ここは入社試験の面接控室。あなたは就職活動中の大学4年生です。志望動機や自己PRを頭の中で反芻しながら、自分の番を待っている最中です。ドアをノックして「どうぞ」の声に導かれ、入室。名前を言って着席すると、面接官は唐突にこんなことを聞いてきました。
「シカゴにはピアノ調律師が何人いると思いますか?」
*** 「フェルミ推定」をご存知ですか?
簡単に言うと、自分の全く知らないことを、知識と論理的思考能力を用いて予想すること。こう聞いただけでも難しそうに思えますが、フェルミ推定はビジネスの現場で必要とされるだけでなく、今や多くの企業の採用試験・面接で導入されています。フェルミ推定の考え方は、今の時代を生きる社会人はもちろん、学生にも必要なのです。
「数字が苦手……」「ロジカルシンキングができない……」
そんなことは言ってられません。今回は、フェルミ推定とは何なのか、どうすればトレーニングできるのかについて、ご紹介します。
フェルミ推定って何?
フェルミ推定とは「実際に知ることが難しい、捉えようのない数値を概算すること」です。詳細なデータは知らされず、自分の知る範囲の知識を用いて答えを導かねばなりません。
生みの親は、物理学者のエンリコ・フェルミ。彼がこの手の推論を非常に得意としていたため、この名が付けられたんだとか。「シカゴのピアノ調律師」の問題は最も有名なフェルミ推定の問題で、フェルミ自身が学生に問いかけたことで知られています。
有名なところで言えば、Googleやマイクロソフトの入社試験の面接で、フェルミ推定が出題されるんだとか。マイクロソフトでは、「富士山をどうやって動かしますか?」という問題が出されたこともあるそうです。以前は一部の企業でのみ使われていたフェルミ推定ですが、現在では導入する企業が増え、すっかり一般的なものになりました。
ちなみに、ピアノ調律師の問題についての解答は以下の通りです。(※もともと、この問題が問われたのはアメリカです。今回は日本のみなさんにお届けする記事なので、シカゴではなく日本の調律師の数を求めています。)
日本のピアノ設置台数および調律師の作業時間を推定することによって、結果を導き出すことを考える。設置場所は家庭が多い。日本の人口は1億2千万人くらい、1世帯2.5人として4800万世帯。その1割にピアノがあるとして480万台。これに学校、団体などを加えて全部で500万台が日本にあると推定。 調律は1台平均2年に1回くらいとして、250万台が年1回、隔年調律対象となる。1台の調律に要する時間を通勤も含めて3時間とみると、1人1日でカバーできるのがせいぜい2台。1ヶ月の勤労日20日として40台だから、多く見積もっても1人の調律師が1年で480台。したがって1年250万台を調律するに要する人数は、少なくとも250万台÷480台≒5200人。
(引用元:株式会社あーぷ|あなたはビル・ゲイツの試験に受かるか? その18:思考プロセスの重要性)
なぜフェルミ推定は注目されているのか?
一見すると「奇問」にすら見えるフェルミ推定。なぜ多くの企業で導入されるようになったのでしょうか? それは、この情報社会の発達が原因だと言われています。
私たちの周りには情報が散乱しています。ネットワークが世界中に張り巡らされ、扱う数字の量は爆発的に大きくなりました。しかも、毎日そうした数字は目まぐるしく変化しますから、一つひとつを丁寧に把握することは不可能。そうした膨大な事象を手早く把握するためには、論理的な分解と推定の能力が欠かせないのです。(参考:THINK IT|洞察力を高めるフェルミ推定)
また、こうしたフェルミ推定の考え方は、実際に仕事をする際にも用いられるといいます。新規事業立ち上げのマーケティングの際など、調査が行われていないものの、見積もりを立て仕事を進めなければならない場面は多いそうです。経験のある方ならピンと来るかもしれませんね。
実際に当社でSEO対策の市場規模を出した時もフェルミ推定を使って、算出しております。(中略)SEO対策の市場全体の広告金額などは、他のSEO会社が発表しておりますが、「SEOの市場規模は200億」とか言われても、当社の戦略策定時には全く役に立たない数値でしたので、必要な数値として当社がSEO商品を販売できるWEBサイトを持つ顧客の数を導き出すこととにしました。
(当社とはSEOサービスを手掛ける株式会社ディーボ) (引用元:SEOラボ|フェルミ推定を仕事に生かす!就活ではなく普段の仕事で使おう)
「調べればわかる」そんな時代だからこそ、自分の頭で問題を分解し、論理的に考え推定する技術が求められているのかもしれません。
フェルミ推定をトレーニングしよう。
フェルミ推定のいいところは、自分の頭さえあればいつでもどこでもトレーニングできてしまうところ。通勤・通学の電車内、立ったままでもできますから、楽チンです。
テキストを買う必要がありませんから、お金だってかかりません。検索エンジンで「フェルミ推定 練習」と調べれば、たくさんのページが出てきます。
・日本で使われているPCの数はいくつあるか? ・日本における一年間のイヤホンの売上を推計せよ ・あるファミリーレストランにおいて食事中に箸を口に運ぶ回数の平均はいくつか ・EU諸国における車の販売台数を推計せよ ・東急東横線渋谷駅の一日の乗降者数は何人か? ・あなたが家からオフィスまで行くときの歩数を考えなさい
(引用元:ソーシャルランチ|フェルミ推定完全対策! 手も足も出ない難問にも答えを出す究極のフレームワーク)
参考までに、フェルミ推定の問題を掲載しているサイトをいくつか挙げておきますので、ぜひ見てみてください。
(参考) 株式会社あーぷ|あなたはビル・ゲイツの試験に受かるか? その18:思考プロセスの重要性 THINK IT|洞察力を高めるフェルミ推定 SEOラボ|フェルミ推定を仕事に生かす!就活ではなく普段の仕事で使おう ソーシャルランチ|フェルミ推定完全対策! 手も足も出ない難問にも答えを出す究極のフレームワーク