「勉強中、なぜかいちいち気が散ってしまう。集中力がなさすぎるのが悩み……」
「いくら勉強しても覚えられない。こんなに成果を感じられないのは自分だけ?」
「勉強って、長時間やらなくちゃいけないのが苦痛……」
あなたが「勉強が苦手で仕方ない」と感じる理由は、本来手放すべきものを手放せていないからかもしれません。
今回は、勉強が苦手な人ほど手放すべき3つのものをご紹介。理由もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.「スマートフォン」は手放す
「集中力がどうやっても続かない」というあなたは、“あるもの” に興味や好奇心を奪われている可能性大。そのあるものとは、スマートフォンです。
“ちょっと見るだけ” のつもりが長時間触ってしまった……というように、スマートフォンに勉強を妨げられた経験がある人は多いはず。じつは、人がついスマートフォンに手を伸ばしてしまう原因のひとつは「ドーパミン」。ベストセラー『スマホ脳』著者で精神科医のアンデシュ・ハンセン氏が、そう述べています。
ハンセン氏いわく、ドーパミンとは興味や好奇心をつかさどる脳内物質。「生存に有利な行動」だと脳が判断した行為に対して分泌されるそうです。特に、「これをすれば確実に報酬が得られる」とわかっているときよりも、「報酬が得られるかどうか不確実」なときのほうが、分泌されやすいのだとか。
人間がかつて狩りをして暮らしていた頃、不確実ながらも「食料が見つかるかも!」と期待して探しに出かけることは、まさに生存に必要な行動でした。その名残でいまでも、新たな情報を求める好奇心がドーパミンを分泌させるのだと言います。
スマートフォンは、「SNSで『いいね』がもらえるかも」「緊急のニュースが入ってくるかも」のように、高い不確実性がともなうものです。そんな不確実性に脳は反抗できないため、スマートフォンがあるだけで集中力が削がれてしまうとのこと。
ハンセン氏は、何かに集中したければ「スマートフォンを手元に置かない」ことぐらいしかできることはない、と述べています。
脳科学者の中野信子氏も、スマートフォンのせいで気が散るのは当然だと伝えています。集中力を高めるには、集中力が散漫にならないような環境を整えるのが最大のコツだとのこと。
スマートフォンをまったく使用しないのは難しくても、机の上には置かないということならできるはず。たとえば、勉強中だけでも別の部屋などに置いておくのが得策かもしれません。
2.「間接照明」は手放す
「勉強していることはたしかなのに、覚えがいまひとつ……」と悩んでいるなら、部屋の照明を見直してみてください。じつは、間接照明しか使わない、あるいは、日光が当たらない薄暗い部屋は、集中して勉強するには不向きな環境。そのままの部屋で勉強を続けることは、非効率だと言わざるを得ません。
その理由は、“明るさ” が、脳内での情報伝達のスピードを上げるのに必要な要素だからです。科学誌『Hippocampus』に掲載されたミシガン州立大学の研究によれば、薄暗い照明下で長時間過ごすと、脳機能が低下し、記憶力や学習能力が損なわれるとのこと。
研究では、人間と同じ昼行性のラットを明るい照明と薄暗い照明のもとで生活させ、それぞれ脳機能を調べました。すると、薄暗い照明下で生活したラットは、記憶や学習をつかさどる海馬の領域がおよそ3割も縮小し、実際のパフォーマンスも落ちたそう。一方、明るい照明下にいたラットは、よりよいパフォーマンスを挙げたとのこと。
研究論文の筆頭著者Joel Soler氏いわく、薄暗い光を長時間浴びると、情報伝達を担うニューロン同士の結合を促進する物質が、著しく減少するとのこと。つまり脳内での情報処理がうまくいかないため、記憶や学習に悪影響が出てしまうのです。
認定人間工学専門家の八木佳子氏は、青白く明るい照明のもとなら、集中力が高まりやすいと伝えています。したがって、勉強時は間接照明を使用せず、昼光色の蛍光灯などで明るさを保ちましょう。
朝や日中に勉強する場合なら、部屋に日光が差すような、できるだけ明るい窓際で勉強するのもいいでしょう。きっと勉強がはかどるはずですよ。
3.「復習が不要な問題」は手放す
「長時間やるのが苦痛……」という理由で勉強が苦手なあなた。もしかして、「もう解けるようになった問題」にまで時間を割いているのではありませんか? 面倒くささを感じることなく勉強を続けるために、復習を終えていつでも解けるようになった問題は手放しましょう。
これは、高校時代の偏差値29から東京大学に合格した心理カウンセラーの杉山奈津子氏が、著書『「捨てる」記憶術』のなかで、短時間の勉強で成果を出すためにあえて “捨てる” べきもののひとつとして挙げているものです。
復習が不要な問題を捨てるには、杉山氏が提唱する「○△×復習法」が役に立つとのこと。問題の横に「○」「△」「×」のマークをつけて、自分にとっての勉強の必要度合いをしっかり把握し、要復習問題に重点的に取り組むのです。
○……確信して正解できる問題。いつでも解けるので復習は不要 ⇒【捨てる!】
△……だいたい正解できるが、解き方に自信がない問題。復習が必要
×……解き方も答えもわからない問題。最優先で復習が必要
このなかで手放すべきは「○」の問題。確実に解けるとわかっている問題を何度復習しても、時間の無駄だからです。
逆に、重点的に勉強すべきなのは、苦手な分野や自信がない問題など、つまずきそうな問題だけ。それらの問題も解けるようになったら、マークをつけ変えます。そうすれば、総復習時間の短縮につながるというわけです。
「○△×復習法」で手際よく勉強して、「苦痛だ……」「面倒くさい……」という気持ちを払拭しましょう!
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勉強が苦手な人が手放すべき3つのことを紹介しました。今回紹介したものをひとつでも実践してみれば、勉強へのハードルがグッと下がるのではないでしょうか。
(参考)
Business Insider Japan|スマホの魔力が脳をハックする。『スマホ脳』著者が語る、スマホ依存の正体
東洋経済オンライン|「机にスマホ置く人」ほど集中力が続かない理由
Michigan State University|Does dim light make us dumber?
AARP|Dim Lighting Can Harm Memory and Learning
eLearning Industry|7 Factors That Prevent You From Studying Better
スマートジャパン|照明環境を使い分けて仕事の能率を上げる:節電しながら快適かつ想像力を発揮できる照明環境(4)
杉山奈津子 (2016), 『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』, 青春出版社.
プレジデントオンライン|偏差値29から東大へ「頭のよさとは要領のよさ」「地頭のいい人間」なんて存在しない
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。