問題にはまり込んでしまって、なかなか抜け出せない。考えが凝り固まって、問題の答えが浮かばない。そんなとき、視点をちょっとでも変えることができたら、考えもつかなかった解決策が見つかるかもしれませんよね。しかし、その「視点を変える」ということはとても難しいこと。
このような状況に陥ってしまったときに有効な、問題解決のヒントになる質問術があります。名前は「メタモデル」。これを活用すれば、行き詰まっていた問題があっという間に解決するかもしれません。
メタモデルとは
メタモデルとは、NLP心理学で用いられる質問のテクニック。メタモデルでは、まず現在の状況を12のパターンに分類します。考えが凝り固まっていたり問題から抜け出せなかったりする理由は、そのときに陥っている考え方に何らかの情報が欠落しているから。そこで、各パターンに対して有効な質問をすることで欠落していた情報を復元し、考えが凝り固まった状態から脱し新たな視点を獲得することを狙うのです。
いま自分がとらわれてしまっている考えがどのような表現を用いたものであるかによって、状況は大きく1. 一般化、2. 歪曲、3. 省略の3つに分類されます。以下、1項目ずつ詳しく紹介しますので、自分がどのパターンに陥るケースが多いかをイメージしながら読んでみてください。
1. 一般化:「必ず~である」として他の可能性を排除してしまっている状態
1-1. 「~できない」 →「できない」と思い込んでいる要因を質問し、その要因を解決することで、「できない」を「できる」に変えます。 例)「私にこの仕事はできない」 →質問:「止めているものは何か?」
1-2. 「~すべきだ」「~すべきでない」 →主張と反対の仮定をおいて質問し、主張している必要性が本当に必要かを考え直します。 例)「一番になるべきだ」「従来の方法を変えるべきでない」 →質問:「もし一番にならなかったらどうなるのか?」「もし変えたらどうなるのか?」
1-3. 「全て、いつも、絶対に~だ」「決して~ない」 →例外がないか質問し、偏見・思い込みであったことに気づかせます。 例)「女はみんな外見にばかり気を取られている」「彼はいつも仕事が遅い」 →質問:「外見に気を取られていない女性に会ったことはないのか?」「彼の仕事が早かったことはないのか?」
2. 歪曲:思い込みが入り込んでいる状態
2-1. 語られていない前提をもとにしている →前提・根拠を質問し、具体性を導き出します。 例)「最近の若者はやる気がない」 →質問:「なぜそう思うのか?」
2-2. X=Yで考えている →2つの事項の関連性を質問し、思い込みが働いていないか考え直します。 例)「タスクが達成できなかった。私はこの仕事に向いていない」 →質問:「タスクが達成できないこととこの仕事に向いていないことは、どうつながるのか?」
2-3. X→Yで考えている →2つの事項の因果関係を質問し、思い込みが働いていないか、他の原因が関わっていないか考え直します。 例)「不景気だから売り上げが悪い」 →質問:「なぜ不景気は売り上げが悪いことの原因になるのか?」
2-4. 他人の気持ち・考え方を決めつけている →根拠を質問し、決めつけや思い込みではないか考え直します。 例)「彼から嫌われているに違いない」 →質問:「なぜ彼が嫌っているとわかるのか?」
3. 省略:必要な情報が抜け落ちている状態
3-1. 「誰が」「いつ」「何が」「どこで」「誰に」の省略 →具体的な情報を質問し、一部から全体を判断していないか考え直します。 例)「みんなが反対している」「私は駄目な人間だ」 →質問:「みんなとは誰のことか?」「何が駄目なのか?」
3-2. 具体的な動作の省略 →具体的に言いたいことを質問し、曖昧な表現を改めます。 例)「もっとちゃんとしろ」 →質問:「具体的に何をどうすればいいのか?」
3-3. 比較対象の省略 →比較対象を質問し、捉え方をより具体的に確認します。 例)「この商品は値段が高い」 →質問:「何と比べて値段が高いのか?」
3-4. 評価・判断基準の省略 →評価・判断基準を質問し、捉え方をより具体的に確認します。 例)「彼女は仕事の出来が悪い」「彼のプランはうまくいかない」 →質問:「誰を基準にして出来が悪いのか?」「誰がそう決めたのか?」
3-5. 具体性やプロセスを省略した名詞化 →名詞化された表現に具体性を求める質問をし、具体的な解決策を導き出します。 例)「多様性が足りない」「人間関係がうまくいかない」 →質問:「多様性とは具体的に何がどうなることか?」「人間関係とは具体的に誰とのどのような関係か?」
以上が、メタモデルの12パターンです。これまでの自分を振り返って、「このパターンに陥っていたかもしれない」というものはありましたか?
メタモデル実践編
では、実際にメタモデルで問題を解決してみましょう。「後輩のやる気が感じられない」という問題があったとして、その問題をメタモデルによって解決するステップの例を示します。
現状における問題:「後輩のやる気が感じられない」 「後輩のやる気が感じられない」という考え方には具体性が欠けている。そこで、具体性を求める質問をする(3-5.) →「『やる気が感じられない』とは具体的にどういうことか?」 →「後輩はいつも仕事が遅い」 「後輩はいつも仕事が遅い」という考え方には「必ず遅い」という一般化が働いている。そこで、例外はないのかを確認する(1-3.) →「本当に『いつも』か?」 →「いや、ここ2、3週間遅くなった」 「ここ2、3週間遅くなった」という考え方には、具体的な行動が説明されていない。そこで、具体的にはどのようにして仕事が遅くなったのかを確認する(3-2.) →「具体的にどのように遅くなったか?」 →「以前は納期の3日前までには確実に仕上げていたのに、最近は直前にならないと仕上がらない。3日前に仕上げるように指示を出せばよいのでは?」
このように、メタモデルの質問を駆使することで具体的な解決策に近づくことができます。一度で解決しなければ、複数のパターンを重ねて使うことが可能です。また、該当するパターンがなさそうでも、問題の具体性を追及することによって、メタモデル的な思考で解決に近づくことができます。
*** 一度に全てのパターンを覚えることは大変だと思います。これから何か問題に突き当たったときに、今回紹介したメタモデルを見返し、使える質問はないかどうか考えてみてください。思いも寄らなかったところに解決の糸口が見つかるかもしれませんよ。
(参考) NLP-JAPANラーニング・センター|NLP用語集:メタモデル Life&Mind|プロが活用する究極の質問スキル!NLPのメタモデルとは? 実践心理学NLPのすべて|質問の仕方で問題解決へと導く メタモデル