“冷たい物” “硬い物” を触っていると冷淡になる!? 環境が引き起こす「誤判断」を避ける4つのヒント

わたしたちは、日々さまざまなことを判断しています。たとえば今日着ていく服を決めるため、天気予報などで後々の天気と気温を判断したり、どの路線で行くと到着が早いか判断したり、どのランチを選択すると満足感が高いか判断したりなどです。そういった判断だけなら気楽ですが、人生には重要な決断を迫られる数々の場面があるので、その際の判断も必然的に重要度が高くなります。

ところが、人の判断は、変化や状況にかなりの影響を受けるそうです。それを示す研究と、誤った判断を避ける方法を探ります。

稀になる要素ほど影響する!?

ハーバード大学・David E. Levari氏らの研究では、人々が変化に影響を受けて誤判断しやすくなるということが示されました(学術雑誌「Science」の2018年6月29日号で発表)。

研究チームは、被験者に1000個の青色と紫色の水玉を見せ、どちらの色か判断させたそう。すると、被験者は2つの色を均等に見せていた時点では正しく判断していましたが、途中から青い水玉の数を徐々に減らすと、紫色の水玉を「青色」と判断するようになってしまったそうです。

しかも、事前に「青い水玉が減っていく」と忠告しても、「正しく判断できれば報酬が出る」と告げても同じ結果だったのだとか。同じ形式の実験は、写真の人物が自分にとって「脅迫的」か「非脅迫的」かの判断や、研究提案が「非倫理的」か「倫理的」かの判断でも行われましたが、同様の結果だったそうです。

つまり、青い水玉が少なくなると紫色の水玉までも青色に見え、脅迫的な顔が少なくなると、ニュートラルで非脅迫的な顔までも脅迫的な怖い顔に見え、非倫理的な研究提案が少なくなると、無害で倫理的な提案までも非倫理的に感じたということです。これは、稀になった要素ほど、より意識するようになることを示しています。

触感も判断に影響を及ぼす

以前より、触感も判断に影響を及ぼすことがわかっています。イェール大学・John Bargh氏らによる研究では、「温かい飲み物のカップを持つと寛容な態度に傾き、冷たい飲み物では冷淡になる」と明らかにされました。

また、「Science」の2010年6月25日号に発表された研究では、重いものや固いものの感触があると、判断が重く厳しくなると示されました。たとえば被験者が重いクリップボードで履歴書を見ると、求職者が真剣に職を求めていると捉える傾向が強くなったそうです。政府の財政支援についてアンケートに回答してもらう実験でも、重いクリップボードを手にしていたほうが、より大きな金額を支持する傾向が強くなったのだとか。

さらに、ざらざらした手触りのジグソーパズルを組みながら「話」を聞かされた被験者は、話に登場する人の行動を否定的に捉える傾向が強かったのだとか。逆に、なめらかな手触りのパズルを組んでいた被験者は、あまり悪い印象を持たなかったそうです。

同様の結果が、「硬い木のブロックに触れた場合と、やわらかい毛布に触れた場合」、「硬い椅子に座った場合と、やわらかい椅子に座った場合」でも示されました。いずれも、硬いほうが否定的、あるいは厳しい判断へと傾いたのです。

誤判断を避けるには

このように、わたしたちは判断を行う際、あらゆるものから影響を受けています。しかし、青い水玉が紫に見えても、たとえばカラーモード(CMYK/RGB)配分(%)のデータがあれば、「青色に見えるが、データからいうとこれは紫色である」と間違うことはありません。

以前ビル・ゲイツ氏が「ここ10年で読んだ中では最高」と称賛した『暴力の人類史』で著者のスティーブン・ピンカー氏は、過去より現在の方がよくなっているということを、詳細な事例とデータを用いて示しました。つまり、「昔のほうがよかった」と感じ悲観的になっている人々に対し、データを見せて「今は、決して昔と比べて悪くはなってはいない」と明らかにしたのです。

また、触感による判断への影響について研究を行ったマサチューセッツ工科大学(MIT)の心理学者Josh Ackerman氏は、「あくまでも影響は無意識のうちなので、意識化すると触感の影響は低減する」と説明しているそう。

つまり、何かを判断する際は、決断の前に以下の問いかけが必要です。

1.根拠なしに判断していないか? 2.無意識のうちに行っていないか? 4.居心地のいい環境で判断した内容は、厳しさや真剣さを欠いていないか? 5.居心地の悪い環境で判断した内容は、思いやりや配慮を欠いていないか?

当てはまるものがあれば、詳細なデータを用い、意識化して客観的になるなどして、もう一度判断しなおしてみましょう。

*** マサチューセッツ工科大学(MIT)のAckerman氏によれば、触覚と判断の結びつきは一方通行ではないのだとか。人々の考え方を変えることで、感覚も変化するとのこと。それならば、もしかして寒い・暑い・座り心地が悪い・机が低い・高いといった物理的に居心地の悪い環境でも、肯定的な判断を繰り返しているうちに、居心地がよくなっていくのかも……!?

(参考) Science|Are these dots purple or blue Your answer might not be as reliable as you think Science|Prevalence-induced concept change in human judgment WIRED.jp|触感の違いが「判断」に影響:研究結果 Study Hacker|“最高の本” に出会えるかも。ビル・ゲイツ氏がすすめる「2018年の夏に楽しめる5冊の本」

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