部下が、後輩が、指示を聞いてくれない……。
そんな経験はないだろうか。 いい加減にしろ、怠け者め。ちゃんと仕事しろ。
悪態をつきたくなる気持ちもわかるが、ちょっと待った。 ひょっとして、あなたの指示が悪かった、ということはないだろうか。
いやいやそんなことはない。しっかり余裕を持って事前に指示を飛ばしたぞ。 そう思うかもしれないが、仕事を完璧に把握している側と、それを任される側では、理解度にかなりの差があるものなのだ。
今日は行動分析学の観点から、ほんとうに人を「動かせる」指示の出し方をお教えしよう。
目標の立て方、間違ってませんか?
部下や後輩に指示を出すとき、必ず目標を提示するはずだ。
しかし、その目標の設定次第では「動かせない」指示になってしまう。 たとえば、進捗状況を報告しないメンバーがいたとき、ただただ「”ほうれんそう”をしっかりやれ!」と言うだけでは、何も改善しない。
まず、そのメンバーは「①連絡の方法がわからない」かもしれないから。 メールですればいいのか、チャットですればいいのか、GoogleドライブにレポートとしてUPすればいいのか。どれですればいいのかがわからない。
もしくは、「②連絡したつもりになっている」ことも考えられる。ミーティングの時にちらりと雑談で挟んだ「いや〜最近なかなか進まないんですよね〜」なんていう一言で連絡した気になっていることも考えられるのだ。
そう、それも全てあなたの「”ほうれんそう”をしっかりやれ!」という超あいま〜いな指示のせい。具体的な行動を指示しなければ、人を「動かせない」のだ。
人を動かすための”MORSの法則”
では、具体的にするにはどうしたらいいのか。 まず、何をすればいいのか、という具体的な「行動」を明示する必要がある。
「”ほうれんそう”をしっかりやれ!」というのは曖昧すぎて「行動」とは呼べない。「もっと仲間同士でコミュニケーションをとって」「指示されたことしっかりやって」なんていうのも「行動」ではない。曖昧すぎるからだ。
では、何が「行動」と呼べるのだろうか。 “MORSの法則”という言葉をご存知だろうか。「行動」の定義を簡潔に示したものだ。
・Measured(計測できる=数値化されている) ・Observable(観察できる=誰が見てもその行動だとわかる) ・Reliable(信頼できる=客観性があり、誰がやっても同じ行動になる) ・Specific(明確化されている=誰が何をどうするかが明確である)
(参考:石田淳|短期間で組織が変わる行動科学マネジメント)
そう、この4つの全ての条件を満たさなければ「行動」とは言えず、指示通り人が動かせなくても仕方ないのだ。
この条件にあてはめてみると、いかに「”ほうれんそう”をしっかりやれ!」という指示が曖昧かがよくわかる。
もう一度、MORSの法則に従ってどんな指示を出せばよかったのか考えてみよう。
ここまで変わった「動かせる」指示
「”ほうれんそう”をしっかりやれ!」 ではなく、
「三日以内に次の企画案を、ドライブのフォルダ「◯◯」にレポートの形でUPしてくれ。もし間に合いそうにない場合には、社内メールアドレスに、その旨を連絡してほしい。」
の形にすればいいのだ。 三日以内、という数値化がなされ、誰が見てもその行動だとわかるし、客観的な指示を心がけている。さらに、何をどうすればいいのかも明確だ。
指示というのは、このようにして飛ばす必要がある。 ここまで具体的に指示を出せば、きっと人を「動かせる」はずだ。
参考 石田淳|短期間で組織が変わる行動科学マネジメント 石田淳, temoko|マンガでよくわかる教える技術