前田裕二さん流の「知的生産のためのメモ術」。いったいどこがすごいのか検証してみた

前田裕二氏のメモ術を取り入れない場合と、取り入れた場合。ビフォーアフター

SHOWROOM株式会社・代表取締役社長の前田裕二氏は、知的生産のためのメモ術を提唱しています。そこで今回は、前田氏のメモ術を「取り入れた場合」の効果を「取り入れない場合」と比べて検証してみました。

いつものメモ

筆者は普段、なんでも書き込む自由なスタイルでメモをとっています。たとえば先日は、新潟大学脳研究所が2022年1月に発表した内容が気になり、執筆に活かせないかとメモ帳サイズの小さなノートに書き込みました。

筆者が気になってメモした研究内容

(※ノート内参考:新潟大学脳研究所(脳研)|サルより遅いヒトの脳処理 -進化するほど脳の回転は遅くなる!?

――ちなみに同研究によると、脳が最も進化した人間は、ほかの霊長類より認知や反応が遅いそうです。ほかの霊長類についても、脳が進化しているほど反応が遅くなるのだとか。「頭の回転が速い」という言葉に相容れない印象ですが、その実態は「脳が複雑なものに対応できるほど高度に進化すると、処理に時間がかるから」でした。

こうした自由な手書きのメモは、理解がよく進み、記憶にも残りやすいのがメリットです。また、イラストや図などの書き込みは、あとで見直した際に概要を思い出しやすくしてくれます。そのため、これも自分なりに十分役立つと感じています。

では次に、前田氏のメモ術を掘り下げてみましょう。

前田裕二氏のメモ術について

前田氏は子どもの頃、工夫しながらきれいにノートをまとめていたそうです。そのとき先生にほめられ、嬉しさを感じたことが、前田氏のメモ人生をスタートさせたのだとか。ただし、このとき書いていたのは「記録のためのノート」でした。

それからさまざまな経験を経て、試行錯誤を繰り返し、いまでは多くのビジネスパーソンが参考にする「知的生産のためのメモ」に落ち着いたのだそう。

同氏によれば、日々少しでも気になったことをメモし続けていると、頭のなかの曖昧な思いを言語化できるようになり、また、目の前に現れた情報を見逃しにくくなり、傾聴力が増して、複雑な物事を構造化できるようになる(話の骨組みがわかるようになる)そうです。そして、なんと言っても「アイデアが生まれやすくなる」とのこと。

ビジネスパーソンに必要なものばかりですね。

メモを書くビジネスパーソン

「知的生産のためのメモ」の書き方

前田氏が提唱する「知的生産のためのメモ」は、ノート見開きの左ページ上部に、日付タイトル(たとえば「〇〇のミーティング」など)、サマリー(全体の要点)が入ります。メモ自体は次の3ステップで進めるとのこと。

  1. 左ページに「ファクト(客観的な事実)」を書く。たとえばミーティングの内容や、心を動かされたもの、気になることならなんでも。各段落をくくるキャッチフレーズのような標語も左端に書いておく。

  2. 「1で書いたもの」を「抽象化」する――客観的な事実から本質的な要素を抜き出して、右ぺージ縦半分の内側に書く。

  3. 「2でわかったこと」をもとにして、自分の活動に「転用」する――“気づき” をアクションに活かす方法を、右ページ縦半分の外側に書く。

あくまでもファクトは事実の記録であり、抽象化は本質的要素の抽出なので、最後にしっかりと自分の活動に転用することで、未来が変わるとのこと。

なお、このメモを書く際に推奨されているペンの色分けは以下のとおり。要素に沿って色分けして書く作業を繰り返していると、意思決定の判断精度が上がってくるそうです。

  • 【黒】:普段使い(ファクト)
  • 【緑】:ファクトに対する主観的な意見
  • 【青】:やや重要なこと、引用や参照
  • 【赤】:最も重要なこと

ただし、前田氏はこのメモ術について「自分の目的に沿うようカスタマイズしてください」とも伝えています。筆者も難しく考えず、自分に合うかたちにアレンジしながら「知的生産のためのメモ」を書いてみます。

知的生産のためのメモを書く前田裕二氏に似た感じのビジネスパーソン

「知的生産のためのメモ」をやってみた

本来であれば同じ題材で比較したいところですが、今回は前田氏のメモ術を「取り入れた場合」の効果を「取り入れなかった場合」と比較して検証するために、先に紹介した筆者のメモと似た題材――いわゆる執筆などに活かすための、新たな研究データについてメモすることにしました。研究成果だけにほとんどが引用や参照なので、使うペンの色は以下のとおりにアレンジします。

<筆者のアレンジ>

  • 【黒】:普段使い(ファクト)、やや重要なこと、引用や参照
  • 【緑】:ファクトに対する主観的な意見
  • 【赤】:最も重要なこと

なお、こちらで取り上げた研究は、東京大学理学系研究科生物科学専攻の廣木進吾大学院生と飯野雄一教授が発見したタンパク質についてです。学習行動をコントロールするタンパク質がうまく働けないとき、学習活動が滞ることがないよう、よく似たタンパク質がサポートしてくれるそうですよ。

前田氏のメモ術を参考にしながら、筆者なりに書いてみた「知的生産のためのメモ」

(※ノート内参考:東京大学 大学院理学系研究科・理学部|困ったときは兄弟に・大正製薬|疲れの原因は、脳の栄養不足?

下にある比較画像を見ても、前田氏のメモ術を「取り入れなかった場合」と「取り上げた場合」に大きな差は見られません。しかし、じつのところ両者は “似て非なるもの” なのです。

たとえば、普段のメモでも情報に対する主観的意見は、無意識のうちに書いていましたが、緑色のペンを用いて色分けして書くと、「これは主観である」と意識するようになり、より考えて書くようになったのです。

筆者が書いた前田裕二氏のメモ術を「取り入れなかった場合」と「取り上げた場合」のメモ

また、普段のメモだけだと、仕事に活かせそうで活かせないといった状況もありましたが、今回「知的生産のためのメモ」を書いてみて、それは「転用」まで達していなかったせいだとわかりました。

つまり、これまでひとつの客観的事実を “活かせるか・活かせないか” で判断していましたが、「転用」まで行なうことにより、その客観的事実が分解可能であり、何かに使えるパーツの宝庫であるとわかったのです。

たとえば今回の例で言うと、「脳のタンパク質が協力し合って学習活動を支えている」事実が、学習を持続できる根拠、学習を諦める必要がないと主張できる根拠、細胞の働き方が一辺倒ではない事実の一例、タンパク質の摂取が脳にも不可欠である根拠といった、あらゆる役割を担えるということです。

前田氏の、「メモを書くことが自分独自の視点を見つけ出すカギ」という言葉にも通じるのではないでしょうか。

***
ちなみに筆者はこの「知的生産のためのメモ」を、いつもの「なんでもメモ」と併用しようと思います。よろしければ、お試しくださいな。

(参考)
新潟大学脳研究所(脳研)|サルより遅いヒトの脳処理 -進化するほど脳の回転は遅くなる!?
EL BORDE by Nomura|【前田裕二】日常すべてがビジネスアイデアに変わる戦略的メモ術
ITmedia NEWS|ヒトはサルよりも頭の回転が遅い? 霊長類4種の脳で音の処理速度を比較
転職ならtype|「知的生産のためのメモ」って何!?前田裕二『メモの魔力』を要約
コクヨ ステーショナリー|次のアクションを見つける!仕事ノートの書き方
日経xwoman|「メモの魔力」実践編 3ステップで書く&99の質問
東京大学 大学院理学系研究科・理学部|困ったときは兄弟に
Panasonic|レッツノートユーザー岩田麻里が語るメモ術
大正製薬|疲れの原因は、脳の栄養不足?

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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