人工知能の進化が止まりません。
身近なところでいえば、ソフトバンクから発表された「Pepper」。お掃除ロボのルンバ。さらにはリクルートのLINE公式アカウントである「パン田一郎くん」など。
10年後にはロボット、人工知能に取って代わられる職業がたくさんある、なんていう話も聞くくらい。
ちょっとドジな猫型子守ロボットが、出来の悪い息子をお世話する… そんな漫画「ドラえもん」の世界も、ひょっとしたら近づいているのかも。
そもそも、AIやコンピュータと私たちの脳って、何が違うんでしょうか? どうして私たちはコンピュータみたいに、記憶を「コピー&ペースト」したり、「USBに保存」したりできないんでしょう。
今日はそんな脳とコンピュータの違いを紹介します。
「脳=アナログ」で「コンピュータ=デジタル」
まず共通しているのは、脳もコンピュータも、電気信号で情報を伝えているという点です。
コンピュータでは電子回路を電流が流れ、脳では神経回路を電流が流れています。
ただ決定的に違うのは、神経回路には「継ぎ目」があるという点。 「シナプス」という言葉を聞いたことはありますか?
神経も細胞である以上、どこかで細胞と細胞の中継点が必要です。それがシナプス。もちろんそこは電流が流れません。電子回路がブチっと切断されているわけですから。
その部分は、電気信号の代わりに、神経伝達物質(=一種のホルモン)がバトンになります。一方の神経細胞からもう一方の神経細胞へ、ホルモンが放たる。それを受容体(=センサー)がキャッチすると、また電気信号が発生する、という仕組みなんです。
当然、そのホルモンのセンサー(受容体)の数が増えたり、センサーの感度が上がれば、神経回路は強化されて情報が伝わりやすくなります。これが私たちの「学習」や「記憶」の正体。つまりアナログなんですね。
でも、コンピュータではこんなことは起こりません。情報は常に「0」と「1」の二進法で表されます。全か無か。情報は伝わったか、伝わらないかの二択しかありません。まさにデジタル。
これが脳とコンピュータの最大の違いといってもいいでしょう。
使えば強化し、使わないと退化する神経
こうして、神経回路はスムーズに情報が伝達される回路と、そうでない回路ができあがっていきます。この強化されるか否かの基準は、「頻繁に使われているか」ということなんだとか。
頻繁に電気信号が流れる神経であれば、より増強され、伝達はスムーズに。ほとんど使われない神経なら、伝達はうまくいかなくなっていきます。
そう、コンピュータに保存したデータは(よほどのことがない限り)勝手に消えないのに対して、必死で暗記した歴史の年号を簡単に忘れてしまうのは、これが原因なんですね。
使わなければ忘れてしまう。単純極まりないことですが、それが脳とコンピュータの違い、アナログとデジタルの差なのです。
記憶を保存できない代わりに、私たちがすべきこと
もうお判りですね。
そう、記憶を保ちたければ、使い続けるしかないのです。読んでも、書いても、口に出しても、人に説明するのでも構いません。とにかく使い続けること。
そうすれば、シナプスは徐々に強化されていき、いつしかスムーズに神経回路が繋がるようになります。
小さい頃自転車に乗れなかった人も、今では呼吸をするくらいスイスイと乗れるはずです。これも繰り返し繰り返し自転車に乗ることで、神経回路の強化が起こったから。
こうしてよく考えてみると、何か習得したり、マスターしたことって、なんどもなんども訓練を重ねた結果のことではないですか?
天才や一流と呼ばれるその道のプロフェッショナルは、例外なく一万時間の努力を積み重ねていると言います。(参考:Study Hacker|習慣は平均66日の繰り返しによって作られる。成功を導く「習慣の作り方」)
アナログである脳を生まれ持ってしまった以上、私たちにできることは、「繰り返し続けること」なのかもしれません。
参考 池谷裕二|受験脳の作り方 weblio|長期増強とは