仕事の質、効率、能力を上げる——。これらの課題は、ビジネスパーソンとしての使命と言ってもいいでしょう。でも、ただがむしゃらに勉強して仕事に臨むだけではなかなか成果にはつながりません。きっちり成果を出すためにはどうすればいいのでしょうか。

その秘訣を聞いたのは、脳科学にも詳しい精神科医でありながら、最新著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)の売れ行きが好調な作家でもある樺沢紫苑(かばさわ・しおん)先生。脳科学に基づき、仕事で成果を生むための習慣を教えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS)

脳の特性を知り仕事をする時間帯を使いわける

ビジネスパーソンのなかには集中力が続かないと悩んでいる人もいるでしょう。それは当然のことです。なぜなら、「集中力は続かないもの」ですから。集中力をずっと維持し続けることはどんな人間にも不可能なのです。しかも、(いろいろな説はありますが)鍛えて集中力を上げるということもできないとわたしは考えています。

では、どうするかというと、集中力が高い時間帯に集中力が必要な仕事をして、集中力が下がったら、その回復に努めるのです。集中力が高い時間帯とは朝。そして、その後はどんどん下がっていく。休憩するとまた上がる。そのようにして、集中力というのはのこぎりの歯のようなかたちで推移します。

その推移に注目して仕事をすればいい。「食べ順ダイエット」というものがありますが、わたしがおすすめするのは「仕事順仕事術」とでも言いましょうか。もっとも効率的な順番で仕事をするというものです。集中力が一番高い朝は骨が折れる大物の仕事からはじめる。メール返信など数分でできる小物の仕事は、休憩がてらやればいいのです。

でも、多くの人はメール返信などのすぐに終わらせられる仕事からはじめますよね? 集中力の高い時間帯をそんなものに使うのは本当にもったいないこと。そして、骨が折れる仕事を後に回してしまう。そんな大変な仕事を集中力が切れた時間帯にやるのですから、朝にやる場合の何倍も時間がかかってしまうというわけです。

もっと言えば、集中力がもっとも高い朝は、ぜひ自分のために使ってほしいですね。会社の仕事ではなく、自分の勉強に使うのです。その時間帯になにをするかによって人生が変わると言っても過言ではありませんよ。

また、集中力が必要かどうかという点とは別に、仕事のジャンルと言いますか、中身に注目して時間帯を使いわけることも仕事の質や効率を上げるには重要です。脳はパソコンのように常に同じ状態で稼働しているわけではなく、時間帯によって特性が大きく変わるもの。夢によって情報が整理されてまっさらな状態になっている朝の脳は、論理的思考に向いています。わたしの場合だと、午前中は文章の執筆に充てています。学校の科目で言えば、数学や物理のようなものにも向いている。細かい数字が絡む仕事をするにも適した時間帯と言えますね。

午後の脳はどうなるかというと、疲れてくるために論理的なたがが外れます。アーティストやテレビ局員などにあることだと思いますが、疲れている夜中に突然すごくいいアイデアが浮かぶというのにはそういうわけがあるのです。いいアイデアとは、常識や論理から外れるような突拍子もないものが大半ですよね。論理的思考をしている朝の脳では、そういうアイデアが生まれにくいというわけです。

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年間500時間の「隙間時間」を使った「耳学」が人生を変える

忙しい人が勉強時間を増やすのは簡単なことではありません。勉強して仕事力を上げるためには、「隙間時間」をどう使うかということも大事でしょうね。通勤時間、それから電車の待ち時間や、飲食店で注文をした品を待っているようなちょっとした時間。それらをトータルすると1日に2時間ほどになる。週5日で10時間ですから、1年で約500時間、10年なら約5000時間です。人間がまったく別人に変わるのに十分な勉強時間が得られるわけです。

そんな貴重な時間にもかかわらず、多くの人はただスマホを見ているだけ(苦笑)。それも、やっているのはゲームやメールの返信などでしょう。でも、なかには電子書籍や日経新聞を読んで勉強している人もいる。ここでビジネスパーソンとして大きな差がつくのです。

さて、隙間時間になにをしましょうか。わたしがおすすめしているのは「耳学(みみがく)」。音声を聞いて勉強するということですね。最近は、Audible(オーディブル)などスマホで使える朗読ツールがいろいろと増えています。それで本の朗読を聞くわけです。倍速でも意外と聞き取れるものですよ。そうすると、1日の隙間時間で1冊の本の朗読を聞くことができる。1日で1冊の本を読むことを思えば、これはすごい量ですよ。

本を読むという行為には意外とエネルギーが必要とされるものです。しかも、満員電車ではなかなか読書できるものでもありません。その点、耳学ならつり革につかまって目を閉じている間も勉強できます。しかも、イヤホンやヘッドホンで周囲の音が遮断されますから、ものすごく集中できるというメリットもあるのです。

とはいえ、聞きっぱなしでは意味がありません。聞き終わった後に重要だと思ったことを書き出す。あるいは、聞きながらでもいい話だと思ったことはすかさずメモする。そういうふうにしてアウトプットと組み合わせないと、なかなか身にはなりません(第1回『』参照)。

しかも、アウトプットを意識すると、インプットの質も変わるのです。「重要なことを書き出す」という課題が与えられると、脳は探索行動を起こします。「これは自分にとって重要だ、これは重要じゃない」というふうに情報を吟味する。ただ漫然と聞くこととは比較にならないほど耳学が有意義なものになりますよ。隙間時間に耳学、ぜひ試してみてください。習慣として続ければ、将来的にあなたの仕事力を格段に引き上げてくれるはずです。

【樺沢紫苑先生 インタビュー記事一覧】
インプットとアウトプットには黄金比あり! 脳科学で「勉強」「記憶」の効率を劇的に上げる。
『人生に大きな差が出る! 脳科学に基づく「仕事力アップの習慣」』
脳科学で結果を導く! アウトプットスキル向上術

学びを結果に変えるアウトプット大全

樺沢紫苑

サンクチュアリ出版(2018)

【プロフィール】
樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
1965年生まれ、北海道出身。精神科医、作家、映画評論家。1991年、札幌医科大学医学部卒業後、札幌医大神経精神医学講座に入局。北海道内8病院への勤務を経て2004年からイリノイ大学に3年間留学。帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。メンタル疾患の予防を目的に、インターネット媒体を駆使して精神医学、心理学、脳科学の知識・情報の発信を続ける。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。