「余裕をもってタスクを終わらせたいけど、いつも締め切りギリギリ……」
「同じミスを繰り返す自分を変えたい……」
自分は仕事ができない、と感じるのはストレスがたまるもの。とはいえ、なかなか改善の糸口をつかめずに、また同じミスをしてしまう……というループにはまってしまうことってありますよね。
そんなときは、メタ認知を意識して、仕事の振り返りをしてみませんか。おすすめのフレームワーク「YWT法」と合わせてご紹介します。
【ライタープロフィール】
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。
仕事の改善には「メタ認知」が効く
「仕事ができない」という現状を変えるには、メタ認知を意識することが効果的です。
そもそも認知とは、頭を働かせる活動全般を指します。一方、メタ認知とは、自分の認知を俯瞰してとらえ、「このやり方でいいのか」などと考え直しながら、認知を見直す活動を指します。(参考:公益社団法人日本心理学会|メタ認知の心理学よりまとめた)
見る・聞く・考える……など、日常で行なう全ての頭脳活動が認知で、それを「ちゃんと見ることができていたか?」「あの話の根拠はなんだろう?」「もっといい方法はないだろうか?」などと俯瞰してとらえ直すのがメタ認知ということ。つまり、メタ認知とは「自分の考えや行動を客観的に観察する」ということなのですね。
大阪大学などで名誉教授を務める三宮真智子氏は、メタ認知にはふたつのメリットがあると言います。
ひとつめは、学習の質が高くなること。たとえば、仕事でミスをしたとき、「なぜミスをしたのだろう」と俯瞰して考えることで、原因を見つけることができます。そして、その原因に対して具体的な対策ができ、ミスを繰り返さなくなるというわけです。
ふたつめは、気持ちのコントロールに役立つこと。仕事で失敗したり、同僚の態度がいつもより冷たいと感じたりしたとき、「自分は何もうまくできない」「迷惑をかけて、嫌われたのかもしれない」と思い込んでしまうことがあるかもしれません。このような思考に陥ったとき、メタ認知的に俯瞰して見てみましょう。
「前回のミスは改善できていたのだから、一歩前進だ」「もしかしたら、体調が悪かったのかもしれない」など、とらえ方を変えることで、メンタルが揺らぎにくくなります。(参考:同上よりまとめた)
メタ認知を意識して仕事を見つめ直すことで、効率的な業務改善と、気持ちのコントロールができるというわけです。
YWT法でメタ認知を通じた仕事の改善が実現できる
それではメタ認知を働かせて、仕事を改善する方法を見ていきましょう。
仕事の改善についてメタ認知を働かせるとは、日々の仕事を改めて俯瞰すること、つまり仕事の振り返りを行なうということです。
振り返りのフレームワークとしておすすめなのが、「YWT法」。YWT法とは、日本能率協会コンサルティング(JMAC)が開発した振り返り方法のことです。YWTはそれぞれ次の意味を指します。
- Y:やったこと(実際に行なったこと)
- W:わかったこと(やったことを通して気づいたこと)
- T:次にやること(気づきを通して、次にやりたいこと)
(参考:日本能率協会コンサルティング|YWT(やったこと・わかったこと・次にやること)よりまとめた)
効果的に振り返りを行なうには、紙に書き出すのがおすすめです。
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、「頭のなかだけで考えているうちに思考が広がりすぎて、そもそもの考える『目的』を見失いがち」だが、「紙に書き出して考えればそのようにはなりにくい。」と述べています。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|「紙に書き出して」思考することの最大メリット。 “頭のなか” だけではゴールにたどり着けない)
紙に書き出すことで、目的をしっかり把握しながら俯瞰することができるのですね。下記のようにブロッキングして書き出してみてください。
KPTとYWTの違いは?
似ているフレームワークとして「KPT」を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。
KPTとは、
- Keep(続けること)
- Problem(問題)
- Try(次に行なうこと)
の3つの質問で振り返りを行なうフレームワーク。業務改善などでよく活用されており、組織やプロジェクトに意識を向けているのが特徴です。
それに対し、YWT法は個人に着目しているフレームワーク。日本能率協会コンサルティングの星野誠氏は、YWT法について以下のように述べています。
YWTの最大の特徴は、業務を軸としたものではなく、人を軸とした振り返り手法であるということ。YWTは自律的な人の成長を目指す目的で使うのが本質である。
(引用元:日本能率協会コンサルティング|YWT(やったこと・わかったこと・次にやること))
KPTも優れたフレームワークであることは間違いありません。しかし、個人で仕事の改善に取り組むのなら、YWT法のほうがひとりひとりの長所や成長に目を向けやすいと言えるのですね。
YWT法で仕事の改善に取り組んでみた
実際にYWT法を使って、仕事の改善に取り組んでみました。
「仕事ができるようになりたい」とひとくちに言っても、どんな変化が欲しいのかを明確にしたほうが取り組みやすいですよね。筆者は、具体的に以下の点を改善したいと考えています。
この悩みの改善を目指して、三日間、仕事の振り返りをYWT法で行ないました。
一日目の振り返りがこちら。
「記事の質を高くしたい」と悩みを具体化したことで、漠然と「仕事ができなくて嫌だな」と思っていたときより、「これを取り入れよう」という情報をキャッチしやすくなったように感じました。
三日目までの振り返りは以下の通りです。
YWT法で振り返ると、仕事の改善が急速に進む!
メタ認知のメリットは、効率的な業務改善と、気持ちのコントロールができるということでしたね。実践してみた結果、たしかにその効果を実感することができました。
まずはひとつめのメリットである、効率的な業務改善ができる点について。YWTを記録するようになったことで、仕事中に「改善するには何を変えればいいだろう?」と常にアンテナを張れるようになりました。
そうすると、いろんな角度から改善案を見つけられるようになり、具体的な行動に移せるようになったのです。そのサイクルを繰り返すと、驚くほど急速に仕事の改善が進みました。
次に、ふたつめのメリットである、気持ちのコントロールについてです。YWTの記録で現状を分析することで、「いま自分は何かしらの行動をとっている」と自覚できるようになりました。
その結果、「自分は改善に向けて、できることをやれている」という自己コントロール感を得られ、安心感につながりました。気持ちが安定していると、仕事に前向きに取り組めるようになり、以前よりミスを減らすことができたと思います。
ほかにも、
- 改善のために仕事中に試すことが具体的に決まっているので、迷わず行動できる
- 誰に見せるものでもなく、自分だけの振り返りなので、正直に書ける
- YWTのフォーマットは簡単で続けやすい
- 毎日記録することで、試行錯誤の過程がよく見え、成長を感じられる
など、多くのメリットを実感できました。
振り返りを行なうタイミングは、仕事の直後をおすすめします。夜は疲れていたり、他の予定があって記録を忘れやすかったりするため、できるだけ記憶が鮮明なうちに書き留めておいたほうがいいと感じたからです。
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「仕事ができない」と、焦りや無力感にさいなまれるのはつらいですよね。しかし、YWT法で今の自分にできることは何かじっくり俯瞰すると、きっと違う景色が見えてきます。本記事を参考に、前向きな気持ちで仕事の改善に取り組んでもらえたらと思います。
公益社団法人日本心理学会|メタ認知の心理学
STUDY HACKER|「紙に書き出して」思考することの最大メリット。 “頭のなか” だけではゴールにたどり着けない
日本能率協会コンサルティング|YWT(やったこと・わかったこと・次にやること)