「勉強さえできればいい」が危険なワケ。これからの時代は “レジリエンス” がないと通用しない。

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みなさんは、勉強ができることが最も大切なことだと思っていませんか? 自分は難関大学の出身だからこの先安泰だと思っていたり、むやみやたらと資格を取ろうと必死になったりしていませんか?

グローバル化が進み、仕事の現場で求められるものも多様化の一途を辿る現代。「勉強ができる」「学歴が高い」「資格を持っている」だけでは、ビジネスパーソンとしては通用しません。少しでも心当たりのある方は、ぜひこの記事を読んで明日からの仕事のヒントにしてみてくださいね。

「勉強さえできればいい」とあぐらをかくのが危険な理由

80年代のバブル景気の時代を筆頭に、かつて、新卒を対象にした採用の基準は「この大学から何人」という枠が決まっている相対評価が主流でした。上位の大学ほど枠が多いので、いい大学に入ることはそのままいい企業に入れることを意味していたのです。

しかし、今は違います。多くの企業の新入社員研修を手掛け、昨今の採用活動の動向に精通する、ヒューマンテック代表の濱田秀彦氏はこう語ります。

近年は本当に『学校のブランドなど当てにならない』と考える人事担当者が増えてきています。(中略)仕事がきちんとできて成果を上げてくれるなら、どこの大学でもいいという考えなんです

(引用元:Business Journal|就活生たちの危険な勘違い!脱「学歴」採用、こんなに進行していた!なぜ大企業でも?)※太字は筆者にて施した

このように、仕事で成果を上げられる人間は必ずしも偏差値の高い大学出身の人間ではないという考え方が、現在では主流になってきているのです。実際、採用の際の学歴を不問としている企業が増えてきています。例えば、ファーストリテイリングやドン・キホーテは、採用と学歴の関係を明確に否定しています。

では、これらの企業の採用担当者は、候補者を学歴で評価する代わりに、何を重視しているのでしょう。それは、レジリエンスと呼ばれる力です。

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これからの社会で求められる力「レジリエンス」とは

レジリエンスとは、逆境力折れない力などと呼ばれる力のこと。日本におけるレジリエンス・トレーニングの第一人者である、ポジティブサイコロジースクール代表の久世浩司氏は、「レジリエンスのある人」を以下のように定義しています。

  1. ストレスや重圧に柔軟に対応できる人
  2. 変化に柔軟に対応できる人

久世氏によると、レジリエンスを持つ人は、困難を乗り越え、成功や成長を導く力があるのだそう。例えば、Apple創業者のスティーブ・ジョブズ氏の成功を支えた力も、レジリエンスであったと言います。

ジョブズ氏は、自分が招いた役員により、自ら創業したApple社から解雇されてしまいます。代わりにNextという会社を立ち上げ挑戦を続けますが、不振が続き、個人資産を切り崩しながらなんとか操業を続けることに。この状況は、Apple社が業績不振に悩みジョブズ氏を呼び戻すまで、10年もの間続きました。

Apple社に戻ったジョブズ氏は、苦難をバネに開発に打ち込み、iPhoneとiPadを開発。そして「製品の素晴らしさや感動を消費者に伝える」ことを重視したやり方で、商品を売り込みました。「驚異のプレゼン」と言われた製品紹介や、消費者に感動的な製品体験をさせるための「Apple Store」の設立などは、その一例です。これが、ソーシャルメディアの発達により変化した消費者の購買意欲やニーズに刺さり、世界的な成功につながったのです。

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先ほど紹介した「レジリエンスのある人」の定義は、まさにジョブズ氏の例にぴったりと当てはめることができます。

  1. ストレスや重圧に柔軟に対応できる人
    ジョブズ氏は、創業した会社を解雇されても自分の会社を立ち上げ、うまくいかない状況でも10年間挑戦を続けた。
  2. 変化に柔軟に対応できる人
    ジョブズ氏は、消費者の購買意欲やニーズの変化に合わせ、製品を売り込んだ。

このことから、ビジネスパーソンとしてレジリエンスがある人というのは、失敗をしても立ち直って挑戦を続けられる人」「業界や顧客ニーズの変化に対応できる人だということが分かります。
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レジリエンスが重視される2つの理由

近年では、企業の新人研修でもレジリエンスを高めるためのプログラムが積極的に取り入れられるようになっています。レジリエンスは、組織形成や仕事の成果に関わる重要な能力と考えられているのです。ではなぜ今、ビジネスパーソンには学歴や資格よりもレジリエンスが求められるのでしょうか?

