苦手なことをついつい後回しにしまう。避けてつづけてやらないままになり、結局いつまでも苦手なまま。
文章を書くこと、大勢の前でのプレゼン、英語のスキルなど、ほとんどの人が何か克服したいものを抱えているはずです。苦手なものがなくなれば今よりも自信をもって仕事に取り組み、結果だって残すことができるでしょう。
そこでオススメしたいのが、ザイオン効果です。これを利用して苦手意識を払拭してしまいましょう。
苦手意識の原因とは
苦手意識を克服するために、まず「どうして苦手意識を持ってしまうのか」ということについて、考えてみましょう。
苦手意識は、あることに対してネガティブな印象を持ってしまうところから始まります。一度「苦手だな」とか「嫌いだ」と判断したものを、脳は受け入れにくくなってしまうのです。脳が「できない」と思いこんでいる状態なので、どうしても避けてしまいがちです。
そして、避ければ避けるほどさらに苦手意識が高まり、実際に苦手になっていきます。ですから、苦手だと感じるものには「敢えて」接触機会を増やしていくことが、解決の糸口になるのです。
たとえば、英語のテキストを数ページだけぱらぱらめくるとか、twitterで今日のひとことをつぶやいてみるとか、ちょっとしたことをやってみましょう。これがザイオン効果を引き出す方法です。
ザイオン効果とは?
ザイオン効果とは、1968年にアメリカの心理学者ロバート・ザイアンスによって報告された、何度も見ただけでその対象へ好感を持つようになる、というものです。
何度も同じテレビのCMを見ていると、その商品に好感を抱くようになるのが良い例ですね。毎日よく耳にする曲をいつのまにか好きになっていたという経験をしたことのある方もいるのではないでしょうか。
このザイオン効果を上手く活用すれば、勉強や仕事の苦手意識を克服することができます。
「英語が苦手」を克服する場合
まず、目につく場所に単語帳や文法の本などを置きましょう。本棚に立てておくのではなく、表紙が見える状態で置いておくとより目につきます。
そして、帰宅したらまず机の前に座るところから始めるのです。“机の前に座る”という行動から入ることで、頭も勉強しようという気持ちが生まれやすくなります。最初は教科書をパラパラめくる程度で構いません。とにかく毎日少しでも触れることが大切なのです。
あるいは、かばんにいつも単語の本を入れておいて、電車に乗ったら5ページだけ目を通すと決めておくとか、英単語アプリをスマホの1ページ目に置いておくとか、短い時間でもいいので目に触れる「回数」を増やす工夫をしてみるとよいでしょ。
少しずつ触れることでザイオン効果が働き、「おもしろいかも!」と思えるようになってくるでしょう。繰り返し勉強し、理解を深めることで勉強が楽しくなることがありますよね。
文章を読むことが苦手な場合
勉強と同様で、本に限らず、新聞や雑誌など何でもいいので毎日少しでも読んでみましょう。量は関係なく、1日1ページからでもいいので“毎日読むこと”が大切です。
トム・クルーズやオーランド・ブルーム、スティーブン・スティルバーグなどの名だたる俳優が、文字の読み書きに困難を抱える障害があると公表しています。 オーランド・ブルームは母親から本を50冊読めたらオートバイを買ってもらえる、と言われて読書に励んだそう。そこから読書が好きになりました。
脚本を読んだりセリフを覚えたり、文章を読むことが避けられない職業の人が、文章を読むのが苦手なのに成功しているのは驚きですよね。たとえ苦手であっても、毎日少しでも努力することで普通の人を凌駕した才能を発揮することがあるのです。
プレゼンをするのが苦手な場合
新しい企画をプレゼンしてもいつも採用されない。 そんな人は相手へのザイオン効果を利用して、プレゼンの前の売り込みを大切にしてみてください。
プレゼンの場で初めて目にする企画より、事前に資料をもらっていたプレゼンの方が好感度が上がるそうです。営業マンが、最初から面会するのではなく、事前に渡した資料に写真付きの名刺を入れておいたり、一度で諦めず何度も何度も同じところに営業に行くのは、意図していなくてもザイオン効果が得られています。
苦手を克服するには自分で何回も練習してプレゼンを好きになるだけではなく、相手にも仕掛けるのが一つの手です。
*** 実はそんなに苦手ではないことでも、思い込みで苦手にしていることが多いかもしれません。苦手だからと言って遠避けるのではなく、何度も少しでも接触してみるというのが苦手を克服する近道ですよ。
(参考) 植木理恵 (2012), 『植木理恵のすぐに使える行動心理学』, 宝島社. PRESIDENT Online|苦手を得意に変える1万時間の法則