脳とコンピュータの違いとは? 記憶を「上書き保存」できない理由

Double exposure of a young woman and a big city skyline

人工知能の進化が止まりません。

身近なところでいえば、ソフトバンクから発表された「Pepper」。お掃除ロボのルンバ。さらにはリクルートのLINE公式アカウントである「パン田一郎くん」など。

10年後にはロボット、人工知能に取って代わられる職業がたくさんある、なんていう話も聞くくらい。

ちょっとドジな猫型子守ロボットが、出来の悪い息子をお世話する… そんな漫画「ドラえもん」の世界も、ひょっとしたら近づいているのかも。

そもそも、AIやコンピュータと私たちの脳って、何が違うんでしょうか? どうして私たちはコンピュータみたいに、記憶を「コピー&ペースト」したり、「USBに保存」したりできないんでしょう。

今日はそんな脳とコンピュータの違いを紹介します。

badge_columns_1001711「脳=アナログ」で「コンピュータ=デジタル」

まず共通しているのは、脳もコンピュータも、電気信号で情報を伝えているという点です。

コンピュータでは電子回路を電流が流れ、脳では神経回路を電流が流れています。

ただ決定的に違うのは、神経回路には「継ぎ目」があるという点。 「シナプス」という言葉を聞いたことはありますか?

神経も細胞である以上、どこかで細胞と細胞の中継点が必要です。それがシナプス。もちろんそこは電流が流れません。電子回路がブチっと切断されているわけですから。

その部分は、電気信号の代わりに、神経伝達物質(=一種のホルモン)がバトンになります。一方の神経細胞からもう一方の神経細胞へ、ホルモンが放たる。それを受容体(=センサー)がキャッチすると、また電気信号が発生する、という仕組みなんです。

当然、そのホルモンのセンサー(受容体)の数が増えたり、センサーの感度が上がれば、神経回路は強化されて情報が伝わりやすくなります。これが私たちの「学習」や「記憶」の正体。つまりアナログなんですね。

でも、コンピュータではこんなことは起こりません。情報は常に「0」と「1」の二進法で表されます。全か無か。情報は伝わったか、伝わらないかの二択しかありません。まさにデジタル。

これが脳とコンピュータの最大の違いといってもいいでしょう。

girl thinking

badge_columns_1001711使えば強化し、使わないと退化する神経

こうして、神経回路はスムーズに情報が伝達される回路と、そうでない回路ができあがっていきます。この強化されるか否かの基準は、「頻繁に使われているか」ということなんだとか。

頻繁に電気信号が流れる神経であれば、より増強され、伝達はスムーズに。ほとんど使われない神経なら、伝達はうまくいかなくなっていきます。

そう、コンピュータに保存したデータは(よほどのことがない限り)勝手に消えないのに対して、必死で暗記した歴史の年号を簡単に忘れてしまうのは、これが原因なんですね。

使わなければ忘れてしまう。単純極まりないことですが、それが脳とコンピュータの違い、アナログとデジタルの差なのです。

badge_columns_1001711記憶を保存できない代わりに、私たちがすべきこと

もうお判りですね。

そう、記憶を保ちたければ、使い続けるしかないのです。読んでも、書いても、口に出しても、人に説明するのでも構いません。とにかく使い続けること。

そうすれば、シナプスは徐々に強化されていき、いつしかスムーズに神経回路が繋がるようになります。

小さい頃自転車に乗れなかった人も、今では呼吸をするくらいスイスイと乗れるはずです。これも繰り返し繰り返し自転車に乗ることで、神経回路の強化が起こったから。

こうしてよく考えてみると、何か習得したり、マスターしたことって、なんどもなんども訓練を重ねた結果のことではないですか?

天才や一流と呼ばれるその道のプロフェッショナルは、例外なく一万時間の努力を積み重ねていると言います。(参考:Study Hacker|習慣は平均66日の繰り返しによって作られる。成功を導く「習慣の作り方」

アナログである脳を生まれ持ってしまった以上、私たちにできることは、「繰り返し続けること」なのかもしれません。

参考 池谷裕二|受験脳の作り方 weblio|長期増強とは


東京大学理科二類所属。県立浦和高等学校および駿台予備校出身。小さいころから自然や生き物に関心を持ち、高校時代に読んだ福岡伸一の「生物と無生物のあいだ」に刺激をうけ、分子生物学を志す。テニス歴6年。AKB48の大ファン。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト