『筋トレ』と聞いて、皆さんはどんな印象を思い浮かべるでしょうか。「身体を強化したい人がやるもの」「健康を維持したい人がやるもの」など、自分にはあまり関係がないと思っている人も多いかもしれませんね。
でも、「筋トレを定期的に行なっている人は、そうでない人よりも脳が活性化されている」と知ったらどうでしょう。実は筋トレには、脳を鍛える効果もあるのです。
そこで今回は、筋トレと脳の関係性について紹介します。筋トレは、仕事や勉強にも活きてくるものなのですよ。
筋トレは記憶力を向上させる
米国のジョージア工科大学の研究によると、筋トレを20分間行なうと、記憶力が10%ほど向上することがわかっています。
同大学の実験では、46人の被験者を対象にして、まずはパソコンの画面上に表示される90枚の写真を見てもらいました。その後、被験者を2つのグループに分け、片方には脚の筋肉に負荷をかけながら曲げたり伸ばしたりする筋トレに50回取り組んでもらい、もう片方には同じ時間を椅子に座ったまま過ごしてもらったのです。
そして2日後、前回見せた90枚に加えて、新しい写真90枚を混ぜた合計180枚の写真を全被験者に見てもらい、どの写真を覚えているかを答えてもらいました。その結果、筋トレを行なわなかったグループが平均して50%の写真を覚えていたのに対し、筋トレを行なったグループは、10%増の60%もの写真を覚えていたのです。
いったいなぜなのでしょうか。それは、筋トレを行なうと、記憶の定着を促す「ノルエピネフリン」という神経伝達物質が分泌されるからなのです。勉強など何かを鮮明に記憶・暗記したいのであれば、その直後に筋トレを行なうのが効率的ですよ。
筋トレには抗うつ効果も
実は、筋トレにはうつ症状を軽減する効果があるという研究も発表されています。スイスのベルン大学の研究によれば、筋トレなどの運動を伴う身体活動は抑うつ症状の軽減に有効で、抗うつ剤を投与するのと似た作用があるとのこと。
筋トレをすることによって、脳内伝達物質である「セロトニン」の分泌量が増えるのですが、このセロトニンが、落ち込んでいる気分を盛り上げて幸せを感じさせてくれます。それにより、減退していた食欲や睡眠欲が回復されるのです。ちなみに先ほど紹介した「ノルエピネフリン」にも、記憶の定着を助けるだけでなく、思考の柔軟化や意欲増大といった働きがあるのだそう。
勉強や仕事の成果が振るわない……。忙しすぎて疲れ気味……。そのようなときに筋トレをすれば、鬱屈とした気持ちを吹き飛ばして意欲的になることができそうですね。
自宅で気軽に取り組めるおすすめの筋トレ
ここまで、筋トレと脳の関係について説明してきました。記憶力の向上や抗うつ効果など仕事や勉強に役立つさまざまなメリットがあるということを知ったからには、筋トレを日常生活に取り入れないなんて手はありませんよね。そこでここからは、自宅で気軽にできる筋トレをご紹介していきましょう。
【腕立て伏せ】
最もメジャーな筋トレではないでしょうか。身体ひとつさえあればどこでも取り組める、非常にシンプルな筋トレでもあります。しかしその効果はきわめて高く、鍛えられる筋肉だけ見ても、胸、腕、背中、肩、体幹、下半身と多岐にわたります。そして腕立て伏せの効果で最も過小評価されてしまっているもののひとつが、上腕二頭筋と背中の筋肉のストレッチ効果。
身体を下げて腕を伸ばした姿勢に戻ると、今度は上腕にある上腕二頭筋がストレッチされます。これにより、怪我を防ぐのに大切な身体の柔軟性が改善される効果を見込めるだけでなく、伸縮性のある筋肉を手に入れることで、より健康的で魅力ある外見が作られていくことにもつながるのです。
【レッグレイズ】
下腹部のたるみを気にする方も多いかと思いますが、腹直筋を鍛えて下腹部の余分な脂肪を燃やすのに最適の筋トレです。聞き慣れない名前ですが、やり方はいたって簡単。
- 仰向けになる
- 両脚を床から10センチほどの高さで固定する
- 息を吐きながら脚を上げていく
- 脚の角度が45度になったところで5秒間停止する
- 息を吐きながら元に戻していく
この動作を15回繰り返しましょう。ゆっくりやるほど、筋肉に適切な刺激を与えられますよ。
*** 筋トレには、身体を鍛えるだけでなく脳を鍛える効果もあるのです。記憶・暗記を伴う勉強や作業のあとには、ぜひ筋トレに取り組むことをおすすめします。
(参考) Georgia Tech|Lift weights, improve your memory Study finds that one short bout of resistance exercise can enhance episodic memory Mirko Wegner, et al (2012) “Effects of Exercise on Anxiety and Depression Disorders: Review of Meta- Analyses and Neurobiological Mechanisms,” CNS & Neurological Disorders - Drug Targets, Vol.13, No.6, p.1012 University of Bern (2014) “Sport, physical activity help against depression,” ScienceDaily