よく噛むほど睡眠の質も上がる。ちょっと意外な「快眠」3つのルール。

「睡眠時間はしっかりとっている」という方でも、何だか目覚めがすっきりしなければ、仕事や勉強のパフォーマンスを低下させる原因になります。今回は、最新の研究などから睡眠がもたらす影響を示すとともに、「快眠の基本は知っている」という方にとっても “ちょっと意外” な「3つの快眠ルール」をご紹介します。

適正な「睡眠」が合格への近道

寝具等の企画・製造・販売を行うライズTOKYOが行った、「睡眠時間ごとの第一志望校の合格者・不合格者数(大学受験)」の調査では、適正時間の睡眠をとった学生が、より合格に近づけることが示されています。

睡眠の適正時間は「10代前半が9時間」「10代後半が8時間」「大人が6時間半から7時間半」「高齢者が6時間程度」といわれているそう。

そう話す早稲田大学教授・脳科学者の枝川義邦氏は、「成長ホルモンの分泌、細胞の修復、情報の整理、記憶の定着」などが行われる睡眠の時間は、受験生にとって非常に重要であると説明しています。

正常な認知機能には「睡眠」が必須

また、2018年9月27日付けで『Journal of Experimental Psychology: General』に発表された、ミシガン州立大学の研究では、認知機能を正常に働かせるには睡眠が必須であることが裏付けられました。この研究は、睡眠不足に関する研究としては過去最大規模なのだとか。

夜間に集められた234名の被験者は、順番が決まっている認知的作業に取り組むよういわれ、ときおり中断させられては、再び中断した段階から正しい順序で作業するよう求められたそうです。そののち、睡眠をとるグループ、睡眠をとらないグループに分けられ、再び翌日同じように、同じことを行うよう指示されました。

その結果、睡眠をとらなかった被験者のうち、15%というかなりの割合が作業基準に達することができず、意欲も低下していたそうです。そして、時間とともにパフォーマンスは低下していったそう。

一方、しっかりと睡眠をとったグループのなかでパフォーマンスや意欲が低下していたのは、わずか1%だったといいます。

快眠の基本と、3つの意外なルール

このように睡眠はとても大切です。しかし、睡眠時間が足りていれば十分というわけではありません。大切なのは睡眠の質。「あー、よく寝た」という満足感がなければ、仕事や勉強のパフォーマンス向上も期待できないでしょう。睡眠の質をよくする方法としては、

・体内時計をリセットするため、朝に太陽の光を浴びる ・体内時計を目覚めさせるため、朝ご飯を食べる ・起きている時間は適度な運動(活動)をして、適度に疲労する ・食事は寝る(床につく)3時間以上前にすませる ・ゆっくりお風呂につかってリラックスし、汗をかき放熱させる ・寝床にスマートフォンやタブレットを持ち込まない

などがよく知られているのではないでしょうか。でも今回ご紹介するのは、それ以外のちょっと意外な快眠ルールです。

【快眠ルール1】:「夜中に目を覚ましても気にしない」

わたしたちの先祖は、まず4時間ほど寝て、1〜2時間は目を覚まし、さらに4時間寝ていたそうです。実は、これが自然な体内時計サイクルなのだとか。その睡眠と睡眠のあいだに、人々は何かを書いたり祈ったり、お茶を飲んだりして自由な時間を過ごしました。その間、脳にはリラクゼーションを促進するプロラクチンというホルモンが産生されるそうです。

しかし、電気が発達し、現代では “まとまった睡眠” が「善」とされるようになりました。心理学者のGreg Jacobs氏は、「夜間に目を覚ますことは、正常な人間の生理学の一部」だとし、「夜間に目覚めることで生じる不安が、かえって眠りを妨げる」と述べています。

この考えは、オックスフォード大学のサーカディアン・ニューロサイエンス教授であるRussell Foster氏も支持しており、夜中に目覚めて「眠れない!」とパニックを起こす人が多くいることを指摘し、「夜中に目覚めるのは昔の二分化された睡眠パターンに戻っているだけの話で、むしろ睡眠時間がひとまとまりに統合されているほうが不自然である」と伝えています。

