目標達成したい人があえて「手書きの手帳」を使うべき納得の理由。手で書くからこそ○○できる

机の上に置かれた、革のカバーがついたシステム手帳

ほとんどの人がスマホを手にしているいま、「アイデアメモも予定管理もスマホでやっている」「手帳を持っていない」という人も少なくないはずです。

しかし、手帳評論家の舘神龍彦さんは、「手書きの手帳にはデジタルツールにはないメリットがある」と語ります。「デジタルツールにはできなくて手帳にはできること」とはなんでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

【プロフィール】
舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)
株式会社アスキー勤務を経てフリーのライター・編集者。手帳評論家・デジタルコンサルタント。手帳に関して、その歴史的な由来から構造、情報整理ツールとしての側面などを多角的に考察。自らはビジネスマン向け手帳をつくらず、ユーザーひとりひとりにとってどのような手帳がベストなのかを考察・提案する。また、文具メーカーのプロモーションや製品開発にもアドバイスしている。自らも手帳評論家としてメディア出演も多い。著書に『凄いiPhone手帳術』(エイ出版社)、『手帳と日本人』(NHK出版)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

手帳とは「自分の各種リソースを一元管理する紙媒体」

みなさんは手帳をどのようなものだととらえているでしょうか。私は、「自分の各種リソースを一元管理する紙の記録媒体」だと認識しています。

手帳というと、一般的には予定管理のツールだと考える人がほとんどではないでしょうか。でも、むかしであれば住所録も兼ねていました。さらに、必要と感じるのなら、次に行なうべきタスク、健康管理のための情報、公私の中長期的なプランといったものも自分が思うままに書き込んで管理できます。

では、これらをスマホアプリなどデジタルツールでできないかというと、厳密には不可能ではありません。iPhoneでもAndroidでもスケジューラーはもちろん、メモアプリや健康管理のアプリといったものは数限りなくあります。

しかし、それらを手帳のように一元的に管理できるかといったら難しいでしょう。デジタルツールの場合はそれぞれが個別のアプリであり、使いたい機能によって当てはまるアプリをいちいち起動させなければなりません。

一方、手帳の場合であれば自分次第でいくらでもカスタマイズできます。たとえばスケジュールにメモ欄を設けておけば、いつなにをメモしたかというのが一目瞭然となります。複数の機能をひとつの「面」で管理できるところが、紙の手帳の大きなメリットなのです。

やることのリストや、それぞれのタスクの開始時間と終了時間のメモもできます。こうやって所要時間も計測できるのです。また、その際の注意点や結果などもメモしておけます。それは、今後同種の作業をするときの情報として役立つでしょう。

自分の各種リソースを一元管理する手帳について語る舘神龍彦さん

ただの予定管理に終わらず、ほかの機能を加えることができる

冒頭でもお伝えしましたが、手帳は単なる予定管理のツールだと多くの人が認識しています。もちろん、予定管理も手帳がもつ大きな役割のひとつです。「それだったら、デジタルのスケジューラーで十分ではないか」と思う人もいるかもしれません。

デジタルのスケジューラーには、デジタルならではの便利な機能があるのもたしかです。たとえば、定例会議といった定期的な予定の繰り返し設定はデジタルなら簡単にできます。あるいは、他者とスケジュールを共有することもできますし、そういった機能を会社のチームで使っているという人もいるはずです。

ですから、私からは手書きの手帳とデジタルのスケジューラーの併用をおすすめします。チームで共通して使っているスケジューラーがあるなら、ほかのメンバーに迷惑にならないように利用しなければなりません。

一方、個人の予定管理は手帳で行なうのです。手帳であればほかのメンバーを気にせず自分が思うままにカスタマイズできるからです。

スケジュールに加えて、毎日の起床時刻と就寝時刻を書き込むとします。自分ではいつも22時半頃に寝ていると思っていたにもかかわらず、じつは0時を回って就寝することのほうが多かったといった事実がわかれば、「これでは睡眠時間が足りない」「疲労がたまって当たり前だ」というような気づきを得られます。予定に加えて体調も管理できるわけです。

これはあくまでも一例です。基本的に予定管理に特化した、開発者の設計通りにしか使えないデジタルのスケジューラーと異なり、自分次第でどうとでも使える、自由度の高さが手書きの手帳のメリットなのです。

手帳はただの予定管理に終わらないと語る舘神龍彦さん

若い社会人なら「目標管理ツール」として活用する

若手の社会人であれば、ビジネスパーソンとして成長していくための目標管理のツールとしても手帳を活用できます。もちろん、それらの類のアプリがないわけではありません。長期的な大目標を立て、そこからより短期の目標に落とし込んで着実に個人の成長をサポートしてくれるアプリも存在しています。

しかし、それらはやはりぱっと開いて見るような機動性に乏しい。目標を立てたはいいけれど、普段の忙しさから目標管理アプリを起動することがなくなれば、目標達成の可能性は大きく下がってしまうでしょう。

手帳に目標を書き込んでいた場合は異なります。その気になればあらゆる情報を一元管理することが可能です。予定を確認したり書き込んだりする、思いついたアイデアをメモするといった別のことをしようとしたときにも、手帳をパラパラとめくっていると自然と目標を目にできます。

パラパラめくればいろいろな情報が目に入る。いわば、手帳にはリマインド機能が備わっているわけです。そうして、「そうだった、今月はこの目標を立てているのだった」「進捗がちょっと遅れているぞ」と、ことあるごとに目標を思い出して現状を把握できますから、目標達成の可能性が上がっていきます。

しかも、そこにある文字が間違いなく自分が書いたものだというのも、手帳のメリットです。大目標を大きく目立つように手書きしておけば、それを目にするたびにやはり目標を再認識できます。アプリでも文字の大きさを変えられるものもありますが、デジタルのフォントに置き換えられるとよくない意味で客観的なものになってしまい、たとえ目標を目にしても自分の心に響かず、目標に対するコミットメントが低下してしまうことも考えられます。逆に言えば、手で書くからこそ目標にコミットできるのです。

「普段のメモも予定管理も、いまはデジタルが当たり前」と思い込まず、手帳がもつ自由度の高さやその魅力に多くの人に気づいてほしいと思います。

目標達成したい人があえて「手書きの手帳」を使うべき納得の理由についてお話しくださった舘神龍彦さん

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  • 作者:舘神龍彦
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