られたときに、「目的を達成させるための勉強を選ぶ」という判断ができるから。目的が勉強のモチベーションを高めてくれるのです。
「◯◯の知識を得たい」「△△の試験に合格したい」といった目標は、比較的もちやすいはず。では、その目標の先にはどんな夢やビジョンがあるのでしょうか。「目的」「目標」というふたつのゴールを設定するところから始めましょう。
P(計画)――ざっくりPDCAを回して “現実的な計画” へと調整しよう
最初に立てた計画にこだわりすぎる必要はありません。石川氏いわく、計画は「仕事の状況や生活スタイルに合わせて柔軟に変えたほうがよい」とのこと。そこで、最初の1週間でPDCAをざっくり回してみて、計画の妥当性を検証してみましょう。
たとえば、最初は「1日2時間勉強する」という前提で計画を立てていたものの、実際に1週間過ごしてみたら「残業が多い木曜日と金曜日は1時間が限界だった」としましょう。そうしたら、「木曜日と金曜日は1時間とし、不足分は土日でカバー」などと変更するのです。あるいは、想定よりも勉強内容が難しくテキストの進みが遅いことがわかったら、現実的なスケジュールで計画を立て直すのも手でしょう。
私たちは往々にして希望的観測で未来を予測しがちですが、達成が難しすぎる計画は挫折の原因になりえます。勉強を継続しないことには結果につながらないので、挫折しないためにも、計画を現実的なものへ微調整していきましょう。
D(実行)――制限時間を設けよう
勉強するのであれば効率も追求していきたいもの。石川氏は「意図的に制限時間を設ける」ことをすすめています。「いつまでに終わらせる」という期限は、私たちの集中力を高めることにつながるからです。
ここで重要なのは、35分で終わりそうであれば「35分」ではなく「30分」と時間設定すること。石川氏は、シビアな制限時間を設けることで「ハイスピードで問題を解いていく習慣」がつき、テキストを読んでいても「自然と速読できるようになっていく」と述べます。
だらだら勉強を進めては、せっかくの貴重な時間が無駄になりますし、学習生産性も上がっていきません。実行段階では効率を重視しましょう。
C(検証)とA(改善)――6W4Hの視点で改善ポイントを探ろう
自分の勉強をアップデートするうえで検証(C)と改善(A)のステップが必須であることは先に述べたとおりですが、どんなポイントに着目すればいいか疑問に思う人もいることでしょう。石川氏が紹介する「6W4H」の視点を参考にしてください。
Where:どこで
Who:誰が
Whom:誰に
What:何を
Why:なぜ
How:どのように(手段)
How much:いくらで(金額)
How long:どのくらいの期間で
Hoka:ほか(上記以外)
たとえば、ここ最近の勉強が思うように進まなかったという場合は、以下のような視点で探っていくことになります。改善策を考える際は、抽象的にならないように具体的な数字を使うのがポイントですよ。
Where:自宅では集中できなかった→出社前8時に会社近くの喫茶店で勉強しよう!
How long:3章が難しかったのでもう少し時間が必要だ→計画を3日だけ後ろ倒しにしよう!
先に述べたとおり、最初の計画に固執し続けるのは得策ではありません。計画と現実がズレるのは仕方がないからこそ、検証と改善を通して日々アップデートするのが大事。現実を見て「いま何をすべきか」を考えて次の計画に反映させることで、勉強の質は向上していくことでしょう。
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勉強のゴールはありますか? 勉強でもPDCAを回せていますか? しっかり成果を出すために、お伝えした「G-PDCA勉強法」を取り入れてみてください。
(参考)
石川和男(2018),『G-PDCA勉強術ー必ず目標達成できる方法』, 明日香出版社.
THE21オンライン|忙しくても効率的に成果を出せる「G+PDCA」学習法
【ライタープロフィール】
西ひとみ
大学では教員養成課程に在籍。大学院では英語教育を専門に学んだ。小学校教員免許、中学・高校教員免許(英語)を取得済。高校教師、小中学生向け塾講師としての指導経験がある。よりよいコミュニケーション法や最新脳科学への関心が高く、日々情報収集に努めている。