「時間がないから、やりたいことが全然できない……」と考えている方、果たして本当にそうでしょうか? もしかしたらあなたの身近にあるスマートフォンなどの情報機器が、重大な時間泥棒になっているかもしれません。今回は主にスマートフォンに注目し、情報機器の使いすぎをやめる「デジタルデトックス」をご紹介します。
「デジタルデトックス」とは?
「デジタルデトックス」という言葉をご存じでしょうか。インターネットの進歩に伴い注目されるようになった言葉で、スマートフォンなどの情報機器から一時的に離れることを意味します。
2018年3月に行われた、視聴行動分析サービスを提供するニールセンデジタル株式会社の調査によると、国内における1人当たり1日のスマートフォン利用時間の平均は3時間7分で、前年の調査より16分も平均が伸びたそうです。また、スマートフォンの利用時間の平均は年々増加傾向にあり、その主な要因にはLINEやTwitterなどのSNSやゲームアプリ、動画アプリなどが挙げられます。
あなたもスマートフォンで、これらのアプリをよく使っているのではないでしょうか? 気づかぬうちに、3時間などすぐに経ってしまいます。その時間の半分でも何か他のことに費やせたら、より充実した生活が待っているかもしれませんよ。
スマートフォンの使用をやめるとこんなメリットも
スマートフォンの使いすぎをやめると、時間が生まれること以外にも多くのメリットがあるのです。
・入眠しやすくなる
スマートフォンやパソコンなどの画面からはブルーライトと呼ばれる光が出ており、一説によるとこれが眼精疲労や体内時計の狂いを引き起こしています。事実、ブルーライトを遮断した人としなかった人とでは、入眠のしやすさに大きな差が生まれたそうです。
・集中力が増す
ある実験で、被験者の近くにメモ帳かスマートフォンを置いた状態で、パソコンのスクリーンに表示された文字列の中から特定の文字を見つけるまでの時間を測定しました。その成績を比較すると、一般にスマートフォンを置いた場合の方が文字列を見つけるまでの時間が長くかかってしまうことが分かりました。触ったり操作したりしなくとも、私たちはスマートフォンに集中力を削がれてしまうのです。
この傾向は、スマートフォンへの依存度により程度の差はありましたが被験者全員に見られました。このことから、スマートフォンが我々の集中力に悪影響を与えることは間違いないと言えます。言い換えれば、スマートフォンから離れることができれば集中力の増加につながるということです。
・ストレスが減る
他人とのコミュニケーションツールとしてのインターネットを、負担に感じてしまうことはありませんか? SNSというものはその名が示す通り、他者との関係なしに使うことはできません。
青少年とインターネットについて考える会の加藤千枝氏が、高校生に対しある調査を行いました。その結果によると、SNSを使う際にはさまざまなストレスの元があり、自分が発信する場合だけでなく他人の発信を目にするだけでも、「この愚痴は自分に向けられたものではないか」「あの人はいつもネガティブな発言をしているな」などとあれこれ思考を巡らせることで、精神的な疲労へと繫がるおそれがあることが分かりました。
インターネットから離れて一人の時間を確保すれば、心が落ち着き、ストレスの軽減につながるでしょう。
デジタルデトックスの方法を紹介
以上のように、スマートフォンと適切な距離を保つことにはメリットがたくさんあることがわかりました。ではここで、デジタルデトックスの具体的な方法を2つご紹介します。
・代わりにとる行動を決める
ある行動をやめられないのは、そこに心理的メリットがあるからです。スマートフォンの使用で言えば、それは何も考えずにいられることや何か刺激を得ることなど、人によりさまざまでしょう。そこで、同様のメリットを他の行動から得てみてください。習慣化コンサルタントの古川武士氏はこれを「スイッチング」と呼んでいます。
何も考えずにいるには瞑想や入浴、刺激を得るには読書や映画鑑賞などがスイッチングの例として挙げられるのではないでしょうか。これらの行動をとることで、無理なくスマートフォンから離れやすくなるはずです。
・強制的にスマートフォンを使えなくする
上記のようなスイッチングを試してみてもうまくいかない! という方は、スマートフォンを使えなくするアプリを使ってみましょう。その1つとして「forest」をご紹介します。
まず、何時間スマートフォンを触らないかを設定します。その時間の間スマートフォンを触らずにいると、画面上で緑豊かな木が育ちコインをもらえます。コインが貯まることで、スマートフォンを触らずにいた時間が記録として残り、集中できた成果が蓄積されていくのです。逆にスマートフォンを触ってしまうと、枯れた木になってしまいますので要注意。木を枯らしたくないという気持ちから、思わずスマートフォンを遠ざけてしまうはずです。
ちなみにコインが一定以上貯まると、画面上だけでなく現実世界での植林をすることもできるようになります。これは、ユーザーが貯めたコインを使って本当の植樹を申し込むと、このアプリの制作会社が世界の植樹団体に現実世界で寄付を行い、植樹が行われる、という仕組みです。現時点で280,000本以上の木が実際に植えられています。
なお、先ほど書いた通り、スマートフォンは視界に入るだけでも集中力に悪影響を与えてしまいます。このアプリを使用する際にも、スマートフォンを触らないと決めた間は、極力視界に入らないように片づけておくとより効果があると思います。
*** このご時世、一切情報機器を使わずに生活をすることは困難ですが、その距離感を見つめ直すことでより豊かな生活を送れるようになるはずです。ぜひ一度デジタルデトックスを試してみてください。
(参考) nielsen|LINE及び動画系アプリは利用時間が増加、TwitterなどのSNSは微減 ~ニールセン、スマートフォンアプリの利用状況を発表~ JINS|ブルーライトが私たちの眼に及ぼす影響 ITmedia ビジネスオンライン|眼の専門家に聞く、LEDディスプレイから出る「ブルーライト」は何が悪い? J-CASTニュース|スマホを横において仕事をするな 注意力散漫で能率が落ちる不思議 加藤千枝(2013),”「SNS疲れ」に繋がるネガティブ経験の実態 一 高校生15名への面接結果に基づいて.” 社会情報学,Vol 2, No1, pp.31-43. 習慣化コンサルタントの「続ける習慣」ブログ|悪い習慣をやめる『スイッチング技術』 Forest by Seekrtech APP BANK|【環境の日】スマホを触らない間だけ木を育てられる癒し系アプリ