皆さんは勉強するときに、どの程度アウトプットを織り交ぜていますか?
勉強にはアウトプットが必須だ、ということはもはや有名ですよね。でも実際には、勉強をしながらしっかりと取り入れていくのはそれなりに大変です。気づけばインプットにばかり時間を使ってしまっている……といった状況に陥った経験がある人も多いのではないでしょうか。
しかし、アウトプットを勉強に織り交ぜるのは決して難しいことではありません。ここではアウトプットがなぜ必要かを確認したうえで、著名人が実践している今すぐに始められる2つの勉強法を紹介したいと思います。
アウトプットの必要性
アウトプットの必要性はさまざまな研究により示されています。アメリカのパデュー大学の実験によると、同じ単語のテストを行ったグループのうち、全ての単語を繰り返しテストしたグループのほうが、間違えた単語のみをテストしたグループよりも記憶の定着率が高くなったのだそう。つまり、一度で覚え、その後のアウトプットを行わなかった単語は、そのぶん忘却率が高くなってしまったのです。
このように、情報を思い出す行為を通して記憶が強化されることは、テスト効果という名称でよく知られています。
ほかにも、アウトプットという行為を通して情報が整理されることや、発話したり書いたりする行為を通して情報を再び目や耳、書く感覚などでなぞることで多くの刺激を伴って記憶の中に格納されることなど、アウトプットが学習に対して高い効果を持つ理由は数多く挙げられています。
そんなアウトプットを手軽に勉強に取り入れられるのが、次に挙げる「エア授業勉強法」と「鶴の恩返し勉強法」です。
エア授業勉強法
ひとつ目のエア授業勉強法は、クイズ番組などでも活躍し「京大芸人」の愛称でも知られるロザンの宇治原氏が実践している勉強法です。
やり方は非常にシンプル。勉強した内容について資料などを一切見ず、誰かに授業をする“かのように”説明する、ただそれだけです。この勉強法には相手は必要ではありません。想定した架空の生徒に向かって説明するだけで大丈夫なのです。
それだけ? と思ってしまうかもしれませんが、実際に試してみればその効果が実感できるでしょう。理解したと思い込んでいても、説明しようとしてみると「あれ、これは何でこうなるんだっけ?」という理解不足や「ええと、これの名前は……」という知識の穴が見つかります。ときには自分の喋っている内容に混乱し「理解した気になっていただけだった!」と愕然とすることもあるかもしれません。
人間の理解は意外と曖昧なもの。少々の抜けや誤解が含まれていても、なんとなくわかった気になってしまいます。その穴を確認しながら、実際に声に出してアウトプットしてみることで記憶への定着を図る、この方法は一石二鳥の勉強法なのです。
鶴の恩返し勉強法
ふたつ目は脳科学者、茂木健一郎氏の実践する脳の仕組みを最大限に活用した勉強法です。
この勉強法も非常にシンプルで、まず覚えたい内容が書いてある部分を一度覚えてから本を閉じます。そして声に出して暗唱しながら文字で書く、というだけのもの。もし一度で覚えることができなければ、繰り返し行うことできちんと読み上げながら書きつけられるようにします。
この勉強法を実践している姿を人に見られると恥ずかしいことから、茂木氏は「鶴の恩返し勉強法」と呼んでいます。
この方法は上でも触れたテスト効果を効果的に取り入れているだけではなく、音読することによる脳の活性化を目的としています。さらに、声に出す・手で書くという2種類の行為と、耳で聞く・目で見るという2種類の需要を通して、情報を何重にも脳裏に刻みつけていくという徹底した記憶術でもあるのです。
複数のアウトプット方法で身体に覚えさせるのも重要で、例えば重要な固有名詞が出てこない、というときには、記憶したときの文章をそらんじたり、書きつけたりすることによって「そうだった!」と記憶の扉が開くのです。記憶はネットワーク状に格納されていますから、ひとつの情報に対して複数のアクセス方法を確保しておくことは非常に重要だと言えるでしょう。
*** しっかりとアウトプットを盛り込んだ学習計画を立てるのは大変ですが、この2つのテクニックなら簡単に今すぐにでも取り入れることができるはずです。アウトプットがどれだけの効果を発揮するのか、改めて感じてみてはいかがでしょうか。
(参考) 日経BP社|潜在“脳力”:【1】脳は「入力」より「出力」で覚える Wikipedia│テスト効果 THE21ONLINE|高学歴芸人ロザンの必勝勉強法・「エアー授業」とは!? エキレビ!|勉強も漫才も「エアー」で覚える。高学歴コンビ・ロザンに聞く『身の丈にあった勉強法』 川島隆太 (2003),『「音読」すれば頭がよくなる―一日二〇分!能力はここまでアップする』, たちばな出版. プロフェッショナル 仕事の流儀|茂木健一郎の脳活用法スペシャル 茂木健一郎(2007),『脳を活かす勉強法 奇跡の「強化学習」』, PHP研究所.