「仕事に情熱を見出せない……」 「ずっと勉強や仕事を続けてきたけど、結局自分が人生で何をしたいのかよくわからない」
皆さんの中には、ふとそんなことを考えてしまう方もいるのではないでしょうか?
今回は、人生の大部分を占める、働き方に焦点をあてます。自分のやっていることに情熱を持つには、人生を意味あるものにするにはどうすればいいのかを、考えていきましょう。
働く意義、学ぶ意義を見失っていないか?
カナダのカピリアノ大学経営学部でGPA4.0、首席となったSean Aiken氏も、上記のような悩みを持ったことがあると言います。大学の卒業式の日になって初めて「自分はGPAをとる方法以外、何も知らないことに気が付いた」のだそう。TEDで講演をされた際、次のように述べていました。
しかし卒業の日、私は気づいたのです。私は何もわかっていない、と。 とにかく、大事なことは何ひとつ知らないのです。自分自身のこと、人生で何がしたいのか……。幸せになりたい、充実していたい、人生を何か意味あるものにしたい。そういうことはわかっていましたが、それ以外は本当に手掛かりすらありません。それを考える時、孤独を感じました。周囲のみんなは、今後の方向性をきちんとわかっているようでした。少なくとも、私にはそう見えたのです。
(引用元:logmi|あなたはなぜ仕事に“情熱”を持てないのか–毎週違う仕事をした若者が学んだこと)
学生であれば勉強や研究、社会人であれば仕事。私たちは常日頃、こうしたタスクに追われています。しかし、もしそのために自分自身としっかり向き合う時間が取れず、ただ周りと同じように行動してしまっているだけなら、それは働く意義や学ぶ意義を見失っている状態。自分の人生について、もう一度よく考えてみるべきかもしれません。
時代とともに働く理由は変わった
心理学者のマーティン・セリグマンによれば、人間のモチベーションは「達成・快楽・意味合い・良好な人間関係・没頭」の5つから成るといいます。
モノが不足していた時代に育った団塊世代の人たちの多くは「達成」や「快楽」を主なモチベーションにして働くことができました。汗水たらして働いて、稼いだお金で高級な料理を食べワインを飲み、車を買うことなんかを目標にして頑張ることができたのです。
しかし、時代とともにモチベーションの優先順位が変わりつつあります。
「モノがなかった時代」を知らない若い世代は、「意味合い」「良好な人間関係」「没頭」を重視するようになりました。頑張る理由それ自体が変化してきています。「なぜ働くのか」「自分の所属するコミュニティにどんな影響を与えるのか」「楽しいか」などが、収入や地位よりも大事なモチベーションになってきているのです。
お金と地位を中心にして考えない
そうはいっても、制度や世論は簡単には変わりません。実際、「地位」「収入」のある人が社会的ヒエラルキーの上位に属し褒め称えられているではありませんか。たとえやりたいことに没頭していて、自己実現に取り組み、誰より自立している人であっても、「甘えている」と考えられる風潮がまだまだ残っているのです。
そうした世論に抑圧され、「周りから羨ましがられそうだから」「平均よりも収入がいいから」といった理由で進路を決めると、自分の決定に対する納得感が損なわれる可能性が高くなります。それは、周囲からの評価を判断基準としてしまっているから。他人に依存した選択の結果、お金や名誉に繋がる道を進もうとしても、そこに意義など見出せるわけはないのです。
株式会社LINEの元CEO森川亮さんも、「お金」や「名誉」をモチベーションにすることには、以下の理由から反対しています。
「お金」や「名誉」を手に入れると、それを守ろうとしてしまうからです。その結果、新しいチャレンジができなくなり、自分の成長を止めてしまう。それは、とても恐ろしいことだと思うのです。
(引用元:森川亮(2015),『シンプルに考える』,ダイヤモンド社.)
何を基準に仕事を決めればいいのか?
では「お金」や「地位」ではなかったら、何を基準に仕事を決めればいいのでしょうか?
高い地位、高い給料という“証明書”を使えば、個人の社会における優位性を簡単に示せるため、実力を認めてもらいやすくなり、承認欲求を満たしやすくなります。しかし、そこに安易に逃げないことがポイントなのだ、と森川さんは言います。本当に追い求めるべきことは肩書きによる優位性ではなく、その人が実際に生み出した価値から得る承認や優位性なのです。
森川さんは自身がするべき仕事を決めるとき、以下のふたつの基準で決めているそうです。
「世の中にできるだけ多くの価値を生み出す」 「自分のやりたいことができる環境に身を置く」
これらの判断基準で働いた場合、お金基準で働いた時よりも、社会により多くの価値を生み出せるうえ、より速く大きく自己成長もでき、自分の中で満足感が生まれるのだそう。
そしてこれらの基準に基づいて働けば、新しいことにも挑戦しやすくなります。新たなことへのチャレンジには当然、失敗はつきもの。もしお金や地位を中心にして考えていたら、一度成功して得た今の地位を捨て、新たなことに挑戦していくことは難しくなるはずです。しかし、「世の中にできるだけ多くの価値を生み出す」ことを判断基準にすることで、失敗を恐れないという覚悟ができます。お金や地位よりも自己成長、自分のやりたいこと、他者への貢献を追い求める。これこそがその人自身が幸せを掴み、周りの人も幸せにする働き方なのです。
今の仕事に満足していなかったり、自らの人生の意義についてわからなくなってしまったりしたら、「自分がいま本当にするべきことは何か?」と自問してみてください。見つかるまで、探してください。次の一歩が見えてくるはずです。
(参考) 尾原和啓(2017),『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』,幻冬社. 森川亮(2015),『シンプルに考える』,ダイヤモンド社. logmi|あなたはなぜ仕事に“情熱”を持てないのか–毎週違う仕事をした若者が学んだこと