1. 企業の海外進出に欠かせない力だから

前述の久世氏は著書『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!「レジリエンス」の鍛え方』の中で、企業の海外展開に対応するために、ビジネスパーソンには英語力やビジネススキルだけではなく、レジリエンスが欠かせないと述べています。

様々な業界のグローバル化が進むなか、大中小問わず、企業には海外での高い競争力が求められるようになりました。特に、ミャンマーやカンボジアといったアジア新興国市場の経済成長や国民の購買意欲には魅力を感じる企業が世界的にも多く、競争率も高くなっています。こうした国々で販路を獲得できる人材が、ますます求められるようになってきました。

もしあなたが、海外営業としてこれらの国々で取引先の獲得を目指す場合、文化も経済成長の度合いも違う日本国内での成功例からは、あまりヒントを得られないことの方が多いでしょう。また、海外で日本の企業が認知されるには時間もかかります。競争率も高いので、アプローチに失敗して何年も結果が出ないケースも多いうえ、海外に赴任して業務を行なわなければならないのなら、食生活や文化の違いがストレスになる場合も多々あるはずです。

そんな状況でも、その国や地域特有の情報を取り入れながら、新しいプレゼンや販促のプランを考え、話し合い、挑戦をし続けることが求められます。そのために必要なのがレジリエンスなのです。

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2. 現場で考える力の必要性が増しているから

各種SNSの台頭や、商材とその取引方法の多様化によって、各業界の顧客ニーズは速いスピードで変化しています。その変化への対応力が、現場で働く個々人にますます問われるようになりました。

ヨーロッパ最大の経営コンサルティング会社、ローランド・ベルガーの日本法人会長である遠藤功氏によれば、日本企業の強みはかつて、現場で問題に柔軟に対応する「現場力」にあったそうです。しかし、バブル崩壊後のリストラや経費削減により、今は「現場力」がどの企業も劣化しているのだとか。変化し、多様化し続ける業界の中で各企業が生き抜くためには、これを取り戻すことが必要だと述べています。

遠藤氏の言う「現場力」を支えるのが、まさにレジリエンスです。

例えば、あなたが小売店の支店の店舗、またはその中の1つの売り場を任せられたとき、上意下達式の決まりきった価格設定や売込みの施策だけでは実際のニーズに対応できず、売り上げに良い効果がないケースが多々あります。立地や客層からその店ならではのニーズを割り出し、従業員一人一人や顧客の声を直接聞くことで、売り上げに直結するよりベストな方法を考案し、実行することが求められるのです。

実際に、前述のドン・キホーテは、各店舗で働く人たちに商品価格の設定や売込みの施策の権限を全て委譲し、客層や立地に合わせた店舗経営を行なうという戦略をとっているそう。これにより、不振続きの小売業の中でも、第1号店開業の1989年以来29期連続増収という驚異的な業績をあげ続けています。これはまさしく、各店舗で働く人々のレジリエンスの高さの結果だと言うことができます。

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レジリエンスを鍛える方法1:エクスプレッシヴ・ライティング

ここからは、レジリエンスを鍛える方法を具体的に紹介していきます。

まず挙げるのがエクスプレッシヴ・ライティングです。これは、テキサス大学心理学教授のジェームズ・ペネベーカー氏が開発した、1日の中で自分が感じたストレスを紙に書き出すという心理療法。失敗しても立ち上がり、挑戦を続ける力を鍛えるのに大いに役立ちます。

エクスプレッシヴ・ライティングのルールは以下の3つだけです。

  • 自分の感情を、1日に最低20分間、連続して書き出す。
  • まずは4日間続けてみる。
  • 文法や誤字脱字などは気にせず書く。

ビジネスパーソンがエクスプレッシヴ・ライティングを実践する場合の例を紹介しましょう。

例えば、プロジェクトの打ち合わせの際、自分が自信をもって提出したプランが上司や同僚と対立し、受け入れられなかったとします。当然、気持ちが沈み、やる気や自信がなくなりますよね。

