日々の仕事で努力を重ねているのに業績が上がらない、または目標を立てても途中で挫折してしまうと悩んでいる方はいませんか。仕事で高いパフォーマンスを出せるかどうかは「目標設定」で決まります。しかし、あまり深く考えず「これくらいを目標にしよう」とざっくり決めてしまう人が多いのも事実。そこで今回は、「目標設定力」の磨き方についてお伝えします。
「目標設定」を甘く見てはいけない
目標を設定するのは意外と難しいもの。目標が適切でないために十分なパフォーマンスが発揮されない、ということも少なくありません。
たとえば、明らかに高すぎる目標を立ててしまうと、とうてい実現不可能だとわかった途端にモチベーションが下がってしまいます。かといって目標が低すぎても、容易に達成できてしまうため本人や組織の成長にはつながりません。あるいは、最初に立てた目標に固執しすぎるのも問題。状況が変われば目標や戦略が変わるのは当然なのに、最初に設定した目標にこだわっていては、成果を上げられない可能性が高まります。また、曖昧な目標を設定してしまうと、具体的な行動計画に落とし込むのは難しいでしょう。
グロービス経営大学院教員の荒木博行氏は、「目標設定力」が不足していると、目標自体が足かせになり全体のパフォーマンスが落ちかねないと指摘します。「目標設定力」は、自分自身あるいはチームのパフォーマンスの高低を左右する重要なファクターのひとつなのです。では、どうすれば目標をうまく立てられるようになるのでしょうか。目標設定力を磨くにあたって必要不可欠な3要素をご紹介しましょう。「What」「When」「Why」の3つです。
【1】What:何を目標にすべきか?
まずは、目標とする具体的な項目を決めましょう。前出の荒木氏いわく、目標には「発生型目標」と「設定型目標」の2種類があるとのこと。
「発生型目標」とは、すでに発生している問題をなくすための目標を指します。たとえば、「製品の不良品率を現在の5%から基準値の2%まで落とす」といったものです。あらかじめ決められた基準値が目標になるため、設定自体は比較的容易だと言えるでしょう。
もうひとつの「設定型目標」とは、まだ問題が顕在化していない状況において、自ら意志をもって設定する目標のこと。たとえば、「イベントの集客数をX人にしたい!」といったものが挙げられるでしょう。明確な基準値が存在しないため、目標自体の妥当性の判断が難しいという側面があります。
しかし、達成しても “標準に戻るだけ” の発生型目標に対して、自分やチームを大きくストレッチさせる作用が期待できるのが設定型目標。近年では特に自ら課題や問題を設定し解決へと導ける力が求められるため、重要度で考えると「発生型目標<設定型目標」と言うことができます。
設定型目標に関して、グロービス経営大学院経営研究科研究科長の田久保善彦氏は、「自分の能力を100%としたときに届くか届かないか、120%のレベルの目標を立てる」ことをすすめています。なぜなら、目標は高すぎても届かず、低すぎても達成しがいがなくなってしまうからです。
先ほどの「イベントの集客数をX人にしたい!」という例で考えてみると、「前回のイベントでは200人集客できたから、次は240人を目指そう」くらいが適切だと考えられるでしょう。「イベントには500人来てほしい」とまで増やしてしまうと、達成のハードルが上がりすぎている可能性が高いということです。
また、項目を具体的な言葉で表現しておくことも必要。目標に明確な意図をもたせ具体的な行動に落とし込むプロセスによって、個人や組織は大きく成長します。
たとえば、「今月は5件の取引を成功させたから、来月はそれ以上の件数を達成する」とするよりも、「今月は5件の取引を成功させたから、来月は6件成功できるよう資料作成に力を入れる」と表すほうが、現状と目標とのギャップが明確になり、やるべきことを具体化しやすくなるはずです。ちょっとした言葉の違いではありますが、目標を具体的行動へつなげられるかどうかの分かれ道になると言えるでしょう。
【2】When:いつの達成を目指すか?
「いつまでに達成するか」を決めるのも重要です。達成期限によっては、自分がとるべき行動も大きく変わってくるからです。
前出の荒木氏いわく、達成期限を考えるときのポイントは「短く、細かく」。たとえば、「年間で売上を前年の2割向上させる」のような長期的な目標があったとしても、それだけでは達成のために何をすべきか具体的に見えてきませんよね。それを短期的な目標に分解することで、より具体的な行動へ落とし込みやすくなります。「四半期ごとに、売上が前期から5%の伸び率となっているようにする」「毎月の新規契約件数を前月より10件増加させる」「前週の業務中に出てきた課題を、次週には8割以上解決できているようにする」といった具合です。
長期的な目標だけだと、自分がいまどのレベルにいるのかを把握しづらく、目標までの距離を途中で見誤って、気づいたときには軌道修正ができない状態になっているかもしれません。一方、短期的な目標も一緒に立てると、順番にステップを踏むことでゴールまでのイメージを常にもち続けられるため、「前進している実感」が得られます。もし計画がうまくいかなかったとしても、途中で少し調整すればすぐに軌道修正できるでしょう。
【3】Why:なぜその目標にすべきか?
目標は、なぜそれを設定したのかがわからなければやらされ感が強くなってしまい、心理的に重い負担となりかねません。荒木氏は、目標設定の理由や背景を事前に整理し、目標に至るストーリーをつくっておくことで、達成のイメージが湧きモチベーションを維持しやすくなると述べています。
たとえば、「今月は30件の営業業務をこなす」という目標があった場合。「なぜ30件取り組む必要があるのか?」という部分を考えないと、達成する意味がわからず、数字をただ盲目的に追いかけている感覚へ陥って息切れしやすくなってしまいます。
一方、「社内で、今期の利益を前期より20%アップさせることが決まった」「業界内に追い風が吹いてきており、いまが業績を伸ばせるチャンス」「先月は25件達成でき、今月30件達成できればトップセールスになれる」といったように、目標達成までのストーリーがあると仕事への納得感につながるはず。そうすれば、きっと高いパフォーマンスを出せるようになるでしょう。
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最初の目標設定を雑に済ませると、後で痛い目を見ることになるかもしれません。「目標設定力」を磨いて、せっかくの努力を無駄にせず、自己成長の糧にしましょう。
監修:グロービス経営大学院
(参考)
グロービス経営大学院(2015), 『グロービス流 リーダー基礎力10』, 東洋経済新報社.
GLOBIS CAREER NOTE|できるリーダーに求められる「目標設定力」とは?
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STUDY HACKER 編集部
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