「勉強したいことが多すぎて、何から始めればよいのかわからない」
「あれもこれも勉強したくて少しずつ手をつけるけれど、どれも中途半端になってしまう」
勉強したいという意欲があるのに、優先順位を決められなかったりどれも勉強しきれなかったりして、結局諦めてしまう――そんな状況になるのはもったいないもの。
そこで今回は、やりたい勉強を確実に実行するための法則を3つご紹介します。きっと、より多くの学びを得られるようになりますよ。
1. 勉強したいことを「モノ化」して表をつくる
マーケティングのことも勉強したいし、リーダーシップについても学びたい。最新のテクノロジーについてもインプットしたい。どれも大事な気がして、どこから手をつければよいのかわからない!
このように優先順位をつけられなくて困っているなら、ベストセラー『独学大全』著者の読書猿氏がすすめる「モノ化」という方法を試してみてください。
「モノ化」とは、やりたいことがたくさんあるときに、それらが実際に「『どれだけできるか』を明確にするために、やりたいことのそれぞれについて、いつ、なにを・どれだけやったかを記録する」こと。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|「ジム通いも勉強も……」やりたいことが多すぎる悩みへの超納得の回答)
これをするべき理由について、読書猿氏は以下のように述べています。
一般に夢は具体性に乏しく「大きさ」を持っていないので、いくらでも積み込める感じがします。優先順位をつけることを含めて広い意味でのプランニングに持ち込むためには、現実という地面に引きずり下す必要があります。
(引用元:同上)
「あれもこれも勉強したい」とただ思っても、実生活にどれだけの負荷がかかるかわからないもの。そのままでは、優先順位をつけることができません。そこで “実際にやってみて、記録する” ことを通して、したい勉強がどれぐらい実現できそうなのかを、実感をともないながら考えていくのですね。勉強したいという “思い” だけでは曖昧なので、それをより “とらえやすいかたち” にするイメージでしょうか。
しばらく記録を続けてみれば、普段の生活サイクルのなかでできたものと、できなかったものを割り出すことができるはず。前者についてはそのまま継続すればよいですし、後者については、勉強時間の確保の仕方を考えるといった対策を立てることができるでしょう。こうすることにより、自分の生活の支障にならない勉強計画が立てやすくなるわけです。
具体的には、「やりたいこと(テーマ・ジャンル)を縦軸に、日付を横軸にとった簡単な表をつくり、実行したことをジャンル別に毎日埋めていくとよい」とのこと(カギカッコ内引用元:同上)。
筆者もちょうど勉強したい項目を複数抱えていたので、この方法をやってみることにしました。縦軸には勉強したい内容を4つ、横軸には1週間の日にちを並べたフォーマットを用意。それぞれの内容について勉強できた時間を、下記のように記録してみました。
4つのうち「民俗学」「近世文学」の勉強時間がともに100分を超えたため、まずはこれらを優先して勉強するのが現実的だと判断。そこで翌週からは、この2つに絞って勉強する予定を立てることにしました。
逆に時間があまりとれなかった「研究方法論」「科学史」については、あらためて計画を立てることにして、今回は優先順位の下位に置くこととなりました。
たった1週間記録してみただけでも、「来週は本当にやりたいことだけに集中できる!」という感覚が得られましたよ。優先順位がつけられなくてお困りの方に、ぜひおすすめしたいです。
2. 勉強したいことを「親子の関係」で管理する
マーケティングに関しては、この本を読んで、あの教材も読もう。最新テクノロジーに関しては○○氏の動画をいろいろ見ておかなくちゃ……。
このように、勉強したい項目や取り組みたい教材が数多くあるとき。やりやすそうなものからちょっとずつ手をつけてみたものの、そうでないものは「いつかできるだろうから」と後回しにした結果、どれもこれも中途半端に終わった――そんな経験はありませんか?
