記憶力を高めたいという方は、ぜひ骨を強くする習慣を取り入れてみてください。意外にも、骨は記憶力に大きな影響を及ぼしているんですよ。

骨が出す物質「オステオカルシン」で記憶力アップ!?

カラダを支え保護してくれる「骨」ですが、実はメッセージ物質(ホルモン)を放出し、脳やカラダの機能を保つ「臓器」でもあるのです。

その、メッセージ物質のひとつが「オステオカルシン」。米コロンビア大学遺伝発達学教授のジェラール・カーセンティ博士が行った実験で、老齢マウスにオステオカルシンを与えたところ、記憶力テストが若年マウスのレベルにまで改善されたのだとか。オステオカルシンがないマウスは、新たな記憶をたくわえる脳の海馬という場所が非常に小さいそうです。

福岡歯科大学客員教授の平田雅人氏は、「カーセンティ博士の研究は、骨に対する考え方を一変させる画期的なものだった」と述べ、「いまやオステオカルシンは、世界の医学界から注目されるホルモンとなった」と伝えています。

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骨とホルモンのメカニズム

オステオカルシンは、どこから生まれるのでしょう?

まるで建築現場のような「骨」

骨は常に壊され、新たにつくられ、入れ替わることで疲労骨折などを防いでいます。また、骨はカルシウムの貯蔵庫なので、壊れることでカルシウムをカラダに放出しているのです。

骨を壊すのは「破骨細胞」。骨のカルシウムをいったん取り込み、粉々にして吐き出します。骨をつくるのは「骨芽細胞」。“骨をつくろう”というメッセージ物質を受け取ると、まるでセメントを流し込み、かためるように骨をつくります。

そこに「スクレロスチン」というメッセージ物質が届くと、“骨をつくるのは止めよう”と伝わるため、骨芽細胞は骨の建設を中止します。スクレロスチンは、骨の量をコントロールしているのです。この物質が全くなくなると、骨がどんどん増える難病(硬結性骨化症)になり、逆に大量発生すると骨密度がスカスカになってしまいます。

骨のメッセージ物質はどこからくる?

骨芽細胞に骨をつくらせるメッセージ物質は「アクセル役」で、骨芽細胞の働きを止めるスクレロスチンというメッセージ物質は「ブレーキ役」です。実はこれら、いずれも骨のなかにある「骨細胞」から排出されています。骨細胞は、骨工事の現場監督なのです。

そして、脳に届き記憶力をアップさせるメッセージ物質「オステオカルシン」は、骨をつくる骨芽細胞から分泌されます。骨芽細胞にはオステオカルシンのほか、免疫細胞を増やす「オステオポンチン」というメッセージ物質を出す役割もあります。

つまり、骨のなかの骨細胞が「骨をつくろう」とメッセージを出すと、骨芽細胞が骨をつくりはじめ、同時にオステオカルシンやオステオポンチンを分泌します。それが血管を通じて各細胞に届き、記憶力を高めたり、免疫細胞を増やしたりするのです。また、骨細胞が「骨をつくるのは止めよう」とメッセージを出せば、骨芽細胞は骨をつくるのを止めます。それにより、ちょうどいい骨量になるわけです。

オステオカルシンには筋力を保つ働きもあるのだそう。ならば、もう骨を強くするしかありませんね。

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骨を強くするには「衝撃」が必要

ミズーリ大学准教授パメラ・ヒントン博士によれば、「衝撃を感知すると、骨は量を増やす」そうです。自転車による運動習慣がある人は、ランニング習慣がある人より、骨粗そしょう症予備軍の数が非常に多いのだとか。

もちろん自転車による運動も決して悪くはありません。ただ、「骨を増やす」という観点だけから見ると、ランニングと自転車の差は骨への「衝撃」が伝わるかどうか。そこでヒントン博士が、骨に衝撃を与えるためのジャンプ運動を、骨量の低い人々に1年間続けてもらったところ、19人のうち18人のスクレロスチンの量が減少し、骨量が上昇したそうです。

骨に伝わる衝撃は「骨細胞」が感知します。衝撃があると骨細胞はスクレロスチン(ブレーキ役)を出すのを止め、“骨をつくろう”とアクセル役のメッセージ物質を発して、骨をつくる骨芽細胞の数を増やすわけです。

つまり、活動的にすごし骨に衝撃を与えている限り、骨は強くなり脳もカラダも機能を保ちます。しかし、座りっぱなしの生活をしていると骨は活動を止めてしまうので、どんどん若さが失われ、機能も衰えてしまうのです。

骨を強くして記憶力をよくするには

記憶力を高めてくれるオステオカルシンは、骨に適度な衝撃を与える運動や、ビタミンDを補給・生成することでも分泌されるそうです(※ビタミンDはカルシウムの吸収、オステオカルシン発現を促進する)。足腰が弱い人はあまり無理をせずに、以下から自分が取り入れやすいものを選んでみてくださいね。

・ランニングやジョギング
・ウォーキング
・階段の上り下り
・日光浴によりビタミンDを生成
・ビタミンDを含む魚やきのこ、牛乳の摂取
・縄跳び

カルシウムを含む乳製品、小魚や大豆製品、野菜や海藻などを食事でとることも忘れずに!

ビタミンDを日光浴で生成する時間の目安

日光浴はビタミンDを生成してくれますが、紫外線を長時間浴びると皮膚に悪影響が出てしまいます。そこで、国立環境研究所のデータより、ビタミンDを生成する時間と、悪影響が出てくる時間を書き出しておきます。

なお、成人が1日に必要なビタミンD量は約15 μg。日本人は平均的に5.5 μgを食物から摂取するため、残りの10 μgを日光浴で補うと仮定します。ただし、中間的な肌色の方に合わせた数値なので、皮膚の色が白い人はこの値の0.83倍、逆に濃い人は1.5倍を目安にする必要があるとのこと。また、晴天日が少ない冬季は長時間(カッコ内)になっていますが、日光に当たる皮膚の部分を増やしたり、食事からの摂取を増やすことによって時間を短縮できます。

<10 μgのビタミンDを晴天日に生成するのに必要な日光照射時間>

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<晴天日に日光浴した場合、皮膚に悪い影響が出始める時間>

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(表の引用元:国立環境研究所|2014年度|太陽紫外線による健康のためのビタミンD生成と皮膚への有害性評価 —国内5地点におけるビタミンD生成・紅斑紫外線量準リアルタイム情報の提供開始—

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ノーベル医学生理学賞を受賞された山中伸弥教授は、「人体にはムダなことがあまりない、全て意味がある」といいます。脳やカラダの秘密は、まだまだたくさんありそうですね。

(参考)
NHK健康ch|NHKスペシャル人体”骨”が出す!最高の若返り物質
NHKあさイチ|骨 驚きのパワーとケア術
NEWSポストセブン|骨が分泌するホルモン 筋肉や精子も増加させる注目物質
EurekAlert! Science News|Bone-derived hormone reverses age-related memory loss in mice
日本薬学会|オステオカルシン
日本薬学会|ビタミンD
国立環境研究所|2014年度|太陽紫外線による健康のためのビタミンD生成と皮膚への有害性評価 —国内5地点におけるビタミンD生成・紅斑紫外線量準リアルタイム情報の提供開始—
小守壽文(2012),『Osteocyte〜骨の司令塔としての役割〜』,CLINICAL CALCIUM Vol.22,No.5,p69(669)