大坂なおみが冷静さを保ち続けられたワケ。心を強くしたい人におくる「アウェーの心得」

全米オープン女子シングルス決勝で、世界ランク19位の大坂なおみ選手が、元世界1位の女王セリーナ・ウィリアムズ選手に勝利しました。日本勢初の快挙を成し遂げた大坂選手に日本中が熱狂していますが、完全アウェーという厳しい状況を真摯な態度で乗り越えた大坂選手に対し、世界中からも称賛の声が続出しているのだとか。今回は、大坂なおみ選手に学ぶ「アウェーの心得」を探ります。

全米オープン女子シングルス決勝で起こったこと

「レッツ・ゴー・セリーナ」という合唱が巻き起こったという圧倒的なアウェーの中で、とにかく気を引き締め、冷静かつパワフルなプレーを続けた大坂選手。ラケットを破壊したり、主審に罵声を浴びせたりと大荒れのセリーナ・ウィリアムズ選手を前にしても、それがブレることはありませんでした。

しかし、セリーナ・ウィリアムズ選手がテニス界のスーパースターであることから、表彰式では観客が大坂選手に大ブーイング。全米テニス協会の会長も「私たちが求めた結末ではなかった」と述べたそう。

大坂選手の強さを秘めた奥ゆかしい対応

そうした厳しい状況の中でも、大坂選手は真摯で実直な態度を一貫し、世界の人々を魅了しました。

とにかく「走らないといけない」と足を動かし、優位に立っても気を引き締めなおし、周囲が騒然としても「自分に集中」と心を落ち着かせたそう。そのため、彼女はウィリアムズ選手の猛烈なパワーに押されることなく返球し続け、主導権も握りました。

そして、多くの人々の心に刻まれたのは、勝利したときの周囲に配慮したサンバイザーを目深くかぶる姿や、相手への敬意を示したネット越しの一礼、かつ表彰式で帽子のツバを下げ涙を一筋流す姿でした。しかも大坂選手はこのとき、セリーナ・ウィリアムズ選手に応援する人々に対し「こんな結果になってごめんなさい」といったのです。

もちろん、この言葉は奥ゆかしさだけではなく、複雑な感情もあったのでしょう。のちに彼女はアメリカのテレビ番組で「少し悲しかったです」と正直な気持ちを伝えています。

ブレない大坂なおみ選手に世界中の反応は?

そんな大坂選手に対し、世界中から称賛の声が集まっています。「ナオミは私の新たなヒーロー」「なんて品格なんだ」「ナオミは謙虚さの定義ね」「私はナオミ・オオサカを称賛したい」といった言葉がツイッターなどでささやかれているといいます。

おまけに、ニューヨーク・タイムズ紙では「怒りとブーイングと涙が大坂なおみの素晴らしい勝利を曇らせた」と解説しており、ニューヨーク・ポスト紙は、「キャリアが始まったばかりの若い大坂選手は、コートの内外で闘志や決意、成熟ぶりを示した」と称賛しているそう。

なぜ大坂選手はアウェーをホームに変えることができたのか

結果的に大坂なおみ選手がアウェーをホームに変えることができたのは、もちろんその愛すべきキャラクター性も大きな要因のひとつでしょう。パワフルなテニスプレーとは真逆の謙虚な姿勢や、愛嬌のある雰囲気には誰もが魅了されてしまいます。

しかし、それだけでは、多くの人々の心を動かすパワーにはなりません。

どんなに周囲がざわついても、それに惑わされなかったのは、ニューヨーク・ポスト紙が書いたとおり「闘おうとする意志」や「こうしようと決めた思い」があったから。

大坂選手はインタビュー等で「勝ちたかった」と、シンプルで控えめながら強い意志を覗かせています。また、全米オープン女子シングルス決勝で起こったさまざまな出来事に接し、どう感じたかというインタビューでは「とにかく我慢と思った」と告げています。

実は専属コーチのサーシャ・バイン氏と大坂選手の間では、「我慢」がキーワードだったそう。闘争心の塊で、強打の持ち主でありながら、それを扱うすべを知らなかった大坂選手のトリガーとなるようサーシャ・バイン氏が魔法をかけたのだとか。具体的には、パワフルな彼女の球なら「緩く打っても決まるので、全てを強打する必要はない」として、「我慢」をキーワードにしたそう。

そのキーワードが、大坂選手のメンタルも支えたというわけです。

大坂選手の「我慢」が何を引き起こしたのか

もしもあなたが転職先や配属先でアウェー体験をし、体調が悪くなるほどつらい思いをしているのであれば、当然ひたすら我慢するだけではなく、何かしらの対処を考えるべきです。したがって、ここでいう「我慢」は少しだけ違います。

大坂選手は観客のブーイング、対戦相手の怒りに直面し、「とにかく我慢と思った」といいました。それはつまり、心が折れそうになること、周囲のざわつきに心を掻き乱されること、闘争心がそがれること、決意が緩むことを、我慢したということなのでしょう。

感情に支配されそうなとき、ちょっと我慢すると何が起こるのか。それは、前頭葉の働きです。

不安、恐怖、怒りなどのネガティブな感情が起こると、脳の大脳辺縁系が活発に働きます。それをおさえるのが理性的な大脳新皮質の中にある前頭葉の役割です。しかし、この前頭葉は、瞬間的な感情には対応できないのだそう。したがって、少しのあいだだけ我慢すれば、前頭葉が働きだしてくれるのです。前頭葉は知能、人格、理性、言葉などを司る脳の領域。

つまり大坂選手は「我慢」を重ね、知性と理性で情動をコントロールしてプレイを貫いたわけです。結果を見れば、「勝ちたい」という強い情動を生かし、「悲しい」「不安」といった情動を引っ込めたのだと分かりますよね。

冷静に「いま自分にとって何が重要か」を判断し、決して周囲に惑わされることなく、目的に向かってつき進んだ大坂選手の姿は、その前後の謙虚な姿とあいまって彼女の品格を確立しました。

アウェーの心得とは

したがって、大坂なおみ選手に学ぶ「アウェーの心得」は、次の4つといえるでしょう。

1.強い目的と意志を持つ 2.謙虚で実直かつ真摯な態度を貫く 3.前頭葉が働きだすまでちょっと我慢 3.知性と理性で乗り越える

*** 株式会社メタップス代表取締役の佐藤航陽氏は、「アウェイの環境に飛び出してみて、初めて気がついたことばかり」と話します。得意なホームにばかり居続けることは、かなりの機会損失なのだとか。大坂選手が得たものを目の当たりにすると、この言葉がより心に響きますね。

(参考) スポーツ報知|大坂なおみがかわいそう 米メディア「全米テニスがしたことは恥ずべきこと」 日刊スポーツ|大坂快進撃支える2人のコーチ「我慢」がキーワード - テニス ハフポスト - 日本や世界のニュース、有識者と個人をつなぐソーシャルニュース(ハフポスト、ハフポ)|常に「アウェイ」な環境に身を置くことの大切さ、「強み」に閉じ込められる怖さ 柿木隆介著(2015),『どうでもいいことで悩まない技術』,文響社.

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