【書評】『20歳の自分に受けさせたい文章講義』

上司に送るメールから、企画書、大学での期末レポートに至るまで、私たちは文章を書くことから逃げられません。ひと昔前までは、手紙といえば年賀状、なんて時代があったというのに。

こんな世の中、「文章を書くのが苦手」は最悪ですね。今日ご紹介する本は、そんな人に一つのアドバイスを与えています。

書こうとしないでください。自分の頭の中を「翻訳」してみてください。 文字を連ねるのではなく、考えていることを説明してください。

「20歳の自分に受けさせたい文章講義」の開講です。

20saino-jibunni-ukesasetai02『20歳の自分に受けさせたい文章講義』 古賀史健著 講談社 2012年 assocbutt_or_buy7

(以下引用は本書より)

 

 

 

 

 

文章を書く「心構え」を教えてくれる

「書くのが苦手」という人が真っ先に手を伸ばすのが、「文章の書き方本」です。たいてい、そこで紹介されているのは、文末の丸め方だったり、主語述語を揃えることだったり、文章をミクロな視点から見つめたものが多いのです。

そうした本は確かに役立つかもしれません。文章の言い回しや表現は、真似することでしか身につきませんから。しかしそれは、スポーツに例えれば、細かなフォームに気をとられ、戦略を立てずに試合に臨むようなものです。

ワンプレーは綺麗になるでしょうが、到底試合には勝てないでしょう。この本は、文章を書くにあたって必要になる戦略や方針を教えてくれます。

「この言い回しが使える!」「この表現が便利!」そのようなものでない以上、即効性は低いかもしれません。しかし、この本が教える「心構え」は文章を書く力の下地になるものです。後からジワジワ効果を実感できるでしょう。

書くのではなく、頭の中の「ぐるぐる」を翻訳してみる

著者の古賀氏は、文章を書けない原因を「書こうとするからだ」と語ります。

いきなり文章に落とし込むのではなく、まずは自分の考えを翻訳してみる。翻訳、という言葉が少しわかりにくいかもしれませんが、簡単にいえば「わかりにくことを人に理解させる」ということです。

自分の今抱く感情は、どこから生まれるものなのか。 何を見たから浮かんだものなのか。 それを人にわかってもらう、理解してもらう。

文字にすることは一度忘れ、どうやったら人にわかってもらえるか、ということにフォーカスしてみてください。すると、自然と言葉にしてみたくなるはずです。

いきなり書こうとせず「どうやったら人に伝わるか」を考える。文章を書くうえで非常に大切なマインドです。

「大勢の読者」を想定しない

ブログや企画書など、多人数が読む文章を書く機会もあるはずです。その時に気をつけるべきなのが、「大勢の読者を想定しない」ということなんだとか。

自分はこれまで、優れたライターはどんな人にもウケる文章を書くものだと考えていました。しかし著者は、それを真っ向から否定します。とことんターゲットを絞った文章こそ優れているのだと。

著者は例として、ラブソングを引き合いに出しています。

情景描写や年齢設定、心象描写の細かいラブソングは、感情移入することができる。たとえ自分にそんな経験がなかったとしても、だ。スキー未経験者でも「ゲレンデの恋」を扱った歌に感情移入できてしまうのが、ラブソングなのだ。多数派をターゲットとすることをやめ、読者を絞りこむこと。(中略)むしろ”みんな”から喜ばれようとするほど、誰からも喜ばれない文章になるのだ。

 

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「10年前の自分」に向けて書いてみよう

ターゲットを想定して文章を書くことを、著者は「読者の椅子に座る」と表現しています。読者と同じ目線にたち、読者がどう感じ、何を思うのかを考える。「読者の椅子に座る」とはそういうことです。

さて、ここである一つの疑問が浮かびます。一体、誰の椅子に座ればいいのでしょうか。先ほど、ターゲットを絞ることが大切だとわかりました。しかし、どう絞るのか。この本には、驚きの内容が書かれています。

結局、われわれが本当の意味でその「椅子」に座れる読者は、世の中に2人しかいないとぼくは思っている。次の2人だ。 ①10年前の自分 ②特定の”あの人”

 

「②特定のあの人をイメージする」は理解しやすいかもしれません。企画書なら、自分の上司。ブログなら、友人の◯◯さん。具体的な個人でなくとも、ターゲットとなる人物像をイメージするのはよくある話です。

しかし「①10年前の自分をイメージする」とはどういうことでしょうか。

文章を書くからには、何か有益な情報を、誰かに伝えたいと思っているはずです。昔の自分、まだ有益な情報を知らない自分に伝える。それが「10年前の自分の椅子に座る」ということです。

10年前に知っていたら、自分の人生は変わっていたかもしれない。10年前に知っていたら、あんなに苦しい思いをせずにすんだかもしれない。(中略)「10年前の自分」に語りかけるようにして書けばいいのだ。彼や彼女がどんな景色を見て、どんな悩みを抱えているのか。どんな言葉を嫌い、どんな言葉に耳を傾け、どう伝えれば納得してくれるのか。すべてが手に取るようにわかるはずだ。

 

こうすれば、言葉の重みが違ってくる、そう著者は語ります。曖昧な一般論やあやふやな言葉ではなく、昔の自分に伝えるつもりで書いてみる。そうすることで、自分の主張に鋭さが増すんだとか。

***

文章を書くのはむずかしい。しかし、著者は「書くことは考えることそのものだ」と言います。人はものを書いて初めて、自分の考えに光を当て、吟味することができると。

この現代社会、書くツールは様々あります。TwitterやFacebookだってその一つです。今日から、自分の考えを文字にしてみませんか? そうして初めてわかることだって、いっぱいあるはずです。

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