「習慣化」が仕事力を上げる——習慣化コンサルタント・古川武士さんインタビュー【第1回】

限られた時間のなかで、より多くの成果を出すための「仕事力」を上げるにはどうすればいいのでしょうか。

「そのために必要ないくつかの習慣があります」。そう説くのは、習慣化コンサルタントとして各方面で活躍する古川武士さん。まずは、そもそもなぜ習慣化が難しいのか――そんなお話から聞いてみました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹(ESS)

「いい習慣」が大きな成果をもたらしていく

勉強したいこと、勉強しなければならないことがあるのになかなか続かない。そんなふうに「習慣化」できないことに悩んでいるビジネスパーソンは多いことでしょう。

でも本来、人間というのは、習慣化することができる能力を備えた生き物です。我々の脳には行動を覚える部分があって、起きる、歯を磨く、顔を洗うといった行動を、ほとんどなにも考えることなく行なうことができます。

ただ、その習慣を脳がきちんと覚えるまでには、ちょっとだけ時間がかかる。覚えてくれるまでその行動を繰り返さないと、「これはいつもどおりやることなんだ」となかなか認識してくれません。

その壁を越えることさえできれば、その行動をすることに心地良さを感じ、逆にその行動をしなければ心地悪さを感じるので、習慣としてしっかり定着するというわけです。

ひと言で習慣といっても、じつはいくつかの種類があります。歯磨きなど「行動の習慣」、早寝早起きなど体の「リズムの習慣」、そして、考えることが関連する「思考の習慣です。また、それに紐づいてくるものがあります。新しくはじめる」「今までしていたことをやめる」「今までしていたことを別のものに置き換えるという3種類です。

いずれにせよ、これまでの行動メカニズムを変えるということですから、そう簡単なことではありません。「人間は習慣化する生き物」と申し上げておきながら、やっぱり習慣化が難しいというのは事実だと思います。

わたしがそもそも習慣化に着目したのは、ビジネスコーチングをおこなっていた頃のことでした。ビジネスパーソンが成果を出すにあたって、習慣化できないことが大きな足かせになっていると感じたからです。

ビジネスパーソンに習慣化が重要な理由はふたつあります。

ひとつは、「仕事は習慣の塊」だということ。仕事で成果を出そうと思えば、たとえば英語やMBAの勉強など、緊急ではないけどやるべきことがあります。それらは習慣として継続しないと結果が出ないものですよね?

また、決めたペースでPDCAといったかたちで振り返りを行なう、計画をする、部下や上司とこんなふうにコミュニケーションを取る、会議資料はこんなふうにつくる――これらもまた、言ってみればすべて習慣です。そういったものを、理想として決めたかたちできっちり行なうことができれば、当然ながら成果につながるというわけです。

もうひとつの理由は、「心身ともに健康でなければならない」ということ。仕事に追われて無理をすると、健康を損なってしまいます。そうすると、仕事どころではありません。そうならないためには、睡眠時間をもう少し多くとる、運動をするなど、行動習慣をいかにコントロールするかということが重要になってきます

特に、仕事のストレスで心の健康を害した場合はやっかい……。そのストレス発散のために、人間は、食べる、お酒を飲む、タバコを吸う、スマホをいじるといった行動に走りがちです。なぜなら、そういう即物的な習慣は簡単に「プチ快感」を与えてくれるからです。

でも、それらは体に悪かったり時間を無駄にしたりとあまりいい習慣ではないし、結果的に心身を不健康にしてしまうものでもある。仕事で成果を出すためには、悪い習慣を手放して、いい習慣を身につけることがなによりも重要なのです。

仕事の密度と将来の自分を高めるいくつかの習慣

とはいえ、働いている限り、無理をしてでもやらなければならない仕事もあるでしょう。であれば、もっと密度の高い働き方をすればいいのです。

そこでおすすめしたいのが、「退社時間を決める」ということ。さらに、ただ退社時間を決めるだけではなく、その後にプライベートの予定を入れてしまいましょう

同じ時間でより多くの成果を出すためには、「いつもとちがうやり方」「リズム」「スピード」で仕事をして、仕事の質を高めなければなりません。でも、それがなかなか難しいからこそ、普通はいつも通りのやり方でより多くの時間を使って働こうとします。時間という量の制限がなければ、仕事の質を高めようという発想にはなかなか至らないもの。だったら、退社時間を決めて、自ら制限してしまおうというわけです。

