映画や本を鑑賞して、その登場人物の生き方に憧れてしまう。そんな経験を誰しも一度はしたことがあるのではないでしょうか。天才物理学者が難事件を次々解決していくドラマ『ガリレオ』が放送された当時、希望の進路先に物理専攻を選ぶ人が増えたというのはのは有名な話です。

憧れの力というのは、非常に強力なもの。将来に対する具体的イメージを持ち、そうなりたいと強く願う気持ちを持つことは、目標を達成する上で非常に効果的であるからです。

そこで私がおすすめするのが、伝記的小説を読み、その人物の生き方に感銘を受けようという方法。実はこれは、すでにいろいろな人物がやってきた方法です。

例えばナポレオンは、古代ギリシア・ローマの英雄達の群像を描いたプルタルコスの『英雄伝』を読んで、英雄に憧れたそう。その思いを常に抱きながら軍隊に入隊して活躍し、後世に英雄としての名をはせることとなりました。そして、そのナポレオンの人生は、日本では夏目漱石や島崎藤村らに感銘を与えることとなったのです。

このように、歴史上の偉大な人物も、書物に描かれる人物に感銘を受け、モチベーションを上げるという方法を実行してきました。

今回の記事では、3つの分野で活躍した、憧れずにはいられない人物が描かれている本を紹介していきます。伝記を読んで影響を受けなさいと言われても、誰の自伝を読めばよいかわからないという人もいることでしょう。そんな方には、今回紹介する3冊をぜひ読んでみていただきたいと思います。

ビジネスパーソンとしての生きざまを描く『海賊とよばれた男』

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海賊とよばれた男 上

百田尚樹 著

講談社・2012年

『海賊とよばれた男(上・下)』は、百田尚樹氏によるベストセラー小説です。主人公・国岡鐵造のモデルとなったのは、出光の創業者である出光佐三氏。出光氏の人生についての入念なリサーチを元に描かれた、非常にリアリティのある自伝的小説です。

従業員全員を家族とし、経営理念は「黄金の奴隷となるなかれ」。出光興産をモデルとした国岡商会は、戦災で大打撃をこうむり、売るべき商品である石油がないという危機に陥りますが、たくましく再生を遂げます。そして国岡は、自らの会社ではなく日本という国そのもののために、海外の石油メジャーと戦い、日本を復活させるのです。

この作品は小説という形がとられていますが、国岡をはじめとする登場人物はすべて実在していました。出光佐三の人生が、国岡鐵造という人物を通して描かれています。

ビジネスパーソンとして、人間としてどうあるべきか。深く考えさせられる作品だと言えるでしょう。

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科学者でなくとも感銘を受けること間違いない『ご冗談でしょう、ファインマンさん』

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ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉

リチャード P. ファインマン 著、大貫昌子 訳

岩波書店・2000年

『ご冗談でしょう、ファインマンさん(上・下)』は、ノーベル物理学賞を受賞した物理学者、リチャード・P・ファインマン氏の回顧録です。ファインマン氏の半生が、幼少期から研究者として大成するまで描かれています。

ファインマン氏を一言で表すと、「好奇心の人」。幼少期から一貫して、好奇心は彼の原動力となり、やがて彼はノーベル賞を受賞するのです。

書籍では、幼年期の祖父母の家での実験の日々や、学生時代のいたずらの数々がユーモラスに描かれます。ノーベル賞を受賞した理論も、積み重なった皿をもとにした計算が発端だったのだそう。ただ、この本が自慢げな口調で語られることに違和感を抱く人がいるかもしれませんが、その口調にも意味があります。これについて作家・編集者の松岡正剛氏は、以下のように評しています。

本書は科学好きの者ならどうでも読むべき本である。いや絶対に読むとよい。圧倒されるか、科学者になることをあきらめるか、そのいずれかになる。
科学者の「矜持」というものがどういうものかも、よく伝わってくる。この矜持は、朝永さんや湯川さんの本では伝わらない。朝永さんや湯川さんは、科学に誇りをもってはいるが、科学者であることを自慢しようとしていないからである。ファインマン先生はそこがちがっている。自分が科学者であることをもって世界とも社会とも闘うのである。

(引用元:松岡正剛の千夜千冊|ご冗談でしょう、ファインマンさん

考えるとは、学ぶとはどういうことか。そして、楽しい人生とは何なのか。読み手の考えに、必ずや影響を与えうる本だと思います。

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幕末の英雄に学ぶリーダー像『竜馬がゆく』

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竜馬がゆく〈1〉

司馬遼太郎 著

文藝春秋・1998年

坂本龍馬を尊敬していると公言する著名人は多くいます。皆さんの周りにも、龍馬好きが何人かはいるのではないでしょうか。その人たちは、坂本龍馬に関する伝記を愛読書としているものです。

その中でも非常に評価が高いのが、司馬遼太郎著『竜馬がゆく』です。坂本龍馬をモデルとした小説は数多く存在しますが、その中でも最も重厚なものの一つで、なんと文庫本では8冊ものボリューム。量がある分、坂本龍馬の生きざまを濃密に味わうことができます。

坂本龍馬は、当時犬猿の仲であった薩摩藩と長州藩の仲を取り持ち、一大倒幕勢力を作り上げたことで有名です。そんな彼の生き方からは、カリスマ性とは何か、他人を生かすリーダーとはどうあるべきか、といったことを学ぶことができます。

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普段あまり本を読まないという人も、ぜひ書店に出かけてみてください。また、本は読むけれどビジネス書や好きな作家の小説ばかり、という人は、たまには伝記的小説を手に取ってみましょう。思わぬ憧れに出会い、人生を考えるきっかけになるかもしれません。

(参考)
百田尚樹著(2012),『海賊と呼ばれた男(上・下)』,講談社.
リチャード P. ファインマン著,大貫昌子訳(2000),『ご冗談でしょう、ファインマンさん(上・下)』,岩波書店.
司馬遼太郎著(1998),『竜馬がゆく(1~8)』,文藝春秋.
Wikipedia|海賊とよばれた男
松岡正剛の千夜千冊|ご冗談でしょう、ファインマンさん