勉強することは大切だとわかっていても、取りかかるのが面倒だったり、疲れていたり、長い時間を確保するのが難しかったり……。そんなビジネスパーソンのみなさんの勉強に弾みをつけるコツをお伝えしましょう。キーワードは「4分」です。
勉強はとにかく「スタート」が肝心
もしあなたが、時間を無駄にすることなく勉強で成果を出したいなら、初動が肝心です。というのも、脳には、実際に作業に取りかかることであとからやる気が高まってくるという仕組みがあるから。
医学博士で心療内科医の吉田たかよし氏によると、初めのうちは「面倒くさいな、やりたくないな」と思っていても、5分間ほど作業をしていると、脳内のやる気の中枢である側坐核が興奮状態になるそう。側坐核が刺激されると、意欲をもたらす神経伝達物質のドーパミンが分泌され、やる気が湧いてきます。この現象を「作業興奮」と呼びます。
スポーツ心理学者で追手門学院大学スポーツ研究センター特別顧問の児玉光雄氏も、気乗りがしないことに取り組む際に作業興奮を利用することをすすめています。児玉氏いわく、作業興奮の状態をつくり出すためには、単純かつ簡単な作業から始めるとよいとのこと。創造的な作業や思考を要する作業は、たびたび手が止まるので、作業興奮を引き起こすのには向かないそう。
したがって、「勉強するのが面倒くさいな……」と感じるときには、どれだけ気が乗らなくても、とにかく着手しましょう。その際は、暗記をするために用語をノートに書き出すといった単純作業から始めるのがベスト。いきなり難解な勉強に挑んでも、やる気は出てこず、時間を無駄にしかねません。勉強に弾みをつけたいなら、作業興奮の仕組みを利用しない手はないでしょう。
最初の4分、頑張るだけでいい
初動が肝心であるということは、別の観点からも説明することができます。人材育成やスキルアップセミナーの講師を務めるオフィスフローラン代表取締役・新井淳子氏は、なかなかやる気が出てこないときは「無理にでも “4分間だけ” 集中する」ことが有効だと述べています。
これは「初動4分の法則」に基づいた考え方。アメリカの心理学者レナード・ズーニンが提唱した「最初の4分間がうまくいけば、あともうまくいく」という法則です。うまくいくかどうかは最初の4分間で決まるのだから、とにかく最初の4分間だけは頑張るべきだということ。先に紹介した作業興奮も最初の5分ほどが肝心だとのことでしたから、これに通ずるところがありますね。
とはいえ、「何をやろうかな」などと考えながらぼーっとしたり、スマートフォンを手に取ったりしてしまえば、4分なんてあっという間に過ぎてしまうことでしょう。勉強に弾みをつけるための大切な4分間です。「たった4分間すら向き合えない」なんてことは絶対に避けたいもの。そこで、4分間ではどんな勉強をすべきか提案していきます。
4分で行なう勉強は「限りなく小さなもの」でいい
習慣化コンサルタントの古川武士氏は、初動4分の法則は自身の「ベビーステップ」という概念を裏づけるものだと述べています。ベビーステップとは、行動を起こすとき最初に踏み出すべき、赤ちゃんのような小さな一歩のこと。どんなに疲れていても、どんなに面倒でも、小さな一歩を踏み出すことが、行動を起こし習慣化するためのコツだと言います。
古川氏いわくベビーステップのポイントは、「面倒、怖い、不安」といったマイナス感情が出てこなくなるレベルにまで、徹底的に行動のハードルを下げること。そしてそれを継続するには、初動のハードルを下げてでも行動をゼロにしないことが大事だと述べます。
このベビーステップは、勉強にも当てはめることができるのではないでしょうか。最初の4分間で行なう勉強を、限りなく小さなものにすればいいのです。これは作業興奮を引き起こす作業の条件と同じ。4分間でできることには、以下のようなものが考えられます。
- 参考書の1ページだけ読む
- 問題集の第1問だけ解く
- 単語を3個だけ覚える
- 用語とその意味をノートに2個だけ書きとる
- 1ページだけ音読する
このようなベビーステップで取りかかれば、4~5分経つ頃にはやる気が出てきて、もう1ページ、さらにもう1ページ……と進めることができるはずです。
4分あれば本だって読める!
ここまで「勉強は最初の4~5分が大事」ということをお伝えしてきましたが、「スキマ時間の4分間」も同様に大切です。
東京大学在学中に司法試験合格、同大を首席で卒業したほか、ニューヨーク州弁護士資格も取得した山口真由氏(信州大学特任准教授)は、スキマ時間の4分間を徹底活用しているひとりです。山口氏は常に本を持ち歩いていて、誰かが約束に遅れたときやランチの行列など4分待ち時間があれば、どんな場所でもためらいなく本を開くと言います。図書館で本を借りたらエレベーターのなかで読み始め、1階に着く頃には重点的に読むべき箇所を判断しているほどだと言いますから、驚きですよね。
山口氏は、なぜそれほどまでに短い時間を大切にしているのでしょうか? それは、スキマ時間の積み重ねが馬鹿にならないことを経験的に知っているからだそう。
1日のなかで、4分のスキマ時間が5回あれば20分。30日積み重なれば10時間もの時間を確保できます。この時間を勉強にあてるか否かで、知識レベルに大きな差がつくことは言うまでもないでしょう。
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勉強に弾みをつけたい人にとって、「最初の4分間」そして「スキマ時間の4分間」が大事であることがわかっていただけたのではないでしょうか。「勉強なんて面倒くさい」と思うことが多い人は、ぜひ4分間を意識して小さなことから取り組んでみてくださいね。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|「めんどくさい」は脳のクセだった!タイプ別“先送りグセ”を直す方法
医療法人社団 平成医会|ドーパミンを増やすことで得られるメリット
東洋経済オンライン|「やる気はあっても動けない」自分を操るコツ
NIKKEI STYLE|時間管理達人への道(下)まず4分集中やる気生む
人生を変える習慣化ブログ|ズーニンの初動の4分間法則
東洋経済オンライン|「勉強や運動」が続かない人が陥りがちな勘違い
STUDY HACKER|東大首席・山口真由さんが「4分」あればどこでも本を読む深い理由。
STUDY HACKER|【保存版】「勉強」の基本と応用をまとめてみた。
【ライタープロフィール】
西ひとみ
大学では教員養成課程に在籍。大学院では英語教育を専門に学んだ。小学校教員免許、中学・高校教員免許(英語)を取得済。高校教師、小中学生向け塾講師としての指導経験がある。よりよいコミュニケーション法や最新脳科学への関心が高く、日々情報収集に努めている。