「日本人は討論が苦手だ」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。 日本の社会では論理的に話すことよりも、お互いに察し認め合う調和的なコミュニケーションが美徳とされてきたので仕方がないのでしょう。しかし、グローバル化が進展し、「慣例にならってさえいれば発展出来た」時代はとうに終わっている今、様々な場面で論理的な議論の能力が必要とされています。
実際、アメリカにおける紳士録(政治や経済で強い影響力を持つ著名人のリスト)に名を連ねている人の多くがディベートを競技として経験してきています。日本人は意見が対立する=喧嘩のように捉えてしまいがちですが、決してそうではありません。ディベートとは一体何なのか。詳しく見てみましょう。
ディベートは「知の格闘技」!?
「討論」という言葉に対してみなさんはどのような印象を持っていますか。いわゆる「討論番組」では、大の大人たちが大声をあげて、互いの意見を中傷しあっている光景がよく見られます。こういった印象から、「ディベート=うまく相手を言いくるめるかを競う競技」と早合点してはいけません。
今回紹介している競技ディベートにおいては、話す順番や時間等が厳しく設けられ、審査員たちが議論の説得力を客観的に判断します。そのため、どれほどまくし立てようとも、それが論理的な説得力を持たない限り、競技の上では無意味なものとなるのです。本来のディベートとは、あくまでルールに則った紳士的な「競技」なのです。
勝利のカギは、情報収集能力
自分の主張に説得力を持たせるために非常に重要となるのが、有力な情報を収集。代表的なものが統計資料や専門家による論文です。ですが、それらが必ずしも客観的に正しい情報である確証はありません。主張の根拠となるような物を見つけ出すためには、それを批判的な思考で読み解いていく、クリティカルリーディングのスキルが必要になります。
そのため、ディベート競技が上達していくにつれ、批判的な思考力や、情報を取捨選択しながら整理していく能力が身についていくのです。これは、現代において非常に有用なスキルといえるでしょう。
「聞く力」が身につく!
「人の話を聞く」という行為に関して多くの人が勘違いしているのが、とりあえず相手の話に相槌を売っていれば聞いていることになるということです。しかしそれは、聞いているというよりも聞き流しているだけです。自覚のある人は結構いるのではないでしょうか。
ディベートでは、相手の主張や理屈に対して反論で「攻撃」していきます。その攻撃が有効であるためには、相手の言っていることの矛盾や論理の欠陥に、こちらが気づかなければなりません。すなわち、相手の主張を理解しようと能動的に聞かなければならないのです。
これは決して「非難のための非難」ではありません。この訓練を積んでいけば、日常におけるコミュニケーションにおいても相手の気持ちがより深く理解できるようになり、人間関係もうまくいくようになるでしょう。
「質問力」は社会人の必須スキル!
学校では困ったことがあれば先生たちが何でも教えてくれたけども、社会に出たら上司や先輩が手取り足取り教えてくれるはずずはありません。そんなときに重要になるのが、「自分にはどのような情報が必要で、何が今足りていないのか」を知った上で自分から質問をしていく技術です。
学生時代を受動的に過ごしてきた場合、疑問が思い浮かばない、何が問題なのかが分からないということがよくあります。成長していくためには、自分に足りない力を補うことが必要で、そのためには先輩たちの力を借りなくてはならないこともあります。 ただ単に目先の問題の質問を繰り返すだけでは、根本的な理解にはなかなか到達しません。相手の主張の根拠を掘り下げて本質に迫ろうとするディベートの質問力によって、真の理解が深まっていくと言えるのです。
*** いかがでしょうか。ディベートは喧嘩でも、相手を言いくるめることでもありません。大学のサークルや、社会人向けワークショップ等でディベートはいつでも始めることができるので、興味を持ったらぜひとも始めてみてください。
参考文献 特定非営利活動法人全日本ディベート連盟 京都大学討論会 | タケルンバ卿日記 | ディベートの奥義は「聞く技術」 nanapi | 年収が変わるかも? ビジネスに使える5つのディベート流質問術