悪夢を見たり、自分より仕事や勉強ができる人をついつい非難したくなったりしたら要注意です。あなたは現在、フラストレーション(欲求不満)がたまっているかもしれません。思想家や哲学者らが定義した負の概念「ルサンチマン」を持っていると言われる前に、フラストレーション耐性を強化して乗りこえましょう!
フラストレーションがたまると見る夢
英カーディフ大学の心理学者、ネッタ・ワインスタイン博士を中心とした研究によると、繰り返し見る悪夢は心理的に満たされていない状況を示しているのだとか。心理的欲求が満たされていない人たちは、恐ろしさや悲しさを感じる夢を見ることが多いそうです。
著名な心理学者フロイトは、「夢は無意識による自己表現である」としていましたが、悪夢となれば“潜在的な願望を充足させるもの”とはまた様子が違うようです。
そして、その心理的欲求が長期にわたり満たされない場合、人は繰り返し悪夢を体験するようになると研究者らは論じています。もしも、最近ちょっと夢見が悪いなあと感じたら、自分にフラストレーションがたまっていると疑ってみる必要がありますね。
ところで、フラストレーションがたまると、どんな影響があるのでしょう。
フラストレーションがたまると
フラストレーションがたまっている状態とは、「あれがほしい」「こうしたい」「ああなりたい」といった「欲求」が満たされない状況のこと。産業カウンセラーの大美賀直子氏は、フラストレーションがたまり不満がふくらむと、それに対処できない人は“合理的でない方法”で解消しようとする場合があるといいます。それは例えば
・物に当たる ・人をののしる、悪口を言う ・人に八つ当たりする ・「自分なんて――」と自己否定する
などといったことです。フラストレーションがたまるとイライラしますよね。上記は、その情緒的反応(イライラ)を解消しようとする行動の一例なのだそうです。
これでは、他人も自分も傷つけてしまいます。特にそれがビジネスパーソンであれば、仕事への悪影響は確実でしょう。それに、フラストレーションは、負の感情を心の内側に潜ませてしまう「ルサンチマン」の原因にもなります。
ルサンチマンとは?
「ルサンチマン」とは、弱者による、強者に対する「憤り・怨恨・憎悪・非難」の感情を指します。
デンマークの思想家セーレン・キェルケゴールが想定した哲学上の概念で、1887年に哲学者のフリードリヒ・ニーチェが再定義し、1912年に哲学者マックス・シェーラーが再びとりあげ、一般的に使われるようになったそうです。
この概念において負の感情の対象となるのは、自分に無力を感じさせる存在。例えば、お金がないことで自分の無力を感じたら、敵視する対象はお金持ちになります。社会的地位が低いことで自分の無力を感じたら、社会的地位が高い人。会社でも学校でも、成績が悪く優遇されないことで自分の無力を感じたら、成績が良く優遇されている人。出世できないことであれば、出世した人。友人が少ないことであれば、友人が多い人。
つまり、その対象を憎悪したり、恨んだり、非難したり、文句を言ったりしていると、「ルサンチマン」を持っていると言われてしまうわけです。でもこれは、いってみれば単なる“ひがみ”。フラストレーションがたまって仕事や勉強に支障が出ているうえに、「ひがみっぽい」なんて烙印を押されたら、ますます負のスパイラルから抜け出せなくなってしまいます。
だからこそ、そうならないようフラストレーション(欲求不満)耐性を強化するべきなのです。
フラストレーション耐性をつけよう!
欲求不満耐性をつけるには
たとえ何かにおいて無力を感じ、フラストレーションをためたとしても、その状況に耐えて受け止め、現実的な対処ができる人もいます。
哲学者のフランツ・ローゼンツヴァイクは、この能力を「フラストレーション(欲求不満)耐性」と説いたそうです。フラストレーション耐性は、生まれつき備わっているものではないそう。周囲からの愛情などで肯定的な自己イメージをもつようになって養われるといいます。精神科医の片田珠美氏も、著書『許せないという病』の中で、自己肯定感を持てない人はルサンチマンを抱きやすいと述べています。それは、「自分はこれでいい」と思えず「自分はもっとこうあるべきなのに」と考え、他人と比較してしまいがちだからです。
自分の欲求が満たされたり、満たされず忍耐を覚えたりといった「体験」も大きく影響します。両方を体験することが耐性強化につながるでしょう。また、周囲にいる“お手本となる人”によっても、その耐性は形成されると言われています。
つまり、フラストレーション耐性をつけるために大切なのは以下のとおり。
・「自分はよく頑張っている」と自己肯定する ・欲求が満たされるときも、満たされないときも、受け止めて「いい経験」だと考える ・どんな状況でも、人をひがんだり恨んだりしない“良いお手本となる人”を見つける
欲求不満がたまったら心がけるポイント
そうはいっても、仕事をしていればフラストレーションがたまることもあります。そんなときには、大美賀直子氏がすすめている以下の内容をこころがけるといいでしょう。
・ぐっと我慢して、状況が好転するまで待ってみる ・他の方法はないか、何かで代用できないか論理的に考える ・どうしたいのか言葉にして、誰かに伝えてみる ・状況が好転しなければ、スパッとあきらめる
上の3つは感情的な気持ちを抑える前頭葉の働きを促すので、脳科学的にも効果が期待できます。なお同氏は、仕事上のことで欲求不満がたまっているときは、1日まったく別のことをしてみるのも良いといいます。旅行、いつもと違った店でのお食事、映画や舞台にコンサートなど、仕事を忘れられるような非現実に思いっきり浸るのです。スポーツにのめりこんだり、経験したことのないワークショップに参加してみたりするのもいいですよ。
*** 「夢」の研究は、いまも様々な方面から行われていますが、まだまだ多くのことが解明されていません。いずれにせよ、悪夢を見たらフラストレーション耐性を強化して吹き飛ばしましょう!
(参考) カラパイア|繰り返し悪夢を見るのは「満たされぬフラストレーション」のサイン(英研究) All About|イライラ、フラストレーション…欲求不満耐性の高め方 Wikipedia|ルサンチマン gooヘルスケア|フラストレーション耐性 日経Gooday|怒り:脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ 片田珠美著(2015),『許せないという病』,扶桑社.