「資格試験に向けて毎日勉強しているのに、最近実力が上がっていない感じがする……」
「模試の点数が伸び悩んでいる。この状態、どうしたら抜け出せるんだろう……」
このような悩みをもつ人は、勉強の停滞期にやってはいけないことをしているかもしれません。成績が伸び悩むと、やり方が悪いのだろうかと自分を責めたり、勉強を諦めたりしがち。しかし、それはあまりよくないと専門家たちは伝えています。
今回は、成績が伸び悩んだときに「やってはいけないこと」と「やるべきこと」をご紹介します。これらを参考に勉強法を見直せば、実力が上向くこと間違いなしですよ。
勉強の伸び悩み「プラトー」は、知識の定着期!
勉強を続けていると必ずと言っていいほど、成績が伸びにくくなったり、何を勉強しても内容が頭に入らなかったりする時期がありますよね。
最初のうちは伸びを実感できていたのに、途中でなぜか成長が止まったように感じてしまう……こうした勉強の停滞期のことを「プラトー(学習高原)」といいます。
記憶力日本選手権大会の最多優勝者である池田義博氏によれば、物事の上達度合いを線で表したとき、順調に上がっていったのちに「階段の踊り場のように平らになっている部分」がくるそうです。その「平ら」な状態を指して「高原」と呼ぶのです。(カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|天才にもおとずれるプラトーの正体とは?)
そんなプラトーの時期を迎えると、焦ったり落ち込んだりするものですが、本当は「成績が上がる前兆」として喜んでいいようです。その理由を池田氏はこう述べています。
このプラトーの期間中、脳は知識を整理して使える形に作り変える作業を行っています。この知識の熟成期間を経ることで、頭の中の知識は使える知識として整理された形になるのです。
(引用元:同上)
つまり、停滞期があるからこそ、その後の成長があるわけです。
池田氏いわく「怖いのはプラトーに対する無知により、そこであきらめてしまうこと」。では、諦めずにプラトーを乗り越えるにはどうしたらよいのでしょう?
勉強の停滞期に「やってはいけない」ことを、「やったほうがいいこと」とあわせてご紹介します。
1.「成功」したことだけを「成長」ととらえてはいけない
試験で高得点をとるなど「成功」したことだけを「成長」ととらえる癖があると、停滞期へ入ったときに大きな挫折感を味わうかもしれません。
人財教育を手がけるキャリア・ポートレートコンサルティング代表の村山昇氏が、「成功」の反対は「挑戦しなかったこと」だと述べています。「挑戦して失敗することも立派な成長」。なぜなら「経験値」を得られるからです。(カギカッコ内引用元:GLOBIS知見録|「成長とは何か」を自分の言葉で定義せよ)
このことは勉強にも当てはめてよいはず。合格点をとれなかったり、模試の成績が落ちたりしても、それは “完全にダメなこと” ではありません。たとえば「復習が十分にできていなかったから、点数がよくなかった」「○○の単元で間違えたから、合格点に達しなかった」という経験から、私たちは「次は復習をしっかりやろう」「○○の単元を克服しよう」と思えるわけです。これは間違いなく、成長につながるはずですよね。
だからこそ大事になってくるのが、失敗の振り返り。たとえば、間違えた問題だけに焦点を当てることは有効な方法のひとつです。
教育分野に精通するフリーライターの太田あや氏は、間違えた問題だけをまとめたノートを「問題復習ノート」と呼び、その効果を次のように説明しています。
単なるケアレスミスなのか、計算ミスなのか、暗記ができていなかったのか。それとも考え方自体を間違えていたのか、全く理解できていなかったからなのか。
その分析した結果も「問題復習ノート」に書き記しておいてください。
このように、「問題復習ノート」に、間違えた原因を書いていくと、徐々に自分の弱点がクリアになってきます。
(引用元:ベネッセ教育情報サイト|成績アップに役立つ「問題復習ノート」の作り方4「まちがいは消さない」)
なぜこの問題を間違えたのか。見たことがない問題だったから? 時間制限に焦ってしまったから?――このような振り返りをすれば、次はどうすればよいかを考えることにつながり、同じ間違いを繰り返さずにすむようになるのです。
停滞期には「全然うまくいかない。このままじゃ成長できない……」などとただ焦るのではなく、うまくいかなかった経験のなかから改善ポイントを見つけ、停滞期を乗り越えることを目指しましょう。
2.「曖昧な目標」ばかりを掲げてはいけない
「成績をしっかり伸ばす」ことを目標にしていたけど、思ったように伸びない……。停滞期にはこういった行き詰まりを感じる人もいるでしょう。その曖昧すぎる目標のままでは、停滞期から抜け出すのはなかなか困難かもしれません。
医師として働きながらハーバード大学へ留学、また並行してボストン大学でMBAも取得した猪俣武範氏は、目標の立て方についてこう説明しています。
目標はなるべく詳細に、具体的に描くことが大切です。そうすることで進歩を実感することができますし、達成度を測定することができます。
(引用元:猪俣武範(2020),『限られた時間で最大の成果をあげる 図解 最強の勉強法』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.)
