人には “得意な感覚” がある。NLP心理学から考える、「優位感覚」を利用したコミュニケーション技法。

私たちは、五感を使って生活していますね。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚。これらの感覚、実は人によって使いがちなものが違うことはご存じですか?

同じ人間だから同じように感じるのでは? と思うかもしれませんが、よく考えてみてください。例えばスケッチをするとき、モデルに忠実に描ける人もいれば、そうでない人もいます。絶対音感を持っている人も、持っていない人もいます。気温の変化に敏感な人、いち早く異臭に気づく人、ワインの味の違いがわかる人。優位に働いている感覚は人それぞれ違うことがわかります。

優位感覚によるタイプ分類を、NLP心理学では「VAKタイプ」と言います。各タイプの優位感覚の違いは、すなわち情報のインプット方法の違い。私たちはVAKのどのタイプであるかによって、情報の理解の仕方が異なっているのです。

職場で上司や同僚とのコミュニケーションがうまくいかずに困っているなら、「相手のVAKタイプを知る」というアプローチをしてみてはいかがでしょう。相手のタイプがわかれば、「どう伝えれば理解してもらえるか」「どうすればスムーズに意思疎通ができるか」がわかるというわけです。コミュニケーションの裏技とも言えるこのVAKタイプについて、詳しく紹介しましょう。

V・A・K、各タイプの特徴

VAKタイプとは、感覚を3つに区分した呼び方。どの感覚が優位に働くかによってその人のタイプが決まります。すなわち、

・Vタイプ=視覚(Visual)タイプ ・Aタイプ=聴覚(Auditory)タイプ ・Kタイプ=身体感覚(Kinesthetic ※触覚・嗅覚・味覚)タイプ

です。VAKの各タイプでは、感覚の優位性の違いによって、インプットだけでなくアウトプットの仕方も変わってきます。各タイプの特徴を見ていきましょう。

●V(視覚)タイプの特徴

〈インプット〉 ・理解方法:図、映像。 ・聞き方:話し手をよく見る。 〈アウトプット〉 ・視線:上方に向きやすい。 ・話し方:比較的早口。頭に描いているイメージを表現しようとするため、よく手が動く。話の展開が早い。前のめり。呼吸が浅い。 ・使う言葉:視覚に関する語彙。「話が見えない」「イメージとしては」「今後のビジョンは」「まだぼんやりしている」「未来は明るい」「視点を変える」など。 〈その他〉 ・デザインや外見で判断することが多い。 ・物事を絵で記憶する。

●A(聴覚)タイプの特徴

〈インプット〉 ・理解方法:音、言葉。 ・聞き方:話し手をあまり見ず、耳を傾ける。 〈アウトプット〉 ・視線:左右に動きやすい。 ・話し方:論理的でわかりやすい。うんちく好き。腕組みをしやすい。独り言が多い。胸全体で呼吸をする。 ・使う言葉:聴覚や言葉に関する語彙。「何を言っているかわからない」「いい響きだ」「リズムが悪い」「うるさい」「聞き捨てならない」など。また、理論や定義、格言や知識などの引用、擬音語、感嘆詞。 〈その他〉 ・音楽やおしゃべりが好き。 ・雑音があると集中できない。 ・人の声をよく覚えている。

●K(身体感覚)タイプの特徴

〈インプット〉 ・理解方法:触感、におい、味などの体感。 ・聞き方:何かに触りながら。話の情報量が多いとたまについていけない。 〈アウトプット〉 ・視線:下方に向きやすい。 ・話し方:話す速度と動作は比較的ゆっくり。感情や気持ちを身振り手振りで表現しようとする。猫背になりがち。お腹で深い呼吸をする。 ・使う言葉:感覚的な語彙。「話が掴めない」「いい感じ」「手応えがある」「気持ちいい」「気持ち悪い」「腑に落ちる」など。また、形容詞・形容動詞。 〈その他〉 ・人の近くにいるのが好き。 ・居心地の良さを大事にする。

あなたに当てはまるタイプはありましたか? ちなみに筆者は、完全にVタイプです。頭に描くイメージを手で表現しながら早口で話すことが多く、視覚情報を覚えるのが得意です。さらに、VAKタイプを知って初めて、自分が何かを説明するときに「イメージ」という言葉をよく使うことに気づきました。

VAKタイプをコミュニケーションに活かす

このVAKタイプを、職場での実際のコミュニケーションに応用してみましょう。以下の会話文を読んでみてください。

上司「新しいプランについて、君はどう見ている?」 部下「うーん、いい感じだと思いますよ」 上司「感じ……。具体的にはどういうイメージ?」 部下「イメージ? なんかこう、グッとくる感じですかね」 上司「……いや、だからイメージとしては?」 部下「えっと、どういうことですか?」

噛み合っていませんね。なぜでしょうか? 2人の使っている言葉に注目してください。上司は「どう見ている?」「イメージ」という視覚に関する言葉、部下は「いい感じ」「グッとくる感じ」という感覚的な言葉を使っています。つまり、上司はVタイプ部下はKタイプということです。タイプの違う2人は、「新しいプラン」に対する評価の仕方がそもそも違います。それぞれがそれぞれの評価軸で話をしているために、会話が食い違ってしまうのです。

ここで、部下が「上司はVタイプである」ということに気づいたらどうなるでしょうか。Vタイプの上司は、視覚的な評価を求めてきます。つまり、部下が自分の意見を上司に理解してもらう最も適当な方法は、図や映像にできるような説明をすること。自分の「感覚」ではなく、上司が理解できるよう「イメージ」で語るべきなのです。

では、部下が、上司がVタイプであることを意識した場合の会話を見てみましょう。

上司「新しいプランについて、君はどう見ている?」 部下「そうですね、成功は見えていると思いますよ」 上司「そうかそうか。はっきり見えているんだな?」 部下「はい。先は明るいですね」 上司「明るいイメージだな。それはいいぞ」

視覚的な言葉を使うことによって、上司が理解しやすい返答になり、コミュニケーションがスムーズになりました。

相手とのコミュニケーションをスムーズにしたいと考えているなら、相手が使う語彙や話し方の特徴をヒントとして相手のタイプを見極め、そのタイプに合った伝え方を心がけましょうVタイプの相手には、視覚的な言葉のほか、図を使うなど実際に視覚に訴えかける方法が有効です。Aタイプの相手には、できるだけ情報を整理し、論理的に順序立てて説明しましょう。Kタイプの相手に対しては、フィーリングを大切にし、形容詞・形容動詞を使って少なめの情報量で話してみましょう。

*** もちろんVAKタイプが全てではありません。人は五感全てを使って生活しています。VAKタイプはいわば「使いがちな感覚」です。しかし、自分や相手の「使いがちな感覚」がわかると、自分の感覚世界から一歩踏み出して、相手の理解方法に歩み寄ることができます。VAKタイプを活かしたコミュニケーション、ぜひ実践してみてください。

(参考) Life&Mind|仕事や恋愛、そして人生に活用できるNLPのVAKとは Be Coaching 株式会社「コーチのコーチ」菊池達郎の公式ブログ|タイプ分け診断にご注意!NLPで扱うVAKの代表(表層)システムとは? NLP学び方ガイド|代表システム

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