サイバーエージェントなどの大手IT企業で働き、多忙を極めていたというスワン氏(現在は事業デザイナーとして独立。『あなたの24時間はどこへ消えるのか』の著者)が、自身の経験をふまえて編み出したタスク管理法のひとつに、「タスクを親子で管理する」というものがあります。
曖昧で大きなタスクを「親」、より具体的で小さなタスクを「子」とし、それらを「入れ子」の構造でとらえるのです。「子」のタスクは「親」のタスクにひもづいており、複数ある「子」のタスクが全部終わると「親」のタスクが終わったことになります。
スワン氏によると、「親」のタスクを意識しないことには、以下の問題点があるそう。
親を意識せずに一列にタスクをこなそうと思うと、とっかかりやすい各タスクの頭だけバラバラと触れます。取り組むこと自体はいいのですが、結果的に各々の小さなタスクは終わっているものの「今日も忙しかったはずなのに、1つも案件が終わっていない・・・」と絶望した夕方を迎えます。
(引用元:note|Notion×Googleカレンダーで叶える、人生を進めるタスク管理術)
これは勉強にも通じることではないでしょうか。先ほど述べたような、「やりやすそうなものからちょっとずつ勉強したら、どれもこれも中途半端になった」という事態が、まさにそれです。
そこで、勉強でも「親」を意識したタスク管理をしてみましょう。たとえば、フランス語を勉強したいと考えたとき。「フランス語の勉強」と言っても、文法や発音など、多くの要素が含まれています。そこで「フランス語の勉強」を親、それにひもづく要素群を子とした、以下のようなリストをつくってみるのです。
親)フランス語の勉強
子)
- 文字と発音、読み方
- 挨拶の表現
- 動物の名前
スワン氏によると、タスクを親子の関係に分類したら、「1週間」のなかで「親タスクを潰す」ことを目指すといいそうです。緊急の用件が生じても1週間あれば調整がしやすいとのこと。そして、「親」のタスクを終わらせることに意識を向けながら、「子」のタスクに取り組んでいくのです。
上の例であれば、フランス語の「文字と発音、読み方」だけやっても「フランス語の勉強」という親を潰せたことにならないので、あわせて「挨拶の表現」も「動物の名前」も勉強するわけですね。
せっかく「あれも勉強しよう。これも勉強したい」という目標を掲げても、達成できないとなると、自分の無力さを責めてしまうことにつながりかねません。やりたい勉強に確実に取り組むため、「親子の関係」でリストをつくり、1週間以内に「親」のタスクを達成することを、ぜひ続けてみてください。
(本項内、スワン氏の解説は「新R25|タスクを公私で分けてない? 仕事も人生も両立できる、タスク管理の「4ステップ」」「note|Notion×Googleカレンダーで叶える、人生を進めるタスク管理術」を参考にした)
3.「分割」して勉強する
仕事に関係することだけでなく、趣味のこともいろいろ勉強したい。でも毎日忙しいので、とにかく時間がとれない……。こんな自分には、あれもこれも勉強するのは無理なのだろうか?
そう心配する必要はありません。社会人がいろいろなことを勉強するのに、まとまった時間がとれなくても問題はないのです。
社会人が勉強する目的は「学習内容を仕事や実社会で活かす」ことにある――こう述べるのは、作業療法士で、脳について詳しい菅原洋平氏。
たとえば、社会人が職場で行なわれるテストのために勉強する場合、テストが終わればその知識は忘れていい、というわけではありませんよね。そのような「テスト後にもその知識が必要になる長期的な勉強の場合は、分割して勉強したほうがよい」と、菅原氏は言います。「分割」とは、まとまった時間をとらず「時間があるときにできるところまで勉強しておく」イメージです。
そしてその理由は、脳の仕組みから次のように説明できるそうです。
勉強によってインプットされた情報は脳内に蓄えられていた別の情報につなげられたり、別の関係ない作業によってインプットされた情報とつなげられたりして使える情報に加工されています。
つまり、入力すればすぐに勉強したことになるわけではなく、脳内での加工作業が挟まることで、「丸暗記」から「使える知識」になるのです。
(枠内・カギカッコ内引用元:新R25|「1つの勉強をじっくり」VS「違う勉強を同時進行」…脳をうまく使った効率的な勉強法は?)
加えて、「仕事とは無関係のことだとしても、しっかり勉強していけば、長い目で見ると仕事力が向上する」と菅原氏は断言しています。
たとえば、仕事のために業界研究をしたり、マーケティングの勉強をしたりしつつ、趣味として美術や俳句といった分野についても学ぶ人を想定してみましょう。趣味のことは少しずつしか勉強できないとしても、その学びが、仕事に活かせるかもしれないクリエイティブで新規性のあるアイデアへとつながる可能性があるわけです。
時間がとれないからといって、勉強を諦める必要はありません。「分割」しながら勉強を進め、「使える知識」を得ていきましょう。
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やりたい勉強が多すぎてうまくいかないという悩みに効く、3つの法則をご紹介しました。大きな準備は必要ありません。やりたいことを諦めないための勉強メソッドをぜひ身につけてみてください。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|「ジム通いも勉強も……」やりたいことが多すぎる悩みへの超納得の回答
新R25|タスクを公私で分けてない? 仕事も人生も両立できる、タスク管理の「4ステップ」
note|Notion×Googleカレンダーで叶える、人生を進めるタスク管理術
スワン (2021), 『あなたの24時間はどこへ消えるのか』, SBクリエイティブ.
菅原洋平 (2020), 『脳をスイッチ! 時間を思い通りにコントロールする技術』, CCCメディアハウス.
新R25|「1つの勉強をじっくり」VS「違う勉強を同時進行」…脳をうまく使った効率的な勉強法は?
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。