京大名誉教授「机にかじりついても可能性は伸びない」。勉強できる大人は “○○の時間”を大切にしていた

勉強で成果を出したい人こそ「趣味の時間」をつくるべき理由01

  • 休日返上で勉強を頑張っているのに、結果が出ない……
  • 仕事以外の時間は勉強に充てているのに、知識が身についた実感がない……

このように、勉強を頑張っているのに成果がともなわないと悩む人は、机にかじりつく時間を減らして、あえて趣味の時間をつくってみてはどうでしょうか?

脳科学者によると、趣味の時間をつくることは脳にとってさまざまなメリットがあるのだそう。勉強のスペシャリストのなかには、意図的に趣味の時間をつくっている人も。ではさっそく、趣味の時間が脳に与えるよい影響についてご説明しましょう。

趣味の時間をつくることが脳科学的によいふたつの理由

東北大学脳科学センター教授の瀧靖之氏は、趣味の時間をつくると脳のパフォーマンスが高まると述べています。ここで言う趣味の時間とは、「楽しみながら何かに没頭する時間」。瀧氏いわく、この時間が最高の脳トレになるとのこと。

具体的には、ふたつのメリットが得られると瀧氏は述べます。

1. 知的好奇心が高まり、記憶が定着しやすくなる

ひとつめは、趣味の時間を通して知的好奇心が高まり、記憶がよく定着すること。これには、知的好奇心が高い人ほど、海馬・腹側被蓋野(ふくそくひがいや)、側坐核、中脳黒質など、複数の脳エリアの活動量が高いことが関係していると瀧氏は説きます。

カーディフ大学脳研究画像センター上級研究員のマティアス・グルーバー氏らが実施した記憶に関するテストでは、雑学クイズによって知的好奇心が高まった状態のグループは、そうでないグループと比べて、記憶テストの正答率が高いという結果が出たのだそうです。

2. ストレスが軽減され、記憶力や思考力が上がる

もうひとつのメリットは、ストレスを減らせることです。ストレスは、記憶や思考に関わる海馬や前頭前野の機能を落としてしまうそう。逆に、ストレスが少なければ、脳の健康を維持しやすく、記憶力や思考力によい影響があるのです。

瀧氏いわく、趣味の時間を通して好きなことを思いっきりやると、ストレスの軽減につながるそう。おのずと、勉強した内容を覚えたり、難しい問題を考えたりしやすい脳の状態を保てるので、学習の成果が出やすくなると言えるでしょう。

勉強で成果を出したい人こそ「趣味の時間」をつくるべき理由02

大人になっても学べる人は、あえて趣味の時間をつくっている

勉強のスペシャリストのなかには、大人になってからも学び続けるために趣味の時間をつくる人がいます。

たとえば、京都大学名誉教授の鎌田浩毅氏は、週末に「遊びの時間」をつくり、オペラ鑑賞や神社仏閣めぐりなどをして過ごしているそうです。

趣味の時間は、勉強への意欲を高めるきっかけになると鎌田氏。たしかに、旅行をきっかけに各地の歴史を学ぶようになったり、温泉をきっかけに地学に興味をもったりすれば、教養を深められるでしょう。机にかじりついて勉強するだけでは、自分の可能性を伸ばすことはできないと鎌田氏は言います。

また弁護士で複数の著書をもつ白川敬裕氏は、「休むこと」を予定に組み込んで、読書や外出、録画したドラマを見るといった趣味の時間をつくっているそう。

というのも、オンオフの切り替えがあったほうが、勉強の成果が出やすいと、ラ・サール高校在学時の経験から学んだからだとか。夜中も休みなく勉強している友人ほど、成績がよくなかったのだそうです。休みがないとメリハリなくダラダラ勉強してしまうため、いい成績が出なかったのではないかと白川氏は振り返ります。

「休むこと」をタスクに含めるには、どうすればいいの? と思った方は、ぜひ鎌田氏が実践している方法を取り入れてみてください。それは、前もって美術館の入場券を購入したり、レストランの予約を入れたりして、おいそれとは変更できないスケジュールにしてしまうこと。映画鑑賞が趣味の人なら、さっそく休日に向けて、映画のチケットを予約してみてはいかがでしょうか?

勉強で成果を出したい人こそ「趣味の時間」をつくるべき理由03

趣味がない人には、このふたつがおすすめ

「趣味の時間をつくるといっても、趣味がないし、何をすればいいかわからない……」という人には、瀧氏によると旅行料理がおすすめだそう。どちらも事前に調べて計画を立てる過程で、知的好奇心が刺激されるからです。脳機能が高まり、勉強にも役立ちます。

1. 旅行

たとえば、旅行番組で知った場所へ出かければ、目的地への行き方や周辺のランチ情報を調べる過程で、知的好奇心が刺激されることでしょう。

旅行だからと、あえて遠くへ行く必要はありません。

瀧氏の場合は、休日に東京の麻布や赤坂界隈に出かけて坂の名前の由来を学んだり、「もともとこの一帯は大名の屋敷があったのか」と過去と現在を比べながら楽しく散歩をしているとのこと。行く場所について事前にインターネットや図書館で調べておくと、より知的好奇心が刺激されて楽しめるそうですよ。

2. 料理

SNSなどで見た料理をつくってみれば、レシピや必要な材料を調べ、段取りを考える過程で知的好奇心が刺激されるでしょう。手先を使う巧緻(こうち)運動によって脳が活性化する効果もあると、瀧氏は言います。

さらに、東北大学脳科学センター教授の川島隆太氏と大阪ガスグループによる共同実験では、料理をすると前頭前野が鍛えられると報告されています。

なお、脳神経外科医の築山節氏によれば、つくり慣れていない料理ほど、脳に与える刺激が大きいとのこと。手の込んだエスニック料理や、完成までに時間がかかるお菓子づくりなどに挑戦してみるといいかもしれませんね。

勉強で成果を出したい人こそ「趣味の時間」をつくるべき理由04

体力づくりと両立させると、より効果的

「体を動かすこと」を趣味の一環にするのもよいでしょう。

前出の鎌田氏は、週末に「体力づくり」の予定を入れることも大切にしているそうです。体力づくりといっても、平日の運動不足を補うために歩く程度でよいとのこと。鎌田氏は、歩いて神社・仏閣めぐりをすることで、趣味を楽しむことと体力づくりを両立させていると言います。

じつはこれ、脳科学的に見てもメリットがある趣味の楽しみ方。瀧氏によると、ウォーキングなどの有酸素運動で脳の血流が増えると、細胞の成長を促す次のようなホルモンが分泌され、勉強にもプラスに働くのだそうです。

  • 脳由来神経栄養因子(BDNF):海馬の神経新生が促進されて、記憶力が上がる。
  • インスリン様成長因子(IGF-1):長期記憶の生成に関与する。
  • 血管内皮増殖因子(VEGF):IGF-1とともに神経細胞の長期増強に関与する。

さらに、やる気の源泉と言われる神経伝達物質・ドーパミンの分泌が増え、集中力改善などの効果も期待できるとのこと。

理想の運動量として瀧氏は、「週に2~3回」「息が少し上がる程度の中~高強度の有酸素運動を45~60分」行なうとよいと述べています。いきなり理想の運動量をこなすのは難しくても、読書が好きな人であれば、図書館まで歩いて行けば趣味と体力づくりを両立できますね。あるいは、料理に挑戦する人なら、材料を買いにスーパーまで歩いて行くようにすれば、体力づくりも叶うでしょう。

ほかに水泳やゴルフ、テニスなどもおすすめだそうですよ。趣味の時間を通して体を動かし、勉強へ取り組むのに必要な集中力や記憶力を高めましょう。

***
勉強で成果を出すには、脳が高いパフォーマンスを発揮できる健康な状態を維持しなければいけません。それには、楽しく脳を活性化できる趣味の時間をつくるのが効果的。机にかじりつくのをやめて、さっそくスケジュール帳に趣味を楽しむ予定を書き込んでみましょう。

(参考)
瀧靖之 著, 郷和貴 聞き手 (2021), 『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』, 日経BP.
Gruber M.J. et al. (2014), “States of Curiosity Modulate Hippocampus-Dependent Learning via the Dopaminergic Circuit,” Neuron, Volume 84, Issue 2, pp.486-496.
脳科学辞典|海馬
脳科学辞典|前頭前野
鎌田浩毅 (2009), 『一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ』, 東洋経済新報社.
白川敬裕 (2014), 『本物の勉強法』, ダイヤモンド社.
大阪ガスネットワーク|大阪ガスネットワークの食育
築山節 (2006), 『脳が冴える15の習慣: 記憶・集中・思考力を高める』, NHK出版.

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト