結果を出すことに向かってきっちり努力しているのに、なぜか成果が上がらない。こんな経験をしたことはありませんか?
世の中では結果を重視することがよくあります。残念ながら、結果を出せなければ、それまでの頑張りが評価されることは少ないでしょう。しかしながら、いつも結果のことばかりを気にしていては、私たちはよいパフォーマンスを発揮することはできないのです。
それでは、成果をあげることを意識しない代わりに、いったい何を重視すればよいのでしょうか。今回は、物事を成功に導くための取り組み方について、考えてみたいと思います。
プロセスを重んじる、「正射必中」の教え
みなさんは「正射必中」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
この言葉は弓道の教えで、「正しく矢を放てば、的に必ず当たる」ということを伝えています。正しいアプローチは、必ず結果につながるということです。
この言葉に代表される弓道の教えを真摯に受け止め、成功をおさめたのが、ゴディバ ジャパンの社長であるジェローム・シュシャン氏。弓道をたしなむ彼は、正射必中の教えをビジネスに生かし、5年間で売り上げを2倍に増やしたのだそうです。シュシャン氏は次のように述べています。
時には、商品をより多く売るために、ただ価格を下げたりあちこちへ商品を送ったりすれば、いいように思う人もいますが、それが正しいアプローチだとは思えません。正しいやり方とは、お客様のことを本当に考えて、良い商品を作ることです。そうすれば、きっと結果はついてくるでしょう。
(引用元:TOEIC SQUARE|「ゴディバの商品が日本人に愛される理由」 ゴディバ ジャパン毎年2桁成長の秘訣)
彼は、売り上げという結果を重視するのではなく、お客様のための商品づくりという自分が正しいと信じるプロセスを重視することによって、結果をだしたのですね。
物事と正面から向き合い、正しいアプローチを見つけられれば、きっと結果はついてくるはずなのです。
報酬の提示はパフォーマンスを低下させる
実は、結果を追い求めているとよいパフォーマンスを発揮できないということは、実験によっても明らかにされています。その中で有名な実験が、1945年に行われた「ロウソクの問題」です。この実験は、カール・ドゥンカーという行動科学者によって行われました。
実験では、まず被験者を2つのグループに分け、片方のグループには、「こういった問題を解くまでにかかる時間が知りたい」とだけ伝え、もう片方のグループには、「解決が早かった上位25%に人にはより多くの報酬を与える」と伝えました。次に、各々にロウソク、画鋲、マッチを渡し、「ロウソクに火を付けて、なおかつロウソクの蝋が机に垂れないように、壁にロウソクを取り付けてください」という指示を与えました。すると、報酬を提示されたグループのほうが、余計に三分半かかったのです。
どうして報酬を提示されたグループのパフォーマンスは下がってしまったのでしょうか。
それは、報酬を提示されると視野が狭くなり、自由な発想が制限されるためにパフォーマンスが下がってしまったから。結果を出して報酬を得ようと意識したことで、かえって結果が出せなくなってしまったのです。
では、よいパフォーマンスを発揮するための、正しいアプローチとは何なのでしょうか?
大切なのは自律、成長、他者貢献があること
アメリカのゴア元副大統領のスピーチライターを務めたダニエル・ピンク氏は、ロウソクの問題などの実験結果から、報酬によらないモチベーションを持つことが大事であると述べています。ピンク氏によると、報酬によらないモチベーションを持つために必要な要素は、次の3つなのだそう。
1. 自律性 2. マスタリー (熟達) 3. 目的
(引用元:MasaLog|持続する「やる気!」を出すための3つの要素 - 「モチベーション3.0」by ダニエル・ピンク[書評])
1つ目の自律性において大切なのは、「~べき」という考え方で行動しないということ。みなさんも、テスト前「勉強しなければならない」と考えて勉強をするにはしたけど、結果が出なかったという経験がきっとあるはずです。逆に、自分の好きな教科は、あまり勉強しなくてもよい点が取れたことでしょう。もし、今「~べき」という考えで物事を行っているなら、そうした考えに縛られるのではなく、自分のやりたいようにやってみてください。きっとよいパフォーマンスを発揮できるはずです。
2つ目のマスタリーとは、自分の成長のこと。どのようなことでも、過去の自分と比べれば、何かは上達しているはずですよね。その成長を捉えることができれば、次はもっと良い結果を出そうとし、よいパフォーマンスを発揮できるようになります。
3つ目の目的において重要なのは、利益や報酬ではなく、他者にどれだけ貢献できるかを考えること。自分がやっていることが誰かの役に立つと思うと、わくわくしませんか? 事実、報酬が全くないにもかかわらず、Wikipediaに多くの情報が書き込まれているのは、他者の役に立てるからでしょう。また、先ほど紹介したシュシャン氏も、お客様のために行動し、成功しています。
これら3つの要素を持って行動することが、結果を出すためには必要なのです。
頑張っているつもりなのに、なかなか結果が出ないという方は、3つの要素があるかどうか、もう一度あなたのプロセスを見直してみてはいかがでしょうか。次はきっと結果を出せるはずです。
(参考) Business Journal|ゴディバ、5年で売上2倍の秘密は「弓道の精神」?日本企業が捨てた仕事の仕方を実践 カチトルblog|ゴディバ社長が弓道の心で語った、当たるビジネスの秘訣! Books&Apps|より大きな報酬が、よりパフォーマンスを落とす。 MasaLog|持続する「やる気!」を出すための3つの要素 - 「モチベーション3.0」by ダニエル・ピンク[書評] Factory70BLOG|[TED]やる気を引き出すのは、お金じゃない!ダニエル・ピンク先輩のプレゼンに笑いと感動。 TOEIC SQUARE|「ゴディバの商品が日本人に愛される理由」ゴディバ ジャパン毎年2桁成長の秘訣