「仕事が忙しくてなかなか勉強できない」「いつも予定が狂い勉強が習慣づかない」「勉強を頑張っているのに成果が出ない」と、あれこれ勉強について悩んでいるみなさまに、社会人が必ず勉強に失敗する要因を5つ紹介しましょう。ご自身に当てはまる部分がないかどうか、ぜひ一度ご確認ください。
1.「所要時間」を把握していない
国際医療福祉大学大学院教授・和田秀樹 こころと体のクリニック院長の和田秀樹氏は、「今日やりたかった勉強が半分もできなかった」などと勉強スケジュールが狂いがちな人は、「所要時間」を把握していないケースが多いと述べます。
野菜スープを煮込む時間が20分だからと、所要時間を20分強だと把握していたら、思いのほか野菜を洗って切ることに時間かかり、予定が狂ってしまうのと同じです。
そのため、たとえば以下のように「勉強を分割して考えた所要時間」を正確に把握したうえで、勉強計画を立てるようすすめています(※以降の和田氏の説明は、2013年6月17日公開の株式会社日立ソリューションズ「和田式オトナの勉強術」より)。
- テキストを10ページ読むのにかかる時間⇒〇分
- 予習・復習・ミニテストにそれぞれかかる時間⇒〇分
2.「スキマ時間用の勉強」が未設定
どんなに忙しい社会人でも、電車の待ち時間やアポイントの合間など、ちょっとしたスキマ時間は意外とあるはず。これを勉強のための時間として有効活用しない手はありません。
しかし、短い時間にできる勉強を把握していないと、うまく活かせない可能性があります。スキマ時間に勉強を始めたものの、時間切れで中途半端になってしまったり、何をやるか考えているうちに、時間が過ぎてしまったりしたことはありませんか?
イントランスHRMソリューションズの代表取締役の竹村孝宏氏によれば、スキマ時間は “いつ・どこで・どれくらい” できるか事前に把握しておくことが難しいため、「スキマ時間用のリスト」をつくっておくといいそうで(2019年1月11日公開の日経クロステック記事より)。
そうすれば不意に時間が空いたとき、リストからパッと選んで始められるわけです。このアドバイスは仕事向けですが、スキマ時間の勉強にも同じことが言えます。前出の和田氏が挙げた例で言うと、「5分あったら英単語をひとつ覚える」「15分あったら問題集をひとつ解く」などとリストにしておくと便利ですよ。ちなみに、和田氏おすすめのスキマ時間用の勉強は以下のとおりです。
- 10分あれば⇒前日の復習
- 15分あれば⇒問題集を解く
- 30分あれば⇒興味があることを調べ学習
3.「サンクコスト」に執着
サンクコスト(埋没費用)とは、もう取り戻せない費用のことです。そして、将来的に損失が生まれる可能性があっても、かかった費用・労力・時間などを惜しみ、投資や事業を続けていくことをサンクコスト効果といいます。
勉強で言えば、自分にとって役に立たない参考書でも、「せっかく奮発して買ったから、もったいない」とそのまま使い続けること。まったく効果が現れない勉強法なのに、「せっかくずっと続けてきたから、いまやめるのはもったいない」というのもサンクコスト効果です。
つまり、本当に大切なのは今後の損益なのに、サンクコストに執着するあまり、非合理的な判断をして損をしてしまうことを意味します。学習効果が現れないと感じるなら、いま一度サンクコストに執着していないか自問してみることをおすすめします。
ちなみに現役東大生の相生昌悟氏によれば、東大生は数ページ読んで「この本は欲しい知識を得られる本じゃない」と思ったら、古本屋に売るなどしてすぐ切り捨ててしまうのだそう。前出の和田氏も一部だけ熟読して、役立たないと思ったら早々に違う本を買ったほうが効率的だと述べます。
「サンクコスト」はサッサと忘れ、将来的にメリットがあるかどうかを最優先で考えましょう。
4.「獲得目標」を立てない
獲得目標とは「自分がどうなりたいのか、何を得たいのか」という明確な指針のこと。和田氏によると、日本人はあまり獲得目標を設定する習性が身についていないのだとか。
「英語は話せたほうがいいから勉強しておこう」などと、漠然とした意識で勉強を始めたけれど、気分が乗らず身にもなっていないなんてことはありませんか? これは明らかに勉強がうまくいかない原因のひとつ。このような勉強は意味がないと和田氏は言います。
たとえば「〇年後に国際弁護士になる」「外資系の〇社に転職したい」といった明確な獲得目標を立てたほうが、学ぶことに対し真剣になることができ、集中力も高まるはずです。
前出の相生氏いわく、目的が明確であればムダな努力をする時間も生まれないとのこと。ハッキリとした目的が生まれることで意識や行動が変わり、結果として効率よく勉強ができるわけです。
5.「高原現象」が起きているのに勉強
学習の進行過程をグラフに示した学習曲線が、高原のように一時水平になることから、一時的に学習効果がみられなくなることを「高原現象(プラトー)」といいます。なんだか上達スピードが落ち、勉強がはかどらなくなって、やる気も低下してきたというのであれば、高原現象の可能性があります。
この状態で自分を酷使しても、不毛な時間を生むだけなのでおすすめしません。和田氏いわく、高原現象が起きているときは新しいことをインプットしないことが重要なのだとか。思いきって休んだり、趣味やスポーツでリフレッシュしたりするといいそうです。
また、学習効果が出ないとネガティブな気分になってしまった場合は、復習したり、得意科目ばかり勉強したりすると「これは知っている・わかっている」と安心でき、自信とやる気を回復しやすくなるとのことです。
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社会人が必ず勉強に失敗する要因を5つ紹介しました。これらに気をつけ、無理をしすぎず勉強してくださいね。
(参考)
PRESIDENT Online|東大模試1位が断言「ムダな努力を続ける人が根本的に勘違いしていること」 漠然とした努力はずっと報われない
株式会社日立ソリューションズ|忙しいビジネスマンへ!絶対に挫折しない!和田式オトナの勉強術
錯思コレクション100 Collection of Cognitive Biases|サンクコスト効果
日経クロステック(xTECH)|スキマ時間を効果的に活用するコツ
コトバンク|高原現象(こうげんげんしょう)とは
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