ノマド。ノマドワーカー。 最近ではあまり聞かなくなりましたが、その自由なワークスタイルに憧れた人も多いのでは?
でも実際のところ、多くの会社ではオフィスを設けて机を並べ、互いの仕事を横目で見ながら勤務しています。一体これはなぜでしょうか。
それは、他人の仕事を見ながら自分も一緒に仕事をする、という行為に高い科学的効果があったから。今日は脳科学の観点から、「みんなで一緒に仕事する」ことの利点を考えてみましょう。
他人は自分の鏡?ミラーニューロンとは
ノマドをしていると、他人の仕事ぶりは目に入りません。当然ですよね。ひとりぼっちで仕事をするのですから。
人間は、他人の影響をとても受けやすい動物です。
人間の脳には「ミラーニューロン」と呼ばれる神経があることをご存知ですか?これは、いわば他人の行動に「共感する」神経。たとえば私たちの友人が豆をつまみ上げるのを見たとき。この時、自分の脳内でも、豆をつまむための反応が起きているんだとか。
(参考:村上郁也|イラストレクチャー認知神経科学)
他人の行動を見るだけで、あたかも自分が行動しているかのような働きをするんですね。 人間は、社会性を高度に発達させることで生態系の頂点に立ちました。 人は「共感する動物」。非常に周りに影響されやすいのです。
脳の仕組みから考える、みんなでやることの利点
ノマドワーカーは、こうした周りの影響を受けることができません。良い意味でも悪い意味でも、自分の行動のみが指標であり、結果なのです。
同僚が近くにいるオフィスを考えましょう。同僚がミスをしてしまったら、どうでしょうか。自分も同じように悔しく感じ、自分はミスしないぞ、と慎重になるのでは?同僚が成功して上司に褒められたらどうでしょうか。自分もうれしく感じるのはもちろん、負けてられないぞ、とやる気が湧いてくるはずです。
みんなで一緒に仕事をしているとき。ポジティブなことが起こったとしても、ネガティブなことが起こったとしても、自分には良い影響を与えるのです。それが、人間が長い歴史の中で発達させてきた脳のしくみであり、強みなのです。
仕事だけじゃない。「ソロ活」に黄信号
これは何も、仕事だけに言えることではありません。何かを達成したいとき。高いパフォーマンスを維持したいとき。複数人数で集まり、互いの様子を見ながら作業するということは非常に良い影響を与えます。筆者が言いたいのは、「共同作業」ではありません。何も一つのことを一緒にやる必要はないわけです。
ひとりで楽しむこと、何かを味わうこと。それ自体は非常にいいことですが、仕事のときはちょっと待った。みんなでやるのも悪くありませんよ。
参考 村上郁也|イラストレクチャー認知神経科学 Botvinick, M., & Cohen, J. (1998). Rubber hands' feel'touch that eyes see.Nature, 391(6669), 756-756.