わかりやすい例が、小さなお子さんを持ったワーキングマザーの働き方かもしれません。彼女たちは、幼稚園や保育園に子どもを迎えに行く時間が決まっていますから、ものすごく工夫をしています。とにかく必死になって仕事の質を高めようとするのです。いわゆる、火事場のばか力というやつですね(笑)。

仕事の締め切りが迫ってきてもう時間が足りないというときになって、はじめてそれまでと仕事のやり方を変えた――そんな経験が皆さんにもあるのではないですか? 人間、追い込まれると見えてくるものがあるのです。退社時間を決めて予定を入れることで、自分を追い込んでみれば、これまでとちがう質の高い働き方ができると思いますよ。

また、「始業時にメールを見ない」こともいい習慣かもしれません。

時間管理の鉄則は、優先順位の高いものから着手すること。ところが、出社して最初にメールを開いて「急ぎで返信をください」なんて文面が目に入ると、それにとらわれてしまう。そうなると、気持ちが落ち着かないから返信してしまいますよね? メールという、外から来るものによって、優先順位が崩されてしまうわけです。

朝の9時に仕事をはじめて10時までメールを見なかったからといって、そんなに大きな問題は起きないじゃないですか。頭が一番フレッシュなときに、まず手をつけるべき仕事に取り組むことが重要です。

加えて、より高い成果を出したいというのなら、「自分にとって価値のある仕事」の時間を先に「引き算」しておきましょう。

僕の場合だと執筆がそれに該当します。進行中のプロジェクトの仕事などに振り回されると、執筆はどうしても後回しになってしまう。でも、僕の仕事を膨らませてくれる本当に重要な仕事は執筆であるということは、紛れもない事実なのです。だったら、その時間を先に取っておかないとならない。必然的に、執筆の時間を1日の労働時間から引き算して、残りの時間は他の仕事に取り組むことになる。もちろん、最初から引き算されていますから、残りの時間の密度、仕事の質を高める工夫は必要です。

「自分にとって価値のある仕事」を消防署の仕事でたとえてみましょうか。消防士である皆さんにとって、その日のうちに絶対にやらなければならない緊急の仕事は、火事の現場の「消火」になります。もちろん、それも大事な仕事です。

でも、そもそも火事が起きなければ消火の必要はありませんし、人命が失われることもありません。人の命と地域を守るという使命を果たすには、消防設備の点検や避難訓練など「防火活動」がより重要、より価値があると言えます。そういう仕事、将来のためにもやるべきことが皆さんにもあるはずです。

1時間でも2時間でもいいのです。上司なら部下のマネジメント、プロジェクトのマネジャーならプランニングの振り返りなど、自分にとって価値のある仕事を定義して、その時間を先に取っておきましょう。それらはいずれ、自分にとって大きな成果をもたらしてくれるはずです。

仕事じゃなくても、「勉強や読書の時間がない」なんていう人もいますけど、それは生活の習慣化がなされておらず、その時間を取っていないというだけですからね。やる人はしっかりやっているものですよ。

■第2回『習慣から自分を変える技術』はこちら ■第3回『勉強・読書……インプット行動を習慣化するテクニック』はこちら

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30日で人生を変える「続ける」習慣

古川武士

日本実業出版社(2010)

【プロフィール】 古川武士(ふるかわ・たけし) 1977年3月20日生まれ、大阪府出身。習慣化コンサルティング株式会社代表取締役。関西大学経済学部卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。ビジネスコーチングの経験から「習慣化」がビジネスパーソンにとって最も重要だと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。独自の習慣化理論・技術を基に、個人コンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援をおこなっている。『図解 マイナス思考からすぐに抜け出す9つの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『成果を増やす 働く時間は減らす 高密度仕事術』(かんき出版)など、著書多数。

【ライタープロフィール】 清家茂樹(せいけ・しげき) 1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。野球好きが高じてニコニコ生放送『愛甲猛の激ヤバトーク 野良犬の穴』にも出演中。

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