悩み解決のヒントは「悩みを認めて」「外から眺める」こと。心が軽くなる『脱同一化』という方法

生きていれば、さまざまな問題にぶつかることがありますよね。でも、本当に “問題” なのは、そんなときにネガティブな感情にとらわれてしまうこと。それでは問題解決どころか、身動きまでとれなくなってしまいます。問題を解決したいなら、まずは、“認めて眺める” 「脱同一化」から始めましょう。

意識が身につけている「鎧」の外に出る

株式会社NLPラーニング代表取締役の山崎啓支氏は著書の中で、「問題を解決するためには、あなた(意識)が身につけている鎧(プログラム)の外に出なければならない」と述べています。ここでいうプログラムとは、コミュニケーション心理学のNLP(神経言語プログラミング)におけるプログラミングのこと。

人は、さまざまな経験に自分なりの意味づけをして、考えや思い込みをつくっていきます。NLPでは、そうしてできあがった「考え方・生き方・反応の仕方」をプログラミングと表現しています。一度プログラミングができあがると、人の考えや行動はパターン化され、条件反射のようになってしまうのだとか。もちろん、それはプラスに働くこともありますが、マイナスに働くこともあります。

したがって、山崎氏がいう「鎧(プログラム)の外に出る」とは、その “パターン化されたものの外に出る” ということ。そうして、意識だけを外に出し、「鎧を着た自分が置かれている状況を外から眺める」わけです。それが、同氏のいう【脱同一化】です。

「鎧」の外に出る【脱同一化】とは?

たとえば、職場の人間関係についてひとりで思い悩み、ただただ嘆いているときは、鎧(プログラム)の内側にいる状況といえます。

しかし、もしも誰かに、自分が置かれている状況を理性的に説明しているとします。その際、つらいながらも、ある程度は冷静に話すことができるのではないでしょうか。これが、鎧(プログラム)の外に出ている【脱同一化】の状態です。

同氏は、【脱同一化】の状態になることでネガティブな感情に汚染されなくなり、視野が広くなって、問題解決を含む能力が回復すると述べています。同時に、リフレーム(違う枠組みから物事を見なおす)も行いやすくなるとのこと。

突き詰めるとマインドフルネスも【脱同一化】

【脱同一化】はマインドフルネス瞑想とも深い関係があります。日本マインドフルネス協会代表の吉田昌生氏は、「瞑想は自分の中に浮かんでくる “思考・感情” と一体化しない練習」と述べ、さらには「突き詰めるとマインドフルネスは【脱同一化】のことだ」といいます。

マインドフルネスでは、「自分」と「自分の思考や感情」を違うものとみなし、「自分」は「自分の思考や感情の観察者」ととらえるのだとか。したがってマインドフルネスを習慣にしていると、何か心に浮かんでも、感情がわきあがっても、それらをすべて鵜呑みにしなくなるといいます。パターン化された考え方や感情などに振り回されなくなるということです。

すると、それまでの考えを手放したり、解釈を変えたりなどして、ストレスをコントロールできるようになるそう。表現が違うだけで、NLPラーニングの山崎氏が伝えていることおおむね同じではないでしょうか。

【脱同一化】はフォーカシング4つめのステップでもある

フォーカシングの代表的な進め方である「コーネルによる5つのステップ」の中にも、【脱同一化】があります。

フォーカシングとは、アメリカの哲学者・臨床心理学者のユージン・ジェンドリン氏によって提唱された、「感じているけど、まだうまく言葉にできないような微妙な感覚に注意を向け、そこから言葉を出していく作業」のことです。「コーネルによる5つのステップ」は以下のとおり。

  1. からだの内側に注意を向ける
  2. フェルトセンス(からだの感じ・感情・生活とのかかわり・イメージ)を招く
  3. ハンドル(フェルトセンスにピッタリの言葉・イメージ・音・しぐさ)を描く
  4. 同一化でも解離でもない【脱同一化・脱解離】の状態で、出てきたフェルトセンスと向き合う
  5. 終わりにする

ちなみに、同一化とは、たとえば「わたしは苦しい」と感じること。解離とは「わたしは苦しくない」と否定すること。そして、【脱同一化・脱解離】は「わたしの一部は苦しい」と、苦しさも自分の一部として認めることです。

このフォーカシングは問題解決や自己援助、創造的な仕事に役立つとのこと。

自分の中に生まれた気持ちを “認めて眺める”

このように、ストレスのコントロールや問題解決などに役立つさまざまなテクニックにおいて、【脱同一化】はとても重要です。では、どう【脱同一化】を行えばよいでしょう。そこでご紹介したいのが、ある効果的なひとことです。

『人生を半分あきらめて生きる』を著した心理学者の諸富祥彦氏は、【脱同一化】を「自分の中に生まれるどんな気持ちも、“こんな気持ちもあるんだなあ” と、そのまま認め、眺めていくような姿勢を保つこと」だと説明しています。そこからヒントをもらって、筆者がときおり心の中で活用しているのは、このひとこと。

「そんな気持ちもあるんだね……」

このシンプルなひとことが、意外にも筆者には効果抜群です。何かの装置が作動したかのように、ネガティブな自分の感情と、やさしく話しかけている自分が、カチッと切り離されます。よろしければ、ご自身がしっくりくるような言葉にアレンジして、ぜひお試しください。少し気持ちが楽になって、徐々に冷静さを取り戻せるはずです。冷静になったら、さっそく問題の解決策を練りましょう!

*** 「これも自分の一部である」と認めると、逆に「自分の一部でしかない」と自覚できますよ。いろいろと頭を悩ます問題が、解決できるといいですね。

(参考) 山崎啓支著(2016),『NLPで最高の能力が目覚める コーチングハンドブック 知識と経験を最大化するセンスの磨き方』,日本能率協会マネジメントセンター. 吉田 昌生著(2017),『脳パフォーマンスがあがるマインドフルネス瞑想法』,主婦の友社. 下山晴彦著(2012),『面白いほどよくわかる!臨床心理学』,西東社. 諸富祥彦著(2012),『人生を半分あきらめて生きる 』,幻冬舎. Study Hacker|“自分の本心”に気づいてる? 心のもやもやを言語化するための「フォーカシング」6つの手順。 NLP 日本NLP協会 公式サイト・神経言語プログラミング|NLPとは?

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