具体的でない曖昧な目標では、達成イメージが湧きませんし、いまどのあたりまで達成できているかもわからないもの。一方、詳細な目標を決めておけば、なかなか実力が上がらないように感じる停滞期にあっても「わずかながらも達成を実感することができ、自信が生まれ」るのです(カギカッコ内引用元:同上)。
猪俣氏は、明確な目標を設定するために「SMART」を活用すべきだと提案しています。以下5要素の頭文字をとったものです。
- Specific(具体的に)
- Measurable(評価可能な)
- Achievable(実現可能な)
- Relevant(現実的な)
- Time-bouned(期限内に達成可能な)
たとえば、「教養をつけたいので世界の文化にまつわる知識を増やしたい」と考えているとしましょう。これをこのまま目標とするのは曖昧すぎるので、SMARTの要素を盛り込んでみると、以下のような目標を立てることができます。
「半年後に世界遺産検定の2級に合格するために、1日20分公式テキストで勉強する。勉強できない日があっても20分なら別の日にリカバリー可能だ」
これなら具体的な試験名が入っており、勉強時間も決めているので進捗を評価しやすく、スケジュールも現実的で、達成可能な目標と言えそうです。
目標に向けて頑張ってきたつもりだけど、最近伸び悩んでる……。そんなときは、SMARTを使って目標を立て直してみましょう。停滞期を脱するきっかけがつかめるかもしれません。
***
成績が伸び悩んだ際に「やってはいけないこと」と「やるべきこと」をご紹介しました。
勉強の成果は常に右肩上がりになるわけではなく、必ず伸び悩むときがきます。そのタイミングで「もう自分は成長しない」と決めつけるのではなく「次の成長までに何ができるのか」を考えられた人が、のちに成績を何倍にも伸ばすことができるでしょう。
ぜひ焦らず自己点検して、次の成長に備える準備をしてみてください。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|天才にもおとずれるプラトーの正体とは?
GLOBIS知見録|「成長とは何か」を自分の言葉で定義せよ
ベネッセ教育情報サイト|成績アップに役立つ「問題復習ノート」の作り方4「まちがいは消さない」
ログミーBiz|成果を出す人は「10年の目標」を持っている “SMART”なゴール設定が夢実現のカギ
猪俣武範(2020),『限られた時間で最大の成果をあげる 図解 最強の勉強法』, ディスカヴァー・トゥエンティワン.
世界遺産検定公式HP|受検の目安
【ライタープロフィール】
YG
大学では日韓比較文学を専攻し、自身の研究分野に関する論文収集に没頭している。言語学にも関心があり、文法を中心に日々勉強中。これまでに実践報告型の記事を多数執筆。効果的で再現性の高い勉強法や読書術を伝えるべく、自らノート術や多読の実践を深めている。