「1on1」してますか? “ちょっとした意識” でチームを成長させられるコミュニケーションの方法。

皆さんは「1on1」または「1on1ミーティング」をご存知でしょうか。

1on1とは、主に上司と部下で行う定期的なコミュニケーションのことで、ヤフー株式会社や日本最大のレシピサイトを運営するクックパッド株式会社をはじめとした多くの企業が実施しています。また米国・シリコンバレーでも「1on1 meeting」が浸透しており、世界的にも注目される人材育成方法でもあります。

これまで日本企業で行われてきた上司と部下の「面談」は、成果を確認したり、評価を伝えたりするだけでした。しかし1on1では、仕事をとおして経験した「うまくいったこと」「失敗したこと」「仕事の悩み」などを上司と部下が一緒にふり返ることで、仕事に対する考えやモチベーションを共有することができます。そして考えを共有することにより、上司は部下をフォローすることができ、部下の成長スピードが加速するのです。

シリコンバレー出身でインテル元CEOアンディ・グローブ氏によれば、マネージャーの重要な仕事は「部下から最高の業績を引き出すこと」であり、そのために「訓練」と「動機づけ」をするのだそう。この1on1は、フィードバックをとおして部下を「訓練」し、仕事へのモチベーションを高めることで「動機づけ」することができると言えるでしょう。またグローブ氏は1on1について以下のように述べています。

マネジャーと従業員の仕事上の関係は、両当事者がそのことにそれなりの「時間」を投入しなければ向上はできない。だから私はふつう最後にはマネージャーに邪魔の入らない1対1の時間を作ってもらうことを強く求めるようにと勧めている

(引用元:アンドリュー・S・グローブ著,小林薫訳(1990),『ワン・オン・ワン―快適人間関係を作るマネジメント手法』,パーソナルメディア.)

1on1の基本

1on1を実践している企業として有名なのは、2012年4月「爆速」のスローガンを掲げて新経営体制を発表したヤフーでしょう。ヤフーは新体制に伴い、人材育成制度として1on1(週1回30分)を設けました。この制度により組織は活性化し組織力が強くなったと、同社のピープル・デベロップメント本部長である本間浩輔氏は語っています。

半年に1回飲み会をするよりも、3ヵ月に1回一緒にランチに行くほうがいいし、3ヵ月に1回ランチに行くよりも毎月1回1時間話したほうがいいでしょう。また毎月1回、1時間話すよりも毎週15分ずつ話したほうがいい。コミュニケーションは頻度が大事です。仲のいい人とは頻度が高いけれども、ちょっと苦手な人に、たまたま声をかけたときに断られたりしたら、やはり声をかけなくなってしまう。そんなことがありがちです。そこで、全員とコミュニケーションの頻度を上げようと思って始めたのが、1on1ミーティングの原型になったものです。「ちょっとお茶しよう」と一人ひとりに声をかけては、カフェで話を聞くようにしたのです。

(引用元:ダイヤモンド・オンライン|ヤフーの上司は「目標管理」ではなく「成長支援」をする

また本間氏の著書『ヤフーの1on1』によると、「週1回、30分の“部下のための時間”が人を育て、組織の力を強くする。1on1によって経験学習を促進させ、才能と情熱を解き放つことで、社員は大きく成長する」とあります。1on1は、部下の優れた才能を見つけ伸ばしていくために、上司が対話を通じてアドバイスをするコミュニケーションです。

1on1は週1回・30分、月1回・30分など、定期的に実施します。そして部下の話したいと思うことを話してもらうようにすることが大切です。その際、言葉をさえぎったり、意見をかぶせたりしてはいけません。部下が本音を言えるような環境を心掛け、しっかり傾聴しましょう。また相手が話したキーワードを繰り返したり、考えをまとめたり、質問をしたりすることも有効です。部下の気持ちを代弁し、意見を肯定することで、「言いにくいこと」や「言うほどでもないこと」などの本音を聞くことができるでしょう。

1on1を行うときは、コーチング(答えを見つけるサポート)、ティーチング(知識やスキルを教える)、フィードバック(悪いところ、改善策を伝える)の3つをうまく使いわけ、本人に気づきを与えられるようにしてください。その気づきが結果的に部下の成長へとつながります。

意見や意識を共有する

1on1では、上司と部下が成功・失敗経験を共有することで、次のステップへ進むにはどうしたらよいのかを改めて考えることができます。このとき成功や失敗に対して、単純にほめたり叱ったりするのではなく、「私には、あなたがやっていることがこう見えた」と客観的にフィードバックすることが大切です。また1on1をとおして、部下のキャリアビジョンを確認することができますし、それを理解・支援することで、部下の「仕事へのモチベーション」も上がるはずです。

1on1-communication02

信頼関係を構築する

1on1に信頼関係は必須です。信頼関係がないまま進めると、「これからどうしたい?」と聞いても、「あなたには言いたくない!」と思われてしまいます。信頼関係を構築するには、上司側から自己開示するという方法をおすすめします。まずは自分のこと(それも本音に近いことなど)を話してみましょう。そうすることで、相手も心を開いてくれますよ。上司が弱いところを見せられなかったり、競争意識が出てしまったりすると、お互いの関係がうまくいかず1on1の効果は望めません。

1on1の失敗例

せっかく1on1の機会を設けたとしても、目的管理と進捗評価だけが優先されてしまったとしたら、1対1で話しをする意味がありません。また雑談中心になってしまうことも、組織の業績向上につながらないため、1on1の失敗例といえるでしょう。ありがちなのは、「俺の背中をみろ」とばかりに過去の栄光を語ったり、ついつい部下への愚痴をこぼしてしまうこと。あくまでもフラットに、じっくりと話を聞く時間にしてください。

*** 1対1で話すことによって、部下の仕事へのモチベーションを高め、部下の訓練や成長を促進する効果が期待できる1on1は、シンプルですが奥が深いですね。個人を成長させるため、学びを高めるための1on1はとても重要なのです。これは研修や読書では経験することができません。

ビジネスパーソンであれば、自分の能力や成長の方向性が正しいと確信できること、第三者から励ましの声をもらうことでストレスが軽減されますよね。

さああなたも、上司や、周りの尊敬する人と1on1をしてみましょう!

(参考) 本間浩輔著(2017),『ヤフーの1on1―――部下を成長させるコミュニケーションの技法』,ダイヤモンド社. ダイヤモンド・オンライン|ヤフーの上司は「目標管理」ではなく「成長支援」をする アンドリュー・S・グローブ著,小林薫訳(1990),『ワン・オン・ワン―快適人間関係を作るマネジメント手法』,パーソナルメディア. アンドリュー・S・グローブ著,小林薫訳(1996),『インテル経営の秘密―世界最強企業を創ったマネジメント哲学』,早川書房. HR NOTE|1on1とは何か?今注目の人事制度について調べてみた

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