夜中に目を覚ますのは、とても普通のことだと捉え、もしも目覚めたら不安を手放し、自分なりにリラックスして過ごしましょう。筆者のおすすめは、「適当に選んだ本の、適当なページを見開いてボンヤリと活字を追う」「水を少し飲んで窓の外の景色をボーっと眺める」です。

【快眠ルール2】:「寝室を涼しくする」

企業向けに睡眠のオーダーメイドソリューションを提供するニューロスペースの社長・小林孝徳氏は、「睡眠効率アップ(ベッドに入るとすぐに寝つけるなど)のために、寝室の温度を低めにすることをすすめています。

実際、ぬるめのお湯にゆっくりつかり、体を温めてリラックスしたあと、汗をかいて放熱することが睡眠の質を上げるとされているのは、深部体温(脳を含む内臓の体温)を低くするため。この、「寝室の温度を低めにする」という方法は、深部体温のリズムを効果的に生かすテクニックなのだそう。

したがって、寝る1時間ほど前に入浴しているあいだから就寝時まで、夏場であれば寝室の冷房などをきかせておく、冬場であれば部屋の温度に応じて暖房を切っておく、春や秋には(防犯上の注意をしながら)窓を開けて風どおりをよくするなど工夫して、少しだけ就寝時の寝室を涼しくしておきましょう。こうすることで、入浴後に寝床に入った際に、深部体温がスムーズに下がって質のよい眠りにつくことができるそうです。

【快眠ルール3】:「とにかくよく噛んで食事をする」

食事の際によく噛むことは、脳の満腹中枢を刺激するので食事量が適正になり、脳の働きもよくなるといわれていますが、実は快眠にも必要なのだとか。

アスカ鍼灸医院院長の福辻鋭記氏は、著書『東洋医学の先生が教える 「ぐっすり眠れない」が治る本』のなかで、噛む回数が少ないと消化に負担がかかり、朝の目覚めが悪くなると述べています。また、このようにも説明しています。

食べ物はよく噛むことで、十分に吸収されて効率よく消化されるのです。胃腸への負担が少なくなり、疲れにくい体質になります。そして、少ない睡眠時間でも疲れが十分にとれるようになり、朝も快適に目が覚めるようになります。

(引用元:福辻鋭記著(2017),『東洋医学の先生が教える 「ぐっすり眠れない」が治る本』, PHP研究所.)

たとえば仕事の合間の資格勉強などで、どうしても睡眠時間を削らなければならないとき、食事の際によく噛むことを意識するといいでしょう。福辻氏によれば、最低でも50回噛むのがいいそう。食べ物は、噛めば噛むほどおいしさが増すといわれるので、ぜひ楽しみながらよく噛んで睡眠の質を上げてくださいね!

*** Forbesに寄稿しているAlice G. Walton氏によると、かのトーマス・エジソンはこう語ったそう――「睡眠は、原始時代から受け継がれた、嘆かわしいほどの時間の無駄だ」――偉大な人物の発言だからといって、必ずしも万人に有益な名言とはならないようです。

(参考) Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)|重大事故の背景に「睡眠不足」 研究で明らかに リセマム|寝る子は受かる!? 石田勝紀氏と枝川義邦氏に聞く学習効率と睡眠の関係 カラパイア|寝つきが悪い?眠りが浅い?もしかしたら寝る姿勢のせいかもしれない。試してみたい睡眠時のベストな姿勢 オムロン ヘルスケア|はじめよう!ヘルシーライフ|睡眠が健康に与える影響――睡眠は「時間」も大事だが「質のよさ」がもっと重要! Higher Perspective|Try these sleep positions if you wake up in the middle of the night NIKKEI STYLE|ヘルスUP|デキる人の睡眠パターンを身につける3つのコツ 福辻鋭記著(2017),『東洋医学の先生が教える 「ぐっすり眠れない」が治る本』,PHP研究所.

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