「上司からの助言が欲しくてトラブルの詳細を説明したけど、『それで、どうしてほしいの?』と聞き返されてしまった……」
「上司に仕事の経過を報告する際、話が長くなりがち。わかりづらいと指摘されることもしばしば……」
結論から簡潔に言うことがいいと知ってはいても、実際話してみると、上記のような状況に陥ってしまう――そんな方に向け、今回は “上手に結論から言うコツ” をご紹介しましょう。記事の後半では、例外として “結論から言わないほうがいい場面” についてもご説明します。
結論から言うコツ1:「相手にどうしてほしいのか」をまず伝える
仕事で起きたトラブルの詳細を上司に報告したら、「それで?」と聞き返されてしまったことがある……。こうした人は、先に「上司にどうしてほしいのか」を伝えるようにしましょう。
ビジネスコンサルタントの細谷功氏によれば、 「結論がなく、自分視点」 で話すと、相手に「結局何が言いたいの?」と思われてしまうそう。「コミュニケーションの結論は、『相手にどうしてほしいのか?』につきる」と細谷氏は言います。(カギカッコ内引用元:東洋経済オンライン|地頭の良い人は「簡潔な説明」が上手すぎる)
“相手に○○をしてほしい” という結論を伝え、それを相手にわかってもらうには、結論以外の情報の伝え方も大事。コミュニケーション研究家の藤田尚弓氏は、「上司への正しい報連相の伝え方」のポイントのひとつとして、「『伝える情報』と『伝えない情報』を整理する」という点を挙げています。
藤田氏は、
イベントの受付責任者が会社にいる上司に電話をかけ、「人手が足りなくて休憩もとれず、メンバーが疲れきっているので、増員をお願いしたい」と伝える
という場面を例に、「伝える情報」と「伝えない情報」についてこう整理しています。
- 伝える情報
「入場まで20分かかった」「怒って帰る人もいた」などの客観的事実を伝える。上司が正しく状況を理解できるようにするため。 - 伝えない情報
「休憩がとれなかった」「疲れた」などは伝えないほうがよい。「楽をしたいのではないか?」といった先入観をもたせかねないため。
(藤田氏の解説部分参考元・カギカッコ内引用元:All About|上司への報告の仕方のポイント・コツ!上司への「報連相」事例)
つまり、上司にとって必要な情報を事前に選択したうえで、「上司に何をしてほしいのか」を先に伝えるということ。上の例であれば、「増員をお願いします(結論)。なぜなら……(客観的事実)」と伝えるとよいわけです。
たとえば、上司から「明後日までに資料を作成してほしい」と依頼されたのに対し、自身のスケジュールの都合で、締切の延長を求めるとしましょう。もしも、
「申し訳ありませんが、予定が立て込んでおります。締切を延ばしていただけないでしょうか……」
と伝えたとしたら、上司は「資料作成を後回しにしたいだけでは?」「で、いつまでならできるの?」と不満に思うかもしれません。より適切なのは、結論→理由(客観的事実)の流れによるこんな伝え方。
「恐れ入りますが、締切を1日延ばしていただけないでしょうか。というのも、明日は終日アポイントが入っており、資料作成の時間を確保することが困難なためです。」
これなら、上司も納得しやすいでしょう。
「相手にどうしてほしいのか」を真っ先に伝える――まずはこれだけ押さえておけば、「それで?」と聞き返されてしまうことは減るはずですよ。
結論から言うコツ2:ひとつの話題を15秒で話す
仕事の経過を上司に説明する際、「えー、〇〇についてはこうでして……、△△の点は……」などと情報を詰め込んでしまう癖はありませんか? こうした “長い話” も、結論を伝えにくくする原因のひとつです。
明治大学文学部教授でコミュニケーション論が専門の齋藤孝氏によると、「ひとつの話題を15秒でまとめる」よう意識すると、わかりやすく話せるようになるのだそう。その理由を、齋藤氏はこう説明しています。
「ポイントを具体的に話す」ことを意識していくと、少しずつ無駄な言葉が省かれていき、端的かつ具体的に話を伝えられるようになっていきます。
15秒しか話せないとなると(中略)「大事な情報を絞り込むようになる」のです。そうして話の優先順位をつけられる人が、話がわかりやすい人なのです。
(引用元:プレジデントオンライン|肝心な中身がぜんぜん伝わらない…最初に使うと一発で「話が下手」と認定される"ある言葉" ※太字は筆者が施した)
もしかすると、あなたが結論から話すのが苦手なのは、時間を意識せずにあれもこれも話そうとしすぎているからかもしれませんね。
齋藤氏は、15秒で話をまとめるコツとして、「えー」「あのー」「まあ」といった口癖をなくすことをすすめています。そうするだけでも、「話にキレが出て、とてもわかりやすくなる」のだそう。「自分の話し方をスマホで録音して聞いて」みるなどして、口癖を直すとよいそうですよ。(カギカッコ内引用元:同上)
たとえば、上司に仕事の経過を説明する前や、今後の対応を相談する前などに、録音しながら15秒で話す練習をしてみてはいかがでしょうか。
15秒しかないとなれば、つい情報を詰め込んで長々と話してしまうこともなくなるはず。練習を重ねれば、おのずと結論から話すことが習慣になるでしょう。ぜひ、試してみてくださいね。
結論から言わないほうがいいこともある?
ここまで「どうすれば上手に結論から言えるか」についてご説明してきましたが、じつは結論から言わないほうがいい場面もあるようです。
『一番伝わる説明の順番』著者でコンサルタントの田中耕比古氏によると、「相手の知らないことを話すときや、過去に話したことはあるけれどその内容を覚えていなさそうな場合」には、結論を言うより先に「前提をそろえる」ことが重要だそうです。(カギカッコ内引用元:type|「結局、何が言いたいの?」と言われがちな人必見!『一番伝わる説明の順番』を覚えよう)
結論から伝えるか、前提情報から伝えるか、相手によって使い分ける必要があるのです。
たとえば、自分が担当しているA社のことでトラブルが生じ、A社を訪問することになったという状況で、上司に同行を求めたいとしましょう。A社のことについて上司が詳しく知っているのなら、「A社の件でトラブルがあり、申し訳ございませんがご同行をお願いしたく……」と結論を伝えてから、トラブルの詳細を簡潔に話せばよいでしょう。
ですが、上司が新しく異動してきたばかりだったり、A社についてそこまで詳しくなかったりする場合、上記のような伝え方をしたら「A社とは?」「いきなり同行?」などとかえって上司を混乱させてしまうおそれがありますよね。
この場合は、田中氏がすすめているように、前提から伝えましょう。A社との関係性、トラブルに至った経緯、トラブルの内容を簡潔に伝えてから、同行を求めたい旨を伝えるとスムーズかもしれませんね。
「結論を言うより先に、前提をそろえるべき場面がある」ということも、ぜひ覚えておいてください。
***
上手に結論から言えるようになるために、
- 「相手にどうしてほしいのか」をまず伝える
- ひとつの話題を「15秒」で話す
これらのことを意識してみてくださいね。この伝え方が身につけば、「いつも説明がわかりやすいよ」と評価してもらえるようにもなるはずです。
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。
(参考)
東洋経済オンライン|地頭の良い人は「簡潔な説明」が上手すぎる
All About|上司への報告の仕方のポイント・コツ!上司への「報連相」事例
プレジデントオンライン|肝心な中身がぜんぜん伝わらない…最初に使うと一発で「話が下手」と認定される"ある言葉"
type|「結局、何が言いたいの?」と言われがちな人必見!『一番伝わる説明の順番』を覚えよう