そうしたら、嫌だと思ったことや理不尽だと感じたことなどを全て紙に書き出してみましょう。紙に書くと感情が目に見える形になるので、自分自身に俯瞰的かつ冷静に向き合うことができるようになります。

そして、感情を書き出した紙を見直して、感情のレベルから、問題発見のレベルに自分の思考を移行させましょう。「自分のプランの穴はここだったのかもしれない」「あの人が価値観を置いているのはここかもしれない」「自分の実績が足りなくてまだ信頼がないのかもしれない」といった具合に、課題を見出すのです。そこから、問題の解決策や対応策を考えれば、次はどんな挑戦をするべきか見えてくるというわけです。

このように、エクスプレッシヴ・ライティングによって、感情の吐露→事実の客観視→問題発見→挑戦という思考のサイクルを獲得することができます。嫌な感情をストレスのままに終わらせず、新しい挑戦へと昇華させることができるのです。

実際にペネベーカー氏が、学生たちに心理的なトラウマやストレスに感じた出来事について書き出させるという実験を行なったところ、健康上明らかな変化が認められ、メンタルカウンセリングに通う機会も減ったのだそう。気分がすっきりすれば、困難も前向きに乗り越えられそうですね。

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レジリエンスを鍛える方法2:コントロール

レジリエンス研究で著名な心理学者、サルバトール・マッディ氏とデボラ ・コシャバ氏が、12年に及ぶ研究により、レジリエンスの高い人の特徴を3つにまとめました。そのうちの1つが、「コントロール」というマインドを持っていること。これは、変化に柔軟に対応する力を鍛えるのに役立つものです。

ここでいう「コントロール」とは、自分の周囲の物事や変化の結果に対して、諦めずに良い影響を与え続けるよう努めること。分かりやすくすると、自分が周りをコントロールするといった意味合いではなく、自分がコントロールできることに意識を集中するという意味になります。

例えば、自分が広告を担当している店舗の近くに新しく競合の他店ができて、担当店舗の売り上げが落ち込んでいるとします。「競合店ができた」というのは、自分ではコントロールできないことです。しかし「広告内容を見直して、売り上げの改善につなげる」というのは自分でコントロールできることになります。

経営環境や顧客ニーズに変化が起きたとき、変化そのものに目を向けるのだけでなく、変化の結果自分がやれることはなんなのかに集中するようにしてみてください。そうすることで、現場で考え、変化に対応できる力を養うことができるのです。 

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学歴にあぐらをかいたり、やみくもに資格を取ったりする前に、ぜひここで紹介した方法を取り入れて「レジリエンス」を鍛えてみてくださいね。

(参考)
Business Journal|就活生たちの危険な勘違い!脱「学歴」採用、こんなに進行していた!なぜ大企業でも?
キャリアコンパス|レジリエンス(逆境力)を持ったビジネスパーソンに“本当の”エリートが多い理由
久世浩司 (2014),『世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!「レジリエンス」の鍛え方』, 実業之日本社.
Forbes JAPAN|柳井正と孫正義に共通する「原体験」と「失敗力」
PRESIDENT Online|10年後のために、リーダーは「内なる旅」と「外への旅」に出なければならない
東洋経済ONLINE|ドンキが「非常識」を貫いても成長できる理由
東洋経済ONLINE|日本企業の進出が加速している国トップ20
Business Journal|もう国内でも通用しない!? 海外コンサルが指摘する3つの「日本の営業の悪しき常識」
経済界|「顧客最優先主義」の理念こそがCEO。私は代弁者であり実行者――大原孝治(ドンキホーテホールディングス社長兼CEO)
鈴木祐 (2018),『超ストレス解消法 イライラが一瞬で消える100の科学的メソッド』, 鉄人社.
東洋経済ONLINE|「感情を紙に書く」習慣でストレスは減らせる
サルバトール・マッディ著, デボラ・コシャバ著, 山崎康司訳 (2006),『仕事ストレスで伸びる人の心理学』, ダイヤモンド社.

【ライタープロフィール】
月島修平
早稲田大学文化構想学部卒。大学時代は映画や演劇をはじめとした表現の研究を行った。好きなものは路地裏、螺旋階段、筋肉少女帯、BiSH、丸尾末広、鴨居玲、フェリーニ。

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