学生時代の試験とは異なり、私たちビジネスパーソンは「正解がひとつに決まっていない」課題と日々向き合わなければなりませんよね。企画を成功させるためには何が必要なのか、利益率を上げるためには何をしなければいけないのか、数字が停滞しているのはいったい何が足りないからなのか……。
とはいうものの、いざ会議などで意見を求められたとき、頭の中の思考がなかなかまとまらなかったり、言葉でうまく説明できなかったり、という人も数多くいらっしゃるのではないでしょうか。それはもしかしたら「考えているつもり」になっているからかもしれませんよ。
そこで今回は、この「考えているつもり」を脱却し「自ら考えられる人」になるための方法をご紹介します。
多くのビジネスパーソンが陥りがちな「考えているつもり」
たとえば会社の会議の場で、以下のような経験のある人はいないでしょうか。
——その場で提案された企画書に目を通したものの、「なんかよさそう」という漠然とした感想しか思いつかない。何がよいのか考えてみたが抽象的なイメージばかりが頭の中で空転するばかりで、「具体的にどこがよいと思いますか?」と尋ねられたものの言葉に詰まってしまった。——
意見を発信することが要求されるビジネスの世界では、致命傷になりかねないミスですよね。たとえ、いくら頭の中で一生懸命思考を巡らせていたとはしても、アウトプットがままならなければ、それは単に「なんの成果もない」状態。相手はあなたの頭の中を覗くことはできませんから、相手から見たらあなたは「考えていない人」ですし、あなたが考えていると主張したところで、それはあくまでも「考えているつもり」に過ぎないのです。
上記を踏まえて私たちは、頭の中にあるアイデアや意見を、しっかりと目に見える形で外に引き出してあげなければならないのです。
「考える」とは
博報堂やボストン・コンサルティング・グループなどで活躍し、現在はAugust-a株式会社代表としてコンサルティング業務などに携わる津田久資氏は、「考える」ことについて次のように述べています。
人が考えているかどうかを決めるのは、その人が「書いているかどうか」である。
(引用元:ダイヤモンド社書籍オンライン|秀才タイプにありがちな「考えたつもり病」を避けるには?)
例えば発明王として名高いトーマス・エジソン。彼は書くことによって考える人であり、生涯にわたってじつに3500冊ものノートを書きつぶしたといわれています。あるいは音楽、絵画から数学、物理学に至るまで幅広い分野において顕著な業績を残した万能人レオナルド・ダ・ヴィンチも、膨大な数のノートに自身の大量のアイデアを記しています。
これまでの歴史を振り返ってみても、革新的な発想に長けた偉人たちの多くが、この「考えを書く」という習慣をとても大切にしています。私たちが考えるためには、やはり「書く」というのがひとつ重要になってくるのですね。
とにかく紙に書き出そう
「考えているつもり」を卒業するためには、何かを考える際に、頭の中に浮かんだものをとにかく紙に書き出す習慣をつけましょう。
その際、それはあくまで自分用のメモですから、無理に整った言葉をひねりだす必要はありません。また、はじめのうちはもしかしたらただの単語の羅列になってしまうかもしれないでしょう。
しかしそれを続けていくと、次第に思考が整理されてくるのが実感できるはず。頭の中にふわふわと浮かんでいただけの断片的なイメージが言葉として同じ1枚の紙の上に乗ることで、考えの全体像が可視化される瞬間が訪れることでしょう。
また脳科学的な観点から見ても、手を使って何かを書くという動作は、思考力に関わる前頭前野を活性化させる効果があるのだそう。そのような意味でも、何かを考える際に「とりあえず紙に書き出す」ことは大いに理に適っているのですよ。
「考える力」をつけるためのさらなる訓練
それではここからは、実際に「考える力」をつけるための方法をいくつかご紹介しましょう。「考えを紙に書き出す」は大前提として、日ごろから以下のようなことも実践しておけば、あなたの「考える力」の向上に役立つはずです。
1. 日ごろから文章を書く
「考える力」を鍛えるためには、やはり普段から自分の思考を言葉にする練習が必要です。そこで、日記やブログ、あるいはSNSなどを利用して、自分の文章を発信することをおすすめします。
その際は、単にひとことで終わらせるのではなく、“誰かに自分の考えを伝える” ことを意識しましょう。起承転結に沿って書く、5W1Hの要素を満たすように書くなど、“考えながら文章を綴る” ことを忘れないくださいね。
2. 友人と議論する
意見の発信を求められるのがビジネスの世界ですから、議論は訓練にうってつけといえます。そこで、たとえば身近な友人や恋人などと、何か特定のトピックについて議論してみてはいかがでしょうか。
最近話題になっているニュースなど、テーマはなんでもけっこうです。相手の意見に耳を傾けながら、自分の持っている考えを誰かと戦わせることで、考える力は育っていきますよ。
3. 「それはなぜ」を100字でまとめる
例えば電車の車窓から外を眺めているときに、ふと「今日の空はきれいだなあ」と思うことってありますよね。そのようなときに、その感情に対して「なぜそう思ったのか」の理由を100字以内にまとめる訓練をしてみましょう。
抜けるような青空だったため美しく感じたのかもしれませんし、あるいは自分にちょっといいことがあったために、目に映る風景が感動して見えたのかもしれません。このように「なぜ」「どうして」と自問していくことで、思考が深まるのはもちろん、語彙力の増加にもつながるはずです。
*** 以上を実践して「考えているつもりの人」を卒業し、「しっかりと考えられる人」になりましょう!
(参考) ダイヤモンド社書籍オンライン|秀才タイプにありがちな「考えたつもり病」を避けるには? Wikipedia|トーマス・エジソン Wikipedia|レオナルド・ダ・ヴィンチ 記憶の玉手箱|前頭前野の活性化で頭が良くなる! 心の欠片|伝えたいことを上手く伝えられないことで悩んでいる人に役立つ「コミュニケーション能力」や、「言語化する能力」を高める方法!認知改善! アット・タイプ|インターネットで思考力が低下?考える力をつける7つの習慣 ティーシーエム|思考言語化で「考えているつもり」から卒業しよう