大人には大人に合った勉強を。何歳になっても新しい知識を身につけるための「3つのルール」

大人にとって大切な勉強の3つのルール01

学生の頃は、新しいことを勉強してもどんどん覚えられたのに、大人になった今ではなかなか知識を吸収できない。頑張って勉強して覚えたはずが、すぐに忘れてしまう。いい大人になると、昔のようにはいかないな……。

業務で必要に迫られたり、資格の取得やスキルアップをめざしたり。こうした目的で勉強したいとは思っても、社会人になってからの勉強はスムーズに進まないことが多いものですよね。それに、ただでさえ忙しくて勉強に割ける時間は少ないもの。

ですが、大人でも新しいことは学べます。しかも効率よく。コツをおさえて、スマートに勉強しましょう。

何歳になっても、脳は成長できる

勉強してもなかなか知識が身につかないことを、年齢のせいにしていませんか? 「きっと自分の脳は、成長のピークを過ぎてるんだ。新しいことなんてそう簡単には身につかない……」もしそのように思っているのだとしたら、その考えは改めたほうがよいでしょう。

脳医学者の瀧靖之氏によると、実は、脳は何歳になっても知識や能力を得ることができます。ただ、大人の脳は子どもに比べて成長スピードが遅いうえ、大人は興味の対象が限定的になりがちなため、子どもの時と同じように何でもスムーズに覚えられることばかりではなくなってきます。そのため、学生の頃と同じようには知識を吸収できないように感じるというわけです。

大人になったからといって、脳の成長が止まったとか脳が衰えてしまっているというわけではありません。瀧氏によると、生涯勉強を続ければ、脳の老化は抑えられるのだそうですよ。

大人の勉強には「知的好奇心」が重要

大人になっても脳は成長できますが、子どもの頃とは脳の性質がちょっと変わってしまうことは事実。ですから、効率よく勉強したいなら、そんな脳の性質をうまく利用する必要があります。そこで大切なのが、「知りたい、学びたい」という知的好奇心を高く持つこと

みなさん、大人になってからの勉強でも、趣味に関することならスイスイ覚えられるのではないでしょうか? 脳には、好きなことや知的好奇心を持てることは記憶に残りやすいという性質があります。

というのも、脳において「好き・嫌い」を感じる扁桃体という部分が、近くにあって記憶を司る海馬の働きに影響を与えているから。「好きだ、楽しい」と感じながら勉強すると、海馬にも良い影響が与えられ、その知識を覚えやすくなります。逆に「嫌だ、やりたくない」と思いながら勉強するとなかなか覚えられません。

脳の性質を利用して効率よく勉強するには、好きだと思える気持ちと知的好奇心を刺激しながら学ぶことが重要なのです。

大人の勉強のコツ1. 予習をする

ではここからは、大人でも効率よく新しいことを学ぶためのコツを紹介します。1つ目は「予習」

これから勉強する予定の内容に、簡単にでいいので目を通します。ざっと読む、用語を見ておく、要点だけ読んでおく、といったような時間のかからない方法でかまいません。例えば朝の通勤電車で、その日に勉強する予定の内容をサラッと予習しておくというのはいかがでしょう。

予習が大事である理由は、脳には知っていることを好ましく感じる性質があるから。新たな分野について勉強している場合であっても、予習をすれば「前もって知っていること」を増やすことができます。全く知らないことを1から勉強するという状況ではなくなりますね。そして先ほど述べたように、効率よく覚えるには「好きだ」と感じながら勉強することが大切。予習をすれば「知っていること」が増え、「好きだ」という気持ちが高まります。だから予習が有効なのです。

また、予習をすると、学ぶ内容についてあらかじめ全体像を把握することにもつながります。これから勉強することの大枠をおさえてから細かい部分の勉強に入ると、全体の中での位置づけや流れを感じながら勉強することができるので、より記憶に定着しやすくなるでしょう。

元財務省官僚で弁護士の山口真由氏が実践していることで知られる「7回読み」勉強法も、予習の効果を活かしたものです。7回のうち1~3回が、全体像をつかむための作業であり、予習にあたるところ。山口氏も次のように述べています。

1~3回目で全体像を感じ、4、5回目でキーワードを意識して要旨をつかみ、6、7回目で内容を把握するという流れで1冊の本を読むのが「7回読み」勉強法です。どんなことも、「知らないこと」は理解できません。そこで、本の内容を理解する前に、まずその本と「知り合い」になっていくことをイメージすればわかりやすいと思います。

(引用元:StudyHacker|最速で確実に結果がついてくる「7回読み」勉強法——東大首席卒・NY州弁護士 山口真由さんインタビュー【第1回】

大人の勉強のコツ2. ノートは図で書く

学生の頃は「教科書丸暗記」なんて簡単にできたけど、今じゃとても無理……。大人の皆さんはそう感じるのではないでしょうか? 機械的な丸暗記をしようとしても、知的好奇心など刺激されないのですから、暗記が苦行になったとしても不思議ではありません。

そこで、勉強しながらノートを書く際には「図で書く」ようにすることをお勧めします。用語と用語の関係を矢印などで結んだり、話や出来事の流れをフローチャートにしたりして、視覚に訴えるノート作りをするのです。

『すべての勉強は、「図」でうまくいく』の著者・永田豊志氏は、図を書きながら勉強することを「図解式勉強法」と呼び、その効果を次のように説明しています。

図解式勉強法は、情報を1つの点として見て、それらをつなげて「図」として構造化し、つなげたままの形でしまっておきます。取り出すときも、図の中のどこかの点が引き出せれば、そこに含まれる全体の情報を簡単に取り出すことができるでしょう。

(引用元:ITmedia エンタープライズ|驚きの「図解式勉強法」とは何か?

