「1日中勉強を頑張っていたのに、総まとめテストの点数が悪かった」
「何度もテキストを読み返しているのに、問題集を開いたらわからない問題だらけ」
効率が悪い勉強法を続けた結果、こうした状況に陥ってしまっている人はいませんか?
脳は24時間ずっと同じコンディションを保てるわけではなく、「1日のなかでも特にさえている時間帯」があります。脳がさえている時間帯に勉強すれば、新しい単元をスムーズに覚えられ、応用問題もスラスラと解けるようになるので、効率的に成績を上げられますよ。では、「脳の覚醒リズム」を意識して勉強するための具体的な方法をご紹介しましょう。
脳の覚醒が訪れるのはいつ?
世界記憶力グランドマスターの称号をもつ池田義博氏によると、脳が特にさえている時間帯は、朝と夕方だそうです。これは生存本能によるもので、生きていくうえで最も重要な狩りに出る時間帯が朝と夕方であった名残だと池田氏は説きます。 効率的に勉強をするなら、このふたつの時間帯が狙い目です。
さらに脳神経外科医の築山節氏は、脳がさえている時間を「脳の覚醒ピーク」と呼び、そのピークが持続する時間について「個人差はあるものの、1~2時間が目安」だと述べます。しかし、1~2時間しか効率的な勉強ができないというわけではありません。覚醒ピーク前・覚醒ピーク時・覚醒ピーク後を意識して、それぞれに適した勉強をすることで、復習や応用実践を含めた広範囲の勉強をより効果的に行なえるのだそう。
たとえば、午前7時に起床する人の場合、起き抜けの7時〜7時半頃が覚醒ピーク前、7時半頃〜9時半頃が覚醒ピーク、9時半頃〜10時頃は覚醒ピーク後と考えることができるでしょう。そのあとは脳のパフォーマンスが徐々に落ちていき、また夕方になると脳は働き出します。
あわせて、「この時間に勉強する」と決めたら、その時間帯を固定するべきだと築山氏は説きます。そうすることで脳が活動リズムに慣れ、学習効率がより高まるのだそうです。
脳の覚醒ピーク前の勉強は、復習に充てる
ではまずは、脳の覚醒ピーク前の勉強法からご説明しましょう。築山氏によると、覚醒ピーク前の勉強では「復習」に専念するべきだそう。というのも、すでにわかっている内容を勉強し直して正解し成功体験を積むことで、ピークに向けてやる気を高める “作業興奮” を起こすためです。また、この時間帯の勉強は脳の準備運動も兼ねているとのこと。準備運動で勉強に飽きたり、疲れたりしないよう、時間は短めに15~30分程度を目安に設定しましょう。
復習の基本は、前日のおさらい。加えて東京大学教授で脳研究者の池谷裕二氏は、反復学習もすすめています。池谷氏いわく、脳科学的には一度覚えた内容を再び学習すると忘れにくくなるので、1ヶ月以内に少しずつ間隔を空けながら4回復習するのが特に効率的なのだそうです。
また、復習の際は覚えたい単語を音読したり、問題を解いたりといった「アウトプット」を重視するとよいとのこと。学習した内容を長期記憶として定着させるには、脳の海馬に「これは重要な情報だ」と認識させる必要があります。そのため、「話す」「書く」といったアウトプットが効果的だと池谷氏は述べています。
たとえば7時に起床して朝のうちに勉強するなら、7時〜7時半の30分間を復習の時間にして、前半の15分で前日の復習、後半の15分で先週に学習した単元を復習するとよいでしょう。 そのあとは、次で紹介する「覚醒ピーク時に適した勉強」へ取りかかってみてください。
脳が覚醒のピークを迎えたら、新しい学習に挑戦
前出の築山氏は、「脳の覚醒がピークを迎えたときには、脳に最も負担がかかる勉強をするとよい」と言います。具体的には、新しい単元を学習したり、一歩進んだ応用問題を解いたり、テストを想定して模擬試験を解いたりするのが向いているとのこと。
東大医学部在学中に司法試験に一発合格したことで知られる河野玄斗氏によると、新しい単元を学ぶときは、まず全体像を把握し、どこが重要なのかを意識するとよいのだそう。たとえば資格試験の勉強をする場合なら、該当の単元が出題された過去問をざっくりと解いて全体像をつかみ、そのうえで試験で出題されやすい特定の項目について参考書を使ってじっくり覚えるというような具合です。
とはいえ、新しい単元や応用問題にいきなり挑戦しても、わからない内容にぶつかることが多々あるかもしれません。しかし長時間考え込まないことも、脳の覚醒ピークを活かして勉強するコツです。なぜなら築山氏いわく、作業の手を止めて同じことを考え続けたり、時間の制約を設けずに勉強したりすると、脳の覚醒水準が落ちてしまうから。
資格コンサルタントの鈴木秀明氏も、新しい内容を学ぶときは、頭からすべて理解しようとせず、わからないところはいったん読み飛ばすのが正解だと言います。最初は理解できなくても、復習でもう一度読み返すと理解できる可能性があるためです。また、『東大式節約勉強法』の著者である布施川天馬氏は、3分間考えてもわからない問題はすぐ解答を見ることを徹底するとよいと述べています。
前の項で挙げた例で考えるなら、前日の復習のあと、7時半〜9時半を新しい単元などの勉強に費やしてみてください。脳の覚醒ピークは長くても2時間ほどで終わってしまうので、時間を有効に使いたいですね。
脳の覚醒ピーク後は、今日のおさらいと休息を
脳の覚醒ピーク後の勉強として理想的なのは、「今日勉強した内容のおさらい」だと、築山氏は言います。脳が集中しているピーク時に見落としていた点を、少し気持ちに余裕をもたせて見直しましょう。たとえば、まだ覚えきれていなかった知識や間違えた問題などをおさらいしてみてください。ピーク時ほど時間の制約を意識する必要はありませんが、脳の疲労を起こさないためにも「〇時までに勉強を終える」というように終了時間はしっかり決めておくとよいとのこと。
また、ピーク時と脳の使い方が異なる勉強を取り入れると、リフレッシュできるそうです。先ほどの例で言うなら、応用問題を解いたときは “書く” 作業がメインだったので、9時半~10時をピーク後の時間帯として、テキストで該当する部分を “音読” してみるのはいかがでしょうか。
また、勉強後にしっかり休息をとることも重要だと築山氏は言います。なぜなら、脳が疲労すると次の覚醒が起こらなくなってしまうからです。休息といっても何もしない……というわけではありません。築山氏いわく、運動や芸術鑑賞をするのがおすすめだそう。どちらも脳の思考系以外の部分を主に働かせる活動で、なおかつ癒しを得られると言います。友人と遊んだり、趣味に没頭したりする場合も同様の効果が得られるそうですよ。
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脳が覚醒するタイミングで勉強する習慣をつけると、効率的に学べるようになります。また、覚醒前後やピーク時で勉強内容を変えることも重要です。やみくもに復習したり、応用問題を解いたりするのではなく、脳のリズムに合わせた勉強を始めましょう。
(参考)
池田義博(2017),『世界記憶力グランドマスターが教える 脳にまかせる勉強法』, ダイヤモンド社.
築山節(2009), 『脳から変えるダメな自分 「やる気」と「自信」を取り戻す』, NHK出版.
築山節(2012),『脳が冴える勉強法 覚醒を高め、思考を整える』, NHK出版.
PRESIDENT Online|「復習4回」で脳をダマすことができる
高校生新聞オンライン|カリスマ東大生の勉強法 成績が上がる授業の受け方は?
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【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。