「言葉を知らない」では深い思考ができぬ。語彙力を伸ばす大切な習慣――“文章術のプロ” 山口拓朗さんインタビュー【第4回】

文章を書くうえで、そして人とコミュニケーションを取るうえで、必要とされるスキルが「語彙力」です。当然、語彙を知っているに越したことはなさそうですが……具体的にどう役立つのでしょうか?

伝える力【話す・書く】研究所所長 山口拓朗さんへの全4回にわたるインタビュー。最終回では「語彙力」に関するお話を皆さまにお届けします。語彙力の重要性と、語彙力を伸ばす方法について、“文章術のプロ” に語っていただきました。

■第3回『「とにかく書きまくる」はNG!? 効率的に文章力を伸ばすための4つのヒント』はこちら

言葉こそが “創造の源”

――「語彙力」という言葉をさまざまな場所で見かけるようになり、多くの社会人が漠然と語彙力の重要性を感じていることと思います。文章力に限定した話ではないと思うのですが、ずばり、語彙力はなぜ大切なのでしょうか?

山口さん: 語彙力がなければ、そもそも物を考えられない。言葉を知らなければ、深い思考はできませんからね。そして当然、繊細なコミュニケーションも取れなくなってしまいます。

ネット社会・スマホ社会となり、今は手軽な “簡略化したやり取り” を行なうことも一般的になりました。「やばい」で伝わればそれでいい。スタンプひとつで意思を伝える。そういったコミュニケーションのスタイルを、私は否定しませんが……やはり語彙力低下の一因になっているのではないかと感じます。そしてそれが、考える力や伝える力の低下にもつながっていると思うのです。

自分の中にある豊富な語彙を使いながら、思考を展開させていく。言葉を巧みに操りながら、自分の意図通りの細かいニュアンスを伝えていく。こういったことができたほうが、実際のビジネスの現場でも圧倒的に成果を出しやすいはず。語彙力、とても大事です。

語彙力を伸ばすための本の読み方とは?

――語彙力を伸ばしていくために、山口さんはどんな方法をおすすめしますか?

山口さん: シンプルですが、本を読むことですね。

1冊の本は、完成するまでには、編集者が何度も何度も読み込んだり、プロが入念に校正を行なったり、細かな部分にまで赤字を入れて修正を繰り返したりと、多大な労力がかけられています。徹底的に言葉を磨いたうえで、世に送り出されているわけです。 いわゆる、一般の人がインターネット上で書いている文章とは質が違う。本を読めば、“磨かれた言葉” に触れることができるのです。

そして、私が社会人の方に特におすすめしたいのが、自分がいる業界の本を読むこと。医療業界ならば医療関係の本、教育業界ならば教育関係の本、といった具合です。業界人同士で齟齬なくコミュニケーションを取るためにも、業界内で使われている言葉を自分もしっかりと使えるようになっておく必要がありますからね。そこから、自分の業界以外の「書店で普段は行かないような棚」に置かれている本にもチャレンジしていけば、語彙の幅も徐々に広がっていくことでしょう。

スマートフォンでニュースを読む。そんな人におすすめの読み方

――本以外にも、今はスマートフォンで気軽に記事を読める時代になりました。便利なデジタルデバイスも活用していきたいところですが、語彙力を伸ばすという観点から、これらはどう使うのが効果的なのでしょうか?

山口さん: インターネット上の記事を読む際に、多くの人が陥りがちなのは、“自分の興味のあるものしか読もうとしない” ということ。自分が好きな記事をさくさく読んでいく。たしかに、自分にとっては楽しくて好都合な読み方ですよね。

でもそれだと、どうしても読む分野が偏ってきてしまう。その分野で使われている語彙にしか触れられないので、語彙の幅を広げるのも難しくなってしまうのです。

先ほどの、“自分がいる業界の本を読む”、そして “業界以外の本も読んでみる” という話とも関連がありますが、“興味があるもの” のほかに、ぜひ “興味がないもの” も読んでみてはどうでしょう。インターネットは、さまざまなジャンルの情報を気軽に手に入れられますよね。その特性を最大限生かして、自分が普段は読まないようなカテゴリーの情報にも目を通す癖をつけると、広く語彙が身についていきますよ。

それに、今のスマートフォンには、意味がわからない単語に遭遇したらすぐに調べられる機能もついていますよね。その場で検索だってできるわけです。「なんとなく、こんな意味だろうか……」と、曖昧なまま流してしまってはいませんか? わからない言葉に出会うのは、皆さんが思っている以上に貴重な機会。意味を調べるといったって、たかだか十数秒程度しか時間はかかりませんよね。せっかくの貴重な機会を、ぜひ語彙力をつけるために活用してほしいと思います。

【プロフィール】 山口拓朗(やまぐち たくろう) 伝える力【話す・書く】研究所所長。出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。22年間で3000件以上の取材・執筆歴を誇る。現在は執筆活動に加え、講演や研修を通じて「論理的なビジネス文章の書き方」から「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「集客につなげるブログ発信術」まで実践的ノウハウを提供。現在、中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」も定期開催中。著書は『そもそも文章ってどう書けばいいんですか?』『残念ながら、その文章では伝わりません』『伝わる文章が「速く」「思い通り」に書ける 87の法則』など10冊以上。文章作成の本質をとらえたノウハウは言語の壁を超えて高く評価されており、中国、台湾、韓国など海外でも翻訳されている。

山口拓朗公式サイト http://yamaguchi-takuro.com

できる人が使っている大人の語彙力&モノの言い方

山口拓朗

PHP研究所 (2018)

*** 磨かれた文章にたくさん触れ、知らない言葉にたくさん出会う。文章のみならず、思考活動や他者とのコミュニケーションなどで必要不可欠な「語彙力」を増やすために、できることから習慣化してみましょう。

以上、伝える力【話す・書く】研究所所長、“文章術のプロ” 山口拓朗さんへのインタビュー記事を4回にわたってお届けしてきました。文章は仕事の基本。伝わる文章を書けることは、そのまま仕事力にも直結します。

文章力を伸ばすために、皆さんは今日から何をしますか?

■第1回『書けなければ何も始まらない。「文章力の重要性」と「文章の難しさ」をプロが語る』はこちら ■第2回『あなたはどちらのタイプ? 「文章が苦手」2つのタイプの原因と克服法』はこちら ■第3回『「とにかく書きまくる」はNG!? 効率的に文章力を伸ばすための4つのヒント』はこちら

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