「チーム内でのコミュニケーションがうまくいかず、周囲の人に助けてもらってようやく解決した」
「クレームに一人で対処できずに、トラブルに発展した」
このように、問題解決に苦手意識をもつ人もいるでしょう。問題解決が苦手だと、改善する方法もわからず負のループに陥ってしまいかねません。
では、問題に悩み続ける人と問題解決が得意な人は、何が違うのでしょうか? 問題解決が得意な人がやっていることを、実践例とあわせてご紹介しましょう。
【ライタープロフィール】
藤真唯
大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。
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ログミーBiz|変化の時代には「思考の武器」が必要 先が見えない焦りから抜け出す最初の一歩
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メモが思考のループを止める
あなたは問題解決に臨むとき、メモをとっていますか? 問題解決が得意な人は考えを論理的に組み立て前に進めていける一方で、いつまでも問題に悩む人は頭の中でグルグルと同じことを考える傾向にあるようです。「考えること」と「悩むこと」は、思考を前に進めているか、同じ場所でぐるぐるしているかの違いである、ともいえそうです。
そこで考えを前に進めるために有効なのがメモ。メモは考えを言語化する効果があります。メモをとりながら悩みを言語化すれば、問題を解決するための考えは前に進めやすくなります。
『考える人のメモの技術』などの著書をもつ下地寛也氏は、「考えることが苦手な人はあまりメモを書きません」と述べています。「何か2、3行、考えるべきテーマと諸条件を書いただけで手が止まり、『ウ~ン、ウ~ン』と悩みだし」てしまうそうです。「そもそも考えるとは、モヤモヤと頭に浮かんだ困りごとやイメージを言語化しながら深めていく行為」だと下地氏は言います。
(カギカッコ内引用元:コクヨ|【メモの取り方でわかる】【W杯森保監督愛用~キャンパス~のコクヨが語る】仕事ができる人はインプットをどうアウトプットにつなげている?)
つまり、問題解決が苦手な人は、考えを言語化できないためにいつまでも悩んでしまうのです。問題解決が得意な人は、考え事を言葉にしてメモすることで思考を深めているのですね。
また、ただ書くだけでなく、メモをとる順番も重要。なぜなら、問題解決には進め方があるからです。ビジネスリーダーを育成するビジネス・ブレークスルー大学で専任講師を務める高松康平氏は、問題解決についてのセミナーの中で次のように述べています。
問題解決には進め方があります。(中略)まず現状を理解しましょうと。まずは何が起きているかちゃんと調べなきゃいけないわけですね。健康診断みたいなことだと思っているんですが、いったん体全体を調べてみて、どこが悪いかを診断すると。
そして、そのあと本質的な課題発見というプロセスで、「どんな原因が考えられるか?」とまずは情報を収集する。幅広い可能性を検討し、その後、まとめにいきます。
(枠内引用元:ログミーBiz|変化の時代には「思考の武器」が必要 先が見えない焦りから抜け出す最初の一歩)
つまり問題解決には、現状を理解してから課題を見つけ出し、それからまとめるといった進め方があるのですね。この進め方を守らずにいきなり解決策を考えても、「何から対処すればいいの?」とさらに悩んでしまったり、根本的な解決につながらなかったりする可能性があります。ということは、メモをとるときにこの進め方を守って書けば、現状をふまえたうえで効果的な解決策を考えられるはずです。
問題解決に有効なメモを試してみた
では、具体的にどうやってメモをとればいいのでしょうか? じつは筆者にも「フリーランスとして新規の案件を獲得しづらくなってきた」という、解決策を見出せないまま悩み続けている問題があります。そこで、前出の下地氏がすすめる方法を実践し、メモをとりながら問題解決をしてみることにしました。
用意するのは、A4サイズの紙。ノートでもコピー用紙でもいいので、横向きに使用します。まず、左上に考えるべきテーマを書き、それからノートを縦に3分割しましょう。
下地氏によると、テーマの明記はとても重要だそうで「そうしないと考えている途中で思考が脱線しがち」なんだとか。(カギカッコ内引用元:コクヨ|【メモの取り方でわかる】【W杯森保監督愛用~キャンパス~のコクヨが語る】仕事ができる人はインプットをどうアウトプットにつなげている?)
筆者の場合は 〈新規案件の獲得に向けて〉 とテーマを書きました。さらに、3分割したノートの左の欄から順に現状、課題、打ち手と見出しをつけます。
続いて、それぞれの欄に、次のような内容を書き込んでいきます。
1.現状(現状の問題点は何か?)
2.課題(問題が発生してる原因、本質的な課題は何か?)
3.打ち手(課題を解決するための打ち手はどのようなものか?)
(枠内引用元:note|【メモの取り方でわかる】「単に悩んでるだけの人」と「深く考えている人」の違いとは?)
欄を埋める際のポイントは、現状、課題、打ち手の順番に書くことです。前出の高松氏が言うように、問題解決の進め方を守るためですね。左から順に書き進めていき、完成した紙面が以下の通りです。
メモが問題を解決に導いた
ここからは、実践を通して感じた効果についてご紹介します。
メモすることで考えがまとまった
メモをとりながら問題解決に臨んで実感した効果は、考えをまとめやすいということです。現状、課題、打ち手とノートを分割して、どこに何が書いてあるかを明らかにしたうえで、自分の考えを可視化したために頭の中を整理しやすくなりました。
筆者が今回考えたのは、「新規の案件を獲得しづらくなってきた」という問題について。まず現状の欄では、新しい案件を獲得できないことで生じているデメリットや、なぜ案件を増やしたいかといったことを考えました。
ここで書き出した業績の停滞や仕事のマンネリ化などの問題点をさらに掘り下げ、これらがなぜ起きているのかを課題の欄に書くことに。その結果、案件のチェックや新たな分野の勉強など、そもそも案件獲得に向けたアクションが足りていないことに気づきました。
そのほかにも原因は考えられましたが、一気にすべてを解決することは難しいと考え、重点的に対処したいことに赤ペンで丸を付けました。そして、丸を付けた内容を解決するための方法を打ち手の欄へ。
ここでは、すぐに行動に移せるレベルまで具体的に、解決方法を書き出しました。たとえば案件のチェックをするために「SNS・インターネットでの案件検索を週1回行なう」といった具合です。メモに書き出した打ち手を実行したところ、実際に案件の獲得にもつながりました。
これまで問題があっても「どうしよう……」と不安になるだけで、解決のための行動に出られなかった筆者。メモをとることで自分の考えを可視化し、順序だてて思考を深め、具体的な対処法を導くことができました。その結果、今までのように問題に悩み続けずに済んだのです。
短時間で解決策の立案ができた
また、メモをとりながらだと思考が止まることなく考えを深められた実感もありました。これはメモをする前に現状、課題、打ち手と、考えるべきことが決めてあったためだと思います。
今までは「どうして案件を取れないのだろう」「でも、案件を増やしてもさばけるだろうか」など、さまざまなことを考えて頭の中がゴチャゴチャするばかりで、解決策にたどり着けませんでした。しかし、テーマとメモをとる場所が決まっていることで、思考が脱線しなかったのです。
時間としても、紙面が完成するまでに15分ほどだったので、メモによって短時間で問題解決ができたと言えそうです。それぞれのテーマから逸脱しなければ、思いつくままにメモしていって大丈夫。きれいに書くことよりも、考えをメモすることに重点を置くと短時間で問題解決ができるでしょう。
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メモを取り入れるだけで、問題解決がスムーズにできるようになるかもしれません。仕事や勉強などで問題が生じたときは、ぜひ試してみてくださいね。