嫌いな相手とうまく付き合うには、まず「本を貸して」とお願いするのがいい。

反りが合わない人が全くいないという環境は、この世に存在しません。だからこそ、いま少し「嫌い」を理解してみてはいかがでしょう。嫌いの正体を探り、嫌いな人とうまく仕事をするコツを紹介します。

嫌いの正体1「認知的不協和」とアドバイス

【嫌いと言えば嫌いになる。嫌いと言わなければ嫌いにならないかも?】

『嫌いな人とどうつきあうか―より良い人間関係を築く心理学』の著者で、心理学者の斉藤勇氏は、たとえば友人に冗談で悪態をついてしまった場合、すぐに「冗談、冗談」と修正するようすすめています。

その理由は、そうしないと「悪態」を正当化しようとする心理メカニズムが働き、本当に相手を嫌いになってしまうから。アフターフォローは相手を傷つけないためだけではなく、自分自身の奇妙な心理メカニズムを働かせないためでもあるのです。

この心理メカニズムを説明してくれるのは「認知的不協和」という社会心理学用語。アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーによって提唱された、複数の矛盾する認知を同時に抱えたときに覚える不快感を指します。人はその矛盾を解消するために、自身の態度や行動を変更してしまうのだとか。

つまり、「わたしはこの人に悪態をついた」→「わたしはこの人と仲がいい(矛盾)」→「わたしはこの人が嫌いである(矛盾解消)」になってしまうということ。「嫌い」の発端に、全く根拠がないという可能性もあるわけです。

嫌いの正体2「期待感の喪失」とアドバイス

【期待しすぎるから嫌いになる。期待しすぎなければ嫌いにならないかも?】

『ひとを“嫌う”ということ』の著者で哲学博士の中島義道氏によれば、「嫌い」という感情を抱く原因は、以下の8つに分類できるそう。

(1)相手が自分の期待に応えてくれない (2)相手が自分に危害・損失を加える恐れがある (3)相手に対する嫉妬 (4)相手に対する軽蔑 (5)相手が自分を軽蔑している気がする (6)相手が自分を嫌っている気がする (7)相手に対する絶対的無関心(邪魔だと感じる) (8)相手に対する生理的・観念的な拒絶反応

見てのとおり、最後の8番は「嫌い」の完成版。そして、ほとんどのケースは1番目の「期待に応えてくれない」から始まるのだとか。つまり、「嫌い」のもとをたどっていくと、「好き」だった可能性があるということ。逆をいえば、応えてもらえないような期待をかけなければ、「嫌い」は完成しないということです。

嫌いの正体3「鏡の法則」とアドバイス

【「嫌い」は鏡に映っている。自分を変えてみるのもいいかも?】

ものすごく忙しくて不機嫌なとき、同僚のAに話しかけたら愛想が悪いので余計イライラした。またある日、上機嫌で同僚のAに話しかけたら、笑顔で返してくれたので嬉しかった――そんな経験ありますか?

中国・唐代の正史『新唐書』には、「人を以(もっ)て鑑(かがみ)と為す」とあるそう。他人の言行を見て、自分の言行を正すことを意味します。

また、プロコーチ・心理カウンセラー・作家の野口嘉則氏は、ミリオンセラーとなった著書『鏡の法則』のなかで、「あなたの人生の現実は、あなたの心を映し出した鏡だ」と述べています。

鏡に映った自分の顔にゴミがついているとき、鏡をはたいてもゴミはとれません。自身の顔からゴミをとらなければ、きれいにならないわけです。これは対人関係も同じこと。

相手の態度が悪い・愛想がない・口調がキツイ・高圧的だと感じたとき、もしかして、自分も同じような態度をとっており、それが相手にも反映されていた、なんてこともあり得るわけです。

「嫌いな人」とうまく仕事をするコツ

嫌いの正体は、なんとなくわかっていただけたでしょうか。これらを意識しておくだけで、冷静かつ客観的になれるので、「嫌い」という感情に振り回されにくくなるはずです。そのうえで、「嫌いな人」とうまく仕事をするコツを覚えておきましょう。ネビンズ・コンサルタント社長の、Mark D. Nevins 氏が示した6つのアドバイスを紹介します。

1.対立の原因・自分の反応を熟考する

誰との交流にも潜在的な価値があると Mark D. Nevins 氏はいいます。たとえ関係の構築が困難でも、学ぶことはできるということ。そのためには、対立の原因から目を背けず、それに対し自分がとった言動についてよく考えるといいのだとか。その行為は、自分のネガティブな反応をコントロール可能にする、客観性をもたらしてくれるでしょう。

2.相手の考え方を理解するよう努める

なぜこの人は、こんなふうに振る舞うのか? 動機は何なのか? と、相手の視点に立って考える時間を設けることで、意外にも「お互いの目標は本質的に対立しない」などと理解できるそう。そうなれば敵だったはずの相手が、同志にとって代わるはず。

3.相手の批評家・競争相手にならない

競争相手としてではなく、協業相手としてのスタンスに移行することが、他者とうまく働くには重要だと Mark D. Nevins 氏はいいます。その戦術のひとつが、相手を巻き込んでしまうことなのだそう。自分の気持ちや弱点をさらけ出し、それを受けて相手にも手の内をさらけ出してもらい、それぞれが解決したい問題を共有できれば、協力を念頭に関係を構築しなおせる可能性があります。

4.積極的にどんどん質問する

オープンエンドな質問をして、相手の答えに辛抱強く真剣に耳を傾けるよう Mark D. Nevins 氏はすすめています。そうすることで、たくさんの会話が生まれるので、一方的かつ断定的な解釈や判断を避けられるはずです。

5.スタイルの違いを理解し受け入れる

誰もがそれぞれのスタイルを持っているので、その違いを知ることで、それぞれのアプローチに適応しやすくなるのだそう。たとえば内向的な人と、外交的な人がお互いを嫌っている場合、相手を理解しさえすれば、その相手が自分に欠けている部分を補ってくれる存在だと気づくことができます。

6.嫌いだからこそ助けを求める

助けを求めれば、難しい人間関係を改善することができると Mark D. Nevins 氏はいいます。アメリカ独立に多大な貢献をした18世紀の政治家、ベンジャミン・フランクリンも、険悪になった相手に「本を貸してくれ」と頼み、良好な関係に変えてしまったといいます。

助けを求めたほうにも、求められたほうにも「認知的不協和」がいい具合に働き、「助けを求めている・助けている」→「わたしたちは仲間である」と変化するかもしれません。

*** 嫌いの正体3つと、「嫌いな人」とうまく仕事をするコツ6つを紹介しました。「嫌い」という感情を客観視でき、うまく対応できるといいですね。

(参考) DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|HBR.ORG翻訳リーダーシップ記事|嫌いな人と仕事をうまくやる6つのアドバイス ダ・ヴィンチニュース|嫉妬、軽蔑、無関心…、人が人を嫌う8つの要因 Study Hacker|「敵意むき出し人間」がコロッと味方に変わる魔法の心理テク。“あの頼みごと” が効果的だった。 漢字ペディア|言葉|ひとをもってかがみとなす 斉藤勇著(1994),『嫌いな人とどうつきあうか―より良い人間関係を築く心理学』,PHP研究所. 野口嘉則著(2006),『鏡の法則 人生のどんな問題も解決する魔法のルール』,総合法令出版.

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