情報どうしをつなげて関連付けながら勉強をすれば、情報単体で覚えようとするよりも、記憶しやすいうえ思い出しやすくなります。無味乾燥な丸暗記に挑んで挫折してしまっていた大人の方は、ノートに図を書きながら勉強するということを試してみてください。覚えやすくなること、思い出しやすくなることで快感を得られるでしょう。「覚えられた!」「分かる!」「できた!」という感覚は、「もっと知りたい」という知的好奇心につながります。そうして勉強が楽しくなっていけば、より効率よく学べるようになるはずです。

大人の勉強のコツ3. 黙読からは卒業する

新たな知識を習得しようといざ本を開いたが、なかなか頭に入っていかない。そんな大人のあなたは、もしかしたら「黙読だけで勉強」しているのではないでしょうか? 学生時代はうまくいっていたとしても、大人になってからの勉強を黙読だけに頼るのでは効率が良いとは言えません。

新しいことを覚えるために有効なのが、様々なアプローチで脳に刺激を与えること。具体的には、「本を目で見る(黙読する)」のに加えて、「図や文字を手で書く」「声を出して読む」「自分の声を耳で聞く」という方法です。

これについて、脳科学者の茂木健一郎氏が次のように解説しています。

記憶は、脳の大脳皮質にある側頭葉の側頭連合野というところに蓄えられます。そして、側頭連合野は、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚といった五感や、自分が行動する動機や心的態度などのさまざまな機能――いわゆる「モダリティ」を統合するところでもあります。 この連合野には、ある特徴があります。さまざまなモダリティから働きかけたほうが、記憶が定着しやすいのです。 (中略) さまざまなモダリティから働きかけると、扁桃核と同時に海馬をも活性化させ、記憶が定着しやすくなります。そして、海馬に記憶されているもののうち、何度も往復して脳にアクセスされたものは、「重要である」と判断され、側頭葉に送られて、長期記憶として定着するのです。

(引用元:茂木健一郎(2007),『脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」』, PHP研究所.)太字は編集部にて施した

読んだり聞いたりする勉強法は、特に語学によくフィットするイメージがありますよね。ですが、語学以外の勉強でも読んだり聞いたりするのは有効。語学以外だと聞くための教材などないと思うかもしれませんが、本を読み上げた自分の声を聞くだけでもじゅうぶんですよ。つまらない黙読を続けるよりさまざまな方法で勉強したほうが刺激的ですし、はるかに楽しく感じられるではありませんか。

本の内容をノートに書く・声を出して読む際には、ただ単に書き写す・読み上げるよりも、いったん本から目を離してから書く・声に出すのが良いそうです。いったん本から目を離す、すなわち、いったん内容を記憶してから、記憶した内容を書く・読むようにすることが、記憶のプロセスをうまく利用した効率の良い覚え方です。

ちなみに、記憶に定着させたいことは夜寝る前に勉強するのがおすすめ。脳は睡眠中に記憶を整理する働きがあります。就寝前に勉強すると、そうでない場合に比べて学んだことが記憶に定着しやすいということが明らかになっているのです。夜寝る前に、「目で読む・図や文字で書く・声に出す・耳で聞く」という4つのアプローチで勉強を行なって、記憶への定着を狙いましょう。

***
「大人になってからではもう遅い」といって、新しい知識の習得をためらっているのだとしたら、それはもったいないこと。大切なのは知的好奇心。「勉強したい」という意欲がある限り、新たなことは学び続けられるのです。

なお、「社会人の勉強におすすめなのはコレだ! 勉強方法&勉強場所まとめ」では、社会人がどう勉強すればよいのか具体的な情報をまとめています。こちらもご参照ください。

(参考)
瀧靖之(2017),『16万人の脳画像を見てきた脳医学者が教える「脳を本気」にさせる究極の勉強法』, 文響社.
StudyHacker|最速で確実に結果がついてくる「7回読み」勉強法——東大首席卒・NY州弁護士 山口真由さんインタビュー【第1回】
ITmedia エンタープライズ|驚きの「図解式勉強法」とは何か?
東洋経済ONLINE|仕事のできない人は「暗記」のコツを知らない
StudyHacker|勉強する時間帯のゴールデンルール。効率よく勉強できる時間帯をまとめて紹介!
茂木健一郎(2007),『脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」』, PHP研究所.

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