最近どうも頭が働かない。なかなか覚えられないし、すぐ忘れる。いいアイデアも出てこない。どうにかならないものだろうか――
それならば、書き心地が無重力級に軽いノートに、文章を手で書いて考えるようにしてみてはいかがでしょう。意外とスムーズに頭が働き出すはずですよ。実践を交えて紹介しましょう。
【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。
慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)|井庭崇のConcept Walk|Creative Reading:『知的生産の技術』(梅棹忠夫)
STUDY HACKER|医師「手書きが脳にいいのは当然」――脳を刺激する “最高のアナログ習慣” してますか?
産業能率大学 総合研究所|東北大学 川島隆太教授 インタビュー「読む&書く」からこそ学びは深くなる
コクヨステーショナリー|ペルパネプ(PERPANEP)
手で書いて考える効能
たとえば、目の前の情報がまったく頭に入ってこない、直前に見ていた情報をすぐ忘れてしまう、問題解決の糸口が見つからず、新しいアイデアも創造できない――そういったとき、筆者の場合はとりあえず紙に書き出してみると状況がよくなります。
言うなれば “書いて考える” でしょうか。たったいまインプットした情報、それで思い浮かぶこと、気がついた関連性や関連事項などを、考えながら手で紙に書いていくと、脳が働き出す感じがするのです。具体的には、
- 頭が整理される
- つながりが見えてくる
- 思いつく
- 思い出す
といった具合です。こうした効果は、情報の可視化および手を使って紙に書く行為が、脳にいい影響を及ぼすために生じると思われます。
脳神経内科・認知症の専門医である長谷川嘉哉氏によれば、何かを書こうとすると、海馬や前頭葉など脳を広い範囲で使うことになるとのこと(参考元:STUDY HACKER|医師「手書きが脳にいいのは当然」――脳を刺激する “最高のアナログ習慣” してますか?)。
また、東北大学加齢医学研究所教授の川島隆太氏は、
「より面倒で厄介な方法」のほうが、脳はよく働く
とし、手書き学習をそのひとつに挙げています。(参考および引用元:産業能率大学 総合研究所|東北大学 川島隆太教授 インタビュー「読む&書く」からこそ学びは深くなる)
無重力級の書き心地のメリット
では、前項で挙げた効能を期待し、手で書いて考える場合、どういったツールを使用するのがいいでしょう?
筆者は普段、ペン先が紙に引っかかるような、つまり摩擦を感じる書き心地を好みます。「書いている!」という実感があるのが好きだからです。しかし、摩擦があると筆記速度が少し遅くなってしまうのは事実。考えながら早くササッと書き出したいときには向いていないかもしれない……。
そう考えた筆者は、これまでとはまったく逆に、「超高平滑のオリジナル原紙」を使用した、無重力級に軽いタッチで書けるノートを選びました。その名もツルツルです(参考およびカギカッコ内元:コクヨステーショナリー|ペルパネプ(PERPANEP))。
実際に書いてみると、確かに名前のとおりツルツル。ほぼ引っかかりがありません。
ちなみにこのシリーズは、紙とペンのコンビネーションを考えデザインされたものだといいます(参考元:前出の「ペルパネプ」ページ)。
しかし、筆者にとっては同ノートに最適だと紹介されているペンよりも、手元にあったごく普通のボールペンの書き心地のほうが滑らかでした。したがって、今回筆者がツルツルノートと組み合わせて使うのは、いつも愛用しているこちらのボールペンです。
徹底的に文章化するといいワケ
そして、書いて考える際には、短い言葉を並べるよりも、徹底的に文章化したほうが頭はよく働くと思われます。ピックアップしたフレーズを文章化しようとすると、必然的に自分の言葉になるからです。
文章化の発想は、民族学者の梅棹忠夫氏の言葉からヒントを得ました。梅棹氏は著書『知的生産の技術』(岩波書店)のなかで、日々の発見は徹底的に文章化することが大事だと伝えています(井庭崇氏のConcept Walkより)。
同氏によれば、発見は感動をともなうので、その感動が冷めないうちに文章化することが必要なのだとか。また、そうした活動を続けることで、観察が正確になり、思考が精密になるそうです(参考元:慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス(SFC)|井庭崇のConcept Walk|Creative Reading:『知的生産の技術』(梅棹忠夫))。
つまり、文章にするとその内容について深く考えられるようになり、解像度も高まるということではないでしょうか。それに、感動を帯びた文章は記憶に残りやすいでしょう。
こうしたことを受け、筆者はいまひとつ頭が働かないときや、目の前の情報をまとめたり知識にしたりしたいとき、ササッと書ける滑らかな書き心地のノートに、文章化を徹底しながら、書いて考えるようになりました。
(ノートのなかの参考および引用元:前出の「産業能率大学 総合研究所」インタビュー記事 ※筆者の知識や解釈も含まれる)
そうすると、自分の言葉で考えるようになり、手で書く脳への刺激もあいまって、頭がどんどん働き出すのを感じました。
また、目の前の情報について、しっかり自分の頭で考えるようになると、グッと理解が進みます。そして、理解が進むとまた記憶に残りやすくなるわけです。みなさまも、この好循環をぜひ手に入れてくださいね。
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なんだか頭が働かないとき、目の前にある情報は、まるで空気のように自分を通過してしまいます。それらをせき止め、頭を働かせてその情報を活かしたり自分の知識にしたりするために、滑らかな書き心地のツールに文章化しながら、書いて考えてみることをおすすめします。