「読書好きと言われるくらい本を読むけど、内容を何かに活かせている気がしない……」
「休日に頑張って勉強しているのに、何日かたつとさっぱり何も覚えていない……」
せっかく時間を割いて読書や勉強をするのなら、学んだ知識をしっかりと活用し成長につなげたいもの。でも実際には、「頑張って勉強しているけど……本当に成長できてる?」と思うこともありますよね。そんなときにぜひ確認したいことをふたつ、筆者の実践例も交えてご紹介します。
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。
山田竜也 (2022), 『神速で稼ぐ独学術』, 技術評論社.
プレジデントオンライン|どれだけ読んでも身にならない…本の内容が右から左に抜けてしまう人に共通する「残念な読み方」
コトバンク|テクスト論
国立大学法人信州大学|Q1. 社会学とはどのような学問ですか
東洋経済オンライン|週末に勉強しても身につかない人に伝えたいコツ
1.「当事者として」読書できているか
本をいくら読んでも、その内容を実践の場面でうまく活かせない……。それはあなたが、当事者視点でなく評論家視点からでしか本を読めていないせいかもしれません。
ウェブマーケターで『神速で稼ぐ独学術』著者の山田竜也氏は、「当事者意識」の有無が、読書を通じた学びに影響すると述べています。
当事者意識がない「評論家的」な読み方と、当事者意識がある読み方との違いを、山田氏は次のように説明します。
- 当事者意識がない読み方:
「この本に書いてあることは○○だなぁ」「この本の著者は○○だなぁ」
→「自分ごととは切り離された視点で漫然と読書」するので、本をどれだけ読んでも身につかない - 当事者意識がある読み方:
「この本に書かれていることで、自分で使えることは何だろう」
→本で読んだ内容が実践に結びつく
もちろん望ましいのは、後者の読み方ですよね。実際山田氏は、「1冊読むごとに、何か1つは自分の行動を変えるネタを探して実行する」というようにして当事者意識をもち、プラスの効果を得ているそうです。
本を読む際にも意識が変わってきますし、本を読んだあとで実施した行動で効果が高かったものや定着したものがあると、もちろん人生に具体的にプラスになりますし、本の内容も忘れず、人に説明しやすくもなります。
(参考、カギカッコ内・枠内引用元:プレジデントオンライン|どれだけ読んでも身にならない…本の内容が右から左に抜けてしまう人に共通する「残念な読み方」)
評論家的な読み方をした場合と当事者的な読み方をした場合とで、具体的にどんな違いが生まれるのか、意図的に読み方を変えて確かめてみました。
読んだのは、社会学の入門書。そして筆者は、大学院で普段文学を勉強しています。
まずは、評論家的な読み方からです。社会学の本に自分事として向き合わずに読んだ筆者が感じたのは、
「社会学ってそういう学問なんだ」
のただひとことでした。社会学の研究手法を知っただけで、自身の文学での研究に活かせる要素は見つけることはできませんでした。
次に、当事者的な読み方を実践。「何かしら自分の文学の研究に活かせることはないかな?」と考えながら読んでみたのです。すると、文学に関して以下のような問いが自然と思い浮かびました。
- 夏目漱石の『三四郎』に出てくる、電車から弁当箱を外に投げ捨てる行為は、明治・大正期に実際に行なわれていたのだろうか? もしそうだったら、どうして現在それを行なう人はいないのか。作品が書かれた1908年と現在の衛生状況についてのデータを調べてみよう。
- 出版された当時の時代背景や流行とはどのようなものだったのだろうか? 調べれば、この登場人物が実際にどんな電車に乗って、どんな服を着て生活していたのかがわかりそう。当時の都市計画の図やデパートの資料を探してみよう。
文学の研究方法に、「テクスト論」というものがあります。これは、作品に書かれたことだけを検討対象とする方法です。筆者もよく活用していますが、作品の枠組み内だけで批評するとどうしても議論が広がらず、行き詰まることがあるのが悩みでした。
一方、社会学の領域では、文献それ自体を批判的に考えることが求められます。いつ、どこで、誰が書いたかなど、いわば文章になる前の条件を、データや調査をもとに検討していくということです。
筆者が普段やっているテクスト論に、本を通して学んだ、場所や環境など生活に密着した社会学的な視点を取り入れてみると、一気に視界がひらけるように感じました。ただ漫然と本を読む場合に比べて、得るものは格段に大きかったと思います。
もし本を読んでも成長につながっていないと感じることがあったら、当事者的な視点で本を読めているかどうか確認してみてください。
(テクスト論、社会学についての参考:コトバンク|テクスト論、国立大学法人信州大学|Q1. 社会学とはどのような学問ですか)
2.「磁石の力」を使って勉強できているか
新しい知識をたくさん吸収したいので、いろいろなことを勉強しているけど、思うように身につかない……。そうなってしまうのは、脳の性質に逆らったやり方をしているせいかも。
脳内科医の加藤俊徳氏によれば、脳は「この情報は顔見知りだ」と判断できるような情報を好むそう。勉強したことを記憶に残すには「脳と情報の“親密度“」が重要。脳は「顔見知り」判定した情報を「磁石のように」集めるようになるといい、加藤氏はこの機能を「磁石の力」と呼びます。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|週末に勉強しても身につかない人に伝えたいコツ)
この「磁石の力」を働かせるには「学びたいことが常に頭の片隅にあるのが理想的」だそうで、加藤氏は次のような勉強法をすすめています。
もっともおすすめしたいのは、1日10分でいいから毎日コツコツ型の勉強法に変えていくこと。
(中略)
毎日、情報を送り続けるわけですから、脳はこの情報は重要だと判断しますし、そうなれば、学んだことが記憶に残りやすくなります。
(引用元:同上)
“休日に長時間勉強して平日は勉強しない” というスタイルよりも、“短時間でいいから毎日勉強する勉強する” ほうがいいのですね。勉強するごとに情報と脳が顔見知りになっていくので、脳はその情報を自然と覚えてくれるわけです。
筆者は通学中に電車内で読書をしていますが、勉強関連の本、小説、雑誌など、ジャンルや内容はかなりばらばら。いろいろな本をとっかえひっかえ少しずつ読むので、同じ本を次読むまでにかなり間隔が空いてしまいます。
そのせいか「こんな話だったかな?」「このブックマーカーはどうして挟んだのだろう?」と思うことが多々ありました。情報が脳内でつながっていないため、すぐに忘れてしまっていたのです。
そこで、脳が情報とできるだけ早く顔見知りになれるよう、読む本を毎日変えるのではなく、月曜日〜水曜日で1冊、木曜日〜土曜日で1冊というように、読む本を絞ることに決めました。
具体的には、読む量は1日10ページほどを目安とし、読み終わったらもう一度同じページを読みます。そして翌日には、2〜3問のクイズを自分に出し、記憶が定着できているかのチェックを行ないました。情報に繰り返し触れるチャンスをできるだけ増やしたのです。
すると、読んでからだいぶ時間が経っても、本の内容を覚えていました。勉強では、ただ時間を多く割いたり、さまざまな本に手を出したりするのではなく、効率よく覚えられる方法を知ることが重要だと実感しましたよ。
頑張って勉強してるのに、知識が身につかないな……という人は、ぜひ「磁石の力」を働かせ、記憶の長期的な定着を目指してみてください。
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勉強を頑張っているのに成長を実感できない人が確認するとよいことをふたつご紹介しました。時間を無駄にすることなく勉強内容を身につけられるよう、あなたもご自身に当てはめながら確認してみてくださいね。