仕事、勉強、趣味——やりたいことは多いのに、なぜか行動できないと悩んでいませんか? 根性で行動しようと思っても続かないもの。それなら、行動計画を目に入る場所に置いてみてはいかがでしょう。
今回はアクションプランというフレームワークを活用し、行動力を上げる方法をご紹介。筆者の実践例とともに見ていきましょう。
【ライタープロフィール】
青野透子
大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。
BBC|A novel trick to beat procrastination
TD Stories|Visualizing Goals Influences Financial Health and Happiness, Study Finds
BetterUp|What is an action plan? How to become a real-life action hero
行動力がないのは何が原因?
なぜ私たちは頭でわかっているのに、行動することができないのでしょう? 専門家によると、達成までの行動がリアルに想像できるかどうかに左右されるそうです。ビジネス専門のジャーナリスト、アリーナ・ディジク氏は次のように指摘しています。
most of us aren’t particularly good at picturing how our immediate actions will affect us long-term
(私たちの多くは、目先の行動が長期的にどのような影響をおよぼすのか、想像するのが得意ではありません)
(引用元:BBC|A novel trick to beat procrastination※和訳は筆者が補った)
いまの行動がよくも悪くも未来に関わると想像できないのであれば、取りかかる必要性を切実に感じることもできないはず。つまり、これが先延ばしの原因になるわけです。
しかし、ディジク氏によると――UCLA アンダーソン経営大学院のマーケティング、心理学の教授であるハル・ハーシュフィールド氏らが行なった実験では、デジタル加工された老後の自分と話をした被験者は、仮想の退職貯蓄口座にお金を入れる確率が高かったそうです(参考元:同上)。
この研究報告が示唆するのは “遠い未来のよい結果/悪い結果” がよりリアルに想定できると、目標達成のために行動しやすくなるということではないでしょうか。
したがって、いまの行動があとでどんな結果になるのか漠然としている——つまり、達成までのプロセスが見えなければ、なかなか行動に移す気にはなれませんが、それが明確になれば、より早い決断と行動ができるはずです。
行動力のある人になるには可視化が必要
前項をふまえると、私たちが行動するために必要なのは、目標達成のプロセスを可視化することだと言えるでしょう。
ハーバード大学医学部の精神医学助教授であるスリニ・ピレイ氏も、先延ばしを防ぐために、結果のみならずそれぞれのステップに注意を払うことを推奨しています。つまり目標設定だけでなく、達成するまでのステップを洗い出し、可視化させることが大切なのですね(参考元:同上)。
ちなみに、心理学者のバーバラ・ヌスバウム博士によれば、画像などのイメージは私たちと目標とその達成を、より感情的に結びつけるとのこと(参考元:TD Stories|Visualizing Goals Influences Financial Health and Happiness, Study Finds)。
だとすれば、壁掛けのホワイトボードにToDoを書く、作業デスクの上に置いた卓上カレンダーに計画を記入するなど、目に入るところにタスクや計画の全体が見えるようにすれば、「早く取り組もう」と課題に向き合う気持ちになれるのではないでしょうか。
カレンダーで簡単に「アクションプラン」を立ててみた
前述したポイントを押さえると、プロセスの可視化・計画のビジュアルが目に入ることが行動力を上げる秘訣となるはず。そこで役立つのがアクションプランというフレームワークです。
企業戦略を専門とする研究者、マギー・ウール博士は、アクションプランを目標達成のために必要なリストと説明しています(参考元:BetterUp|What is an action plan? How to become a real-life action hero)。
今回は、このマギー・ウール博士の方法を参考に、アクションプランを実践してみました。具体的な手順を筆者の実践例とともに見ていきましょう。
1. SMART目標
最初のステップは、SMART目標を使った目標設定です。SMART目標とは以下のそれぞれの頭文字をとったもの。
- S:Specific(具体的に)
- M:Measurable(測定可能な)
- A:Achievable(達成可能な)
- R:Relevant(関連性のある)
- T:Time-bound(期限が明確な)
SMART目標を参考に、筆者は、語学の勉強・運動・創作の3つに関して1か月の目標を立ててみました。SMARTの項目をそれぞれ当てはめて設定すると——こうなります。
モチベーションを高めるため、「頑張れば届きそう」と思う難易度にしています。
Relevant(関連性)に関して記入したのは、目標を達成したときのメリットです。
この項目を埋めると、達成したときのイメージが思い浮かんでワクワクします。成功した自分の状況を描ければ、行動に移す大きなモチベーションになりますね。
2. タスクをリストアップ
2番目のステップは、タスクをリストアップすること。これは、目標に到達するまでどのタスクを消化すればいいのか、可視化するためです。
筆者はタスクを付箋に記入して、ボードに並べてみました。期間は1か月以内とみなします。
このようにリストアップすると、「時間/量」の両方のコストが見えてきますね。
3. 優先順位をつける
タスクをリストアップしたら、今度は優先順位をつけます。前項で付箋を使ったので、それを並び替えてみます。
上がほぼ毎日取り組みたい優先度の高いタスク、下が低いものです。
4. マイルストーンを設定する
計画を実行に移す前に、今度はマイルストーンを設定します。マイルストーンは最終的な目標を達成するまでの各節目――いわゆる各タスクを完了させる短い期限を指します。
筆者は今回、卓上カレンダーと丸シールを使ってマイルストーンの設定をしてみました。もちろん、行動計画を視覚に訴えるためです。
丸シールにタスクを書き込み、タスクを終わらせたい日にシールを貼っていきます。ちょうどカレンダーの枠内に収まりますね。
カレンダーにタスクを貼って全体を見ると、やや盛り込んだ様子。反省しつつ、行動に移して次項で調整をとることにしましょう。
5. 計画を調整する
行動後は必要に応じて計画調整を行ないます。筆者は最初のマイルストーン「本1冊読了」を達成できなかったため、次のマイルストーンを設定しました。
シールなので、剥がして移動させるだけ。次の日に締め切りが集中していますが、達成できなければ後日また調整をとればいいでしょう。
タスクを消化したのなら、シールを剥がす。達成できなければ、次のマイルストーンに移動させる——ただ、これのみを繰り返します。まるでチェスボードの上で駒を進める感覚。簡単に調整がとれますね。
(上記手順参考元:BetterUp|What is an action plan? How to become a real-life action hero)
アクションプランを見える化すれば、簡単に行動できる!
こうして卓上カレンダーを使うと、常に目に入るリマインダーのよう。ただ、リマインダーとは違い、全体の期日が見えるという利点があります。複数のタスクがあっても、全体を見て行動の順番を計算しやすいのです。
さらに、タスクをあらかじめ細分化しているため、消化するのが簡単。シールを剥がすという行為をともなうと、なおさら「行動するのは意外と簡単」だと実感できる気がしました。
ほかの行動計画と大きく違うのは、最後の調整をとるステップです。全体のバランスを見ながらシールを移動させるだけなので、計画の調整が苦手な人でも実践しやすいのではないでしょうか。
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「行動できない」と思い込んでいるなら、視覚的なアプローチを利用して行動できる心理に変えてみましょう。よろしければ今回の記事を参考に、「行動できる」実感を得てみてくださいね。