「朝の勉強 or 夜の勉強」あなたに合っているのはどっち? 学習効果の違いをまとめてみた

朝の勉強 vs 夜の勉強01

仕事が忙しく、学生の頃のように時間をかけて勉強に取り組みたくてもなかなかできない……。こうしたビジネスパーソンの方は多くいるのではないでしょうか。

そんな人は、限られた時間を有効に使えているか見直してみるとよいかもしれません。なかでも着目してほしいのが、起床後と就寝前。じつは、朝と夜に行なう勉強には、それぞれメリットとコツがあるのです。今回の記事では、貴重な時間を無駄にしない朝と夜の勉強法をご紹介しましょう。

「朝」に勉強するメリット

まずは、朝の勉強のメリットについて考えてみます。

脳科学者の茂木健一郎氏いわく、朝は脳がさえているため、1日のなかで最も効率よく作業できる時間帯。特に起床後の3時間が重要だそうで、この時間を茂木氏は「ゴールデンタイム」と呼んでいます。

茂木氏の解説によると、日中に得たさまざまな情報は、脳の大脳辺縁系の一部である海馬に、短期記憶として一時的に保管されたあと、大脳皮質の側頭連合野へと移されます。この時点ではただ蓄積されているだけの状態である記憶が、夜に睡眠をとることによって長期記憶へと変わるのだそう。茂木氏は、睡眠を経て記憶が整理されると朝には脳内がスッキリするため、創造性を発揮できたり思考の回転が速くなったりすると言います。

また、朝には、ドーパミンやアドレナリンという神経伝達物質が大量に分泌されると、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏は述べます。

小林氏によると、ドーパミンは、記憶や認知作用をつかさどる中枢神経を強化し、脳の動きを活発にしてやる気を導くそう。また保健師の藤尾薫子氏は、アドレナリンには脳を覚醒させて集中力を高める働きがあると言います。朝に勉強を行なうと、こうした神経伝達物質によるよい作用を享受できますよ。

朝の勉強 vs 夜の勉強02

「夜」に勉強するメリット

次に、夜の勉強のメリットも考えてみましょう。

東京大学薬学部教授で脳研究者の池谷裕二氏によると、夜、特に就寝直前に勉強すると、記憶力が高まるとのこと。日中に得た知識が睡眠中に整理整頓され、長期記憶として定着することは前述のとおりですが、特に眠る1時間前に取り入れた知識は、記憶により定着しやすいのだそう。

実際、池谷氏はこんな実験を行なっています。被験者に、語学を勉強する前後にテストを受けさせ、勉強の前後でどれだけ点数が上がるかを調べたものです。すると、勉強直後に受けたテストの点数は、当然ながら勉強前のテストよりも高いという結果。加えて、勉強してから睡眠をとり翌朝に受けたテストの点数は、勉強直後のテストの点数を上回っていたそうです。睡眠中に脳内の情報が整理され、“使える知識” としてしっかり記憶されたことがわかりますね。

朝の勉強 vs 夜の勉強03

「朝の勉強」と「夜の勉強」の使い分けのポイント

ここまでに説明したことをふまえ、朝の勉強と夜の勉強を使い分けるうえでのポイントをご紹介します。以下でお伝えするコツをしっかり押さえれば、朝と夜の勉強がいっそう有意義なものになりますよ。

朝には「前日の復習」や「思考力・創造力が必要な勉強」がおすすめ

朝の脳は、記憶が整理されてスッキリとさえた状態なのでしたね。そんな朝に行なうとよいのは、思考力や創造力が必要な勉強。レポート作成のような、頭を使って集中してこなさなければならないような勉強は、脳が疲れている夜よりやはり朝のほうが向いているようです。

また池谷氏によると、じつは睡眠にはひらめきを促す役割もあるとのこと。前夜に課題に目を通しておけば、翌朝にひらめく可能性を高められると言います。いい案や難しい問題の解法を思いつきたいときなどは、前の晩に課題に目を通しておいたうえで、朝に取り組むといいでしょう。

加えて、朝は前日に暗記したことの復習にも最適。池谷氏のほか、小中学生向け学習塾を運営する森大輔氏が、これをすすめています。睡眠直前に勉強した内容をちゃんと思い出せるか。それをチェックするのに、朝はいい機会となるでしょう。

ただし、朝の勉強では気をつけるべき点もあります。森氏いわく、朝に新しい知識を暗記しようとするのは、あまり効率がよくないとのこと。なぜなら、朝に暗記をしても、たくさんの情報が1日のうちに積み重なり、夜寝る頃まで記憶に留めておけなくなるからです。暗記という点では、朝は新たな知識の吸収よりも、既習の内容の復習に力を置いたほうがいいでしょう。

朝の勉強にはメリットがあるとわかっても、朝は眠くて勉強に身が入らないという人もいるかもしれません。そんな人は、「1分だけでもやってみよう」という気持ちで勉強してみてください。前出の茂木氏は、1分やれば脳の活動としては充分だと伝えています。最もさえた状態の脳を少しでも活動させる意味で、まずはたった1分でもよいので、朝にテキストを開くなどしてみましょう。そうすれば勉強のハードルが下がり、ほかのやれることにもきっと目が向きますよ。

朝の勉強 vs 夜の勉強04

夜には「暗記力が必要な勉強」を

夜の勉強に向いているのは、やはり暗記ものです。池谷氏によれば、英単語や歴史用語、仕事で必要な情報などを覚えるとよいそうですよ。一方で、論理的な思考が必要な勉強は目がさえてしまう可能性があるため、やめておいたほうがいいとのことです。

夜の勉強にも注意点があります。まず、徹夜の勉強は論外だという点。どれだけ頑張って勉強をしても、睡眠をとらなければ長期記憶には残りません。池谷氏は、1時間多く勉強するくらいなら1時間多く睡眠をとるほうが、学習効果的に考えてもよほど大事だと断言しています。そういう観点からも、考えすぎて目がさえるような勉強はしないほうがよいのでしょう。

また、ここまでの池谷氏の解説からわかるように、勉強したあとはそのままベッドへ向かうことも大切です。テュービンゲン大学のスザンヌ・ディーケルマン氏らによる研究でも、何かを学習したあとすぐ眠りにつくほうが、その内容が定着しやすいことが明らかになっています。寝る前のテレビ視聴やスマートフォンいじりが癖になっている人は、注意したほうがよさそうです。

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朝の勉強も夜の勉強も、どちらにもよい点があります。自分に合ったやり方で、学習効果がより高まる時間に勉強してみてくださいね。

(参考)
THE21オンライン|脳科学者が勧める「朝時間」の使い方
プレジデントオンライン|自律神経の名医が「午前中はメールを読むな」と断言するワケ
Mocosuku|「アドレナリンがでる」 アドレナリンとは?何が起こっているの?
プレジデントオンライン|「寝る前1時間」は勉強のゴールデンアワー
All About|「朝勉強」のススメ~朝は勉強のゴールデンタイム~
AFP BB News|記憶定着には「すぐ睡眠」が効果的、独研究

【ライタープロフィール】
YUKA
大学ではフランス語を専攻。高校では一年間オーストラリアへ留学。海外への一人旅も経験し、夢は海外移住。趣味は音楽鑑賞・グルメ巡り・